
「粗利って…売上から原価を引いたやつですよね?」
社長に「粗利とは何ですか?」と聞くと、
多くの方がこう答えます。
売上から原価を引いたものですよね
正解です。
会計的には、100点の答えです。
では、次の質問です。
あなたの会社にとって、粗利とは何ですか?
この問いに、
自分の言葉で答えられる社長は、ぐっと少なくなります。
今回の記事では、
- 粗利を“定義として知っている状態”
- 粗利を“経営の言葉として使えている状態”
この2つの違いを明確にしながら、
「粗利で会社を見る社長」になるための
思考の土台を作っていきます。
定義を知っている社長と、使えている社長の違い
まず、少し極端な例を出します。
定義だけ知っている状態
- 粗利=売上 − 原価
- 粗利率が大事
- 業界平均と比べる
これは「知識」としては十分です。
でも、この状態の社長は、
こんな場面で止まります。
- 「じゃあ、どうすれば粗利は上がるのか?」
- 「今の粗利は、良いのか悪いのか?」
判断に結びつかないのです。
使えている状態
一方で、粗利を使えている社長は、
こんな言葉を使います。
- 「この商品は、忙しい割に粗利を生まない」
- 「この仕事があるから、会社が回っている」
- 「ここが崩れると、一気に苦しくなる」
ここでは、
粗利=会社の構造を語る言葉
になっています。
違いは、数字の知識ではありません。
言葉の置き方です。
粗利は「残ったお金」ではない
ここで、一度イメージをリセットしましょう。
粗利を、
「経費を払う前に残ったお金」
と捉えていると、
どうしても“余り物”のように感じてしまいます。
でも実際には、逆です。
粗利とは何か?
粗利とは、
会社が活動するために、最初に確保しなければならない原資
です。
- 人を雇う
- 場所を借りる
- 広告を打つ
これらはすべて、
粗利があるからできること。
粗利は、
「最後に残るもの」ではなく、
「最初に必要なもの」なのです。
社長の言葉で言い換えてみる
ここからが、今回の本題です。
粗利を、
会計用語ではなく、社長の言葉に翻訳する
というワークをしてみましょう。
よくある会計的な言い方
- 粗利が低い
- 粗利率が悪い
これを、そのまま使っても、
行動は変わりません。
社長の言葉にすると
- 「この仕事、やってる意味あるのかな?」
- 「忙しいけど、全然楽にならない」
- 「これがあるから、人も会社も維持できている」
粗利とは、
社長の感覚と、数字をつなぐ翻訳語
なのです。
ケーススタディ①|「売れているのに苦しい」の正体
背景
製造業G社。
売上は毎年伸びており、
外から見ると順調そのもの。
しかし社長は、こう言います。
「正直、年々しんどくなっている」
粗利を見てみると
- 売上:増加
- 粗利額:横ばい
- 粗利率:低下
原因は、
- 価格競争
- 原価上昇
それでも売上を追い続けた結果でした。
社長の言葉にすると
この会社にとって粗利とは、
会社を楽にしてくれるかどうかの分かれ目
だったのです。
ここに気づいたことで、
- どの仕事を断るか
- どこで価格交渉するか
の判断軸が、はっきりしました。
ケーススタディ②|粗利を「守るもの」と定義した会社
背景
サービス業H社。
社長は、こんな言葉を使っていました。
うちは、粗利を守る会社なんです
この一言が意味していたもの
- 値下げ要求には理由なく応じない
- 手間が増える仕事は、必ず見直す
- 粗利を削る判断は、社長決裁
粗利は、
「数字」ではなく
会社の約束事になっていました。
結果として、
- 社員の判断も揃い
- 現場でのブレが減り
会社全体が、
同じ方向を向いて動くようになったのです。
「粗利率○%」よりも大事な問い
もちろん、粗利率は重要です。
ただし、それ以上に大事な問いがあります。
- この粗利で、会社は回っているか?
- この粗利で、人は疲弊していないか?
- この粗利で、未来に投資できるか?
これらは、
教科書には載っていません。
だからこそ、
社長自身の言葉が必要になります。
ワーク|あなたの会社にとって、粗利とは何か?
ここで、ぜひ手を止めて考えてみてください。
次の文章を、埋めてみましょう。
うちの会社にとって粗利とは、_________である
例:
- 「社員が安心して働ける余白である」
- 「次の一手を打つための体力である」
- 「無理な仕事を断るための根拠である」
正解はありません。
大切なのは、
あなたの言葉で言えるかどうかです。
粗利を言葉にできると、何が変わるのか
粗利を自分の言葉で説明できるようになると、
次の変化が起きます。
- 数字を見る視点が変わる
- 判断が早くなる
- 経費の見方が変わる
そして何より、
利益が出ない理由が、感覚ではなく言葉になる
これが、
粗利で会社を見る社長への第一歩です。
次回は、
粗利を「率」で見ると、なぜ経営がブレ始めるのか
という、少し意外なテーマを扱っていきます。
今日の一言
粗利を説明できない会社は、守るべきものを決められない。
粗利を自分の言葉で語れた瞬間、経営は一段クリアになる。
