
―数字を触る前に、社長がやるべき一番大事な整理―
「で、うちは結局、どこで儲かっているんでしたっけ?」
ここまで3回にわたって、
利益について、かなり大事な話をしてきました。
- 黒字でも安心できない理由
- 頑張って売っても利益が残らない構造
- 利益は感覚ではなく、設計対象であること
ここまで読んだ社長の中には、
こんな違和感が芽生えている方も多いはずです。
「言っていることは分かる」
「でも、じゃあ“うちの場合”はどうなんだろう?」
とても健全な反応です。
そして、その問いに向き合うのが、今回のテーマです。
今回は、
数字を一切使わずに
自社の「利益の出どころ」を言葉にするワークを行います。
なぜ、いきなり数字を見ないのか?
ここで、よくある質問が出てきます。
「利益の話なのに、
数字を見ないんですか?」
はい。
あえて、見ません。
理由はシンプルです。
数字を先に見ると、
ほとんどの社長は、こうなります。
- 細かい話に入る
- 正解探しになる
- 「分からない」で止まる
そして本当に考えるべき、
“構造の話”にたどり着けなくなるのです。
今回やるのは、
「正確な分析」ではありません。
目的はただ一つ。
社長自身が、
自分の言葉で
利益を説明できるようになること
ワークの前に|よくある「言語化できていない状態」
まずは、典型的な状態を見てみましょう。
パターン①|売上の話しか出てこない
- 「〇〇の売上が多くて」
- 「最近は△△が伸びていて」
これは、
利益ではなく、売上を見ている状態です。
パターン②|経費の愚痴で終わる
- 「人件費が高くて」
- 「材料費が上がって」
これも同じです。
利益の出どころは、どこにも出てきません。
パターン③|全部まとめて「全体的に」
- 「全体的に薄利なんですよね」
- 「うちは業界的に厳しくて」
これは、
考えることを諦めかけているサインです。
今回のワークでは、
この状態から一歩抜け出します。
ワーク①|「うちの会社は、何屋ですか?」を言い直す
まず最初の問いです。
Q1:あなたの会社は、何屋ですか?
多くの社長は、
業種名で答えます。
- 建設業です
- ITです
- サービス業です
ここから、一歩踏み込みます。
次の制約を付けてください
- 業種名は禁止
- 売上金額は禁止
- 商品名・サービス名も一旦禁止
使っていいのは、
「お客さん」と「価値」だけです。
例
×「〇〇工事をやっています」
〇「〇〇で困っているお客さんを、△△な形で楽にしている」
これは、
利益が生まれる前提条件を言語化する作業です。
ワーク②|「楽に儲かる仕事」と「しんどい仕事」を分ける
次の問いです。
Q2:同じ売上でも、
正直“楽な仕事”と“しんどい仕事”はありませんか?
ここで、初めて
社長の“感覚”を使います。
紙を2つに分けて、
- 左:やっていて比較的ラクな仕事
- 右:やっていてしんどい仕事
と書き出してください。
ポイントは「理由」を書くこと
- なぜラクなのか
- なぜしんどいのか
ここで出てくる言葉に、
利益のヒントが詰まっています。
例
- 毎回流れが決まっている
- 説明が少なくて済む
- トラブルが起きにくい
逆に、
- 毎回条件が違う
- 想定外が多い
- 社長が出ないと収まらない
この差こそが、
利益構造の正体です。
ケーススタディ|製造業E社の場合
E社の社長は、
最初こう言いました。
「どの仕事も大変ですよ」
しかし、ワークを進めると、
こんな言葉が出てきました。
- 定番品は、ほぼ考えなくていい
- 特注品は、毎回バタつく
- 売上は特注の方が大きい
ここで初めて、
社長は気づきました。
「忙しさの原因と、
利益の源泉がズレている」
この“気づき”こそが、
数字分析では得られない成果です。
ワーク③|「なぜ、それでお金を払ってもらえているのか?」
次の問いです。
Q3:お客さんは、
なぜあなたにお金を払っているのでしょうか?
ここでも、
「品質がいいから」「真面目だから」
は一旦置いておきます。
もう一段、掘り下げます。
- 手間が省けるから
- 不安が減るから
- 判断しなくていいから
この答えが、
利益の“源”です。
価格競争に巻き込まれにくい会社ほど、
ここがハッキリしています。
ワーク④|「利益が出る流れ」を一文で表す
ここまで来たら、
最後のまとめです。
次の文章を完成させてください。
「うちの会社は、
〇〇なお客さんに対して、
△△な価値を提供することで、
無理をしなくても利益が残る構造になっている」
最初は、
しっくりこなくて当然です。
でも、この一文を考える過程そのものが、
利益構造設計の第一歩です。
言語化できると、何が変わるのか?
このワークを終えた社長から、
よく出てくる言葉があります。
- 「頭が整理された」
- 「やらなくていいことが見えた」
- 「判断が楽になりそう」
理由は明確です。
利益の話が、
“感覚”から“言葉”に変わったから
言葉になれば、
次は数字に落とせます。
でも逆はできません。
数字から言葉は、生まれにくい。
次回予告|言葉を、数字につなげる準備へ
次回からは、
この言語化を土台にして、
少しずつ数字の話に入っていきます。
いきなり細かく分解はしません。
まずは、
- 見る数字を絞る
- 判断に使える形にする
その準備です。
今日の一言
利益の正体は、
決算書の中ではなく、
社長の言葉の中にある。
ここを言語化できた社長から、
利益は「たまたま」ではなく
「狙って残すもの」に変わっていきます。
