①STEP1 市場選定ワーク|社長が最初に考えるべきこと


いきなり戦略を考えてはいけない理由

「売上を伸ばしたい」
「利益体質に変えたい」
「今のやり方に限界を感じている」

事業構造転換を考え始めた社長の多くが、
最初にこうした“正しい悩み”を口にします。

ただし、ここでほぼ100%起こるのが、
最初から打ち手を考え始めてしまうという現象です。

  • 新しいサービスを作ろうか
  • 単価を上げるべきか
  • SNSを強化するか
  • 人を増やすべきか

どれも間違いではありません。
ですが、順番が違います。

事業構造転換において、
社長が最初にやるべき仕事は「施策」ではありません。

それが、このSTEP1
市場選定です。

なぜ「市場選定」が最初なのか?

少し極端な言い方をします。

市場選定を間違えたまま努力すると、
努力量に比例して苦しくなります。

なぜなら、

  • どれだけ頑張っても価格競争になる
  • どれだけ工夫しても差別化できない
  • どれだけ忙しくても利益が残らない

こうした状態は、
やり方の問題ではなく、立っている市場の問題だからです。

逆に言えば、

市場が変われば、同じ力でも結果が変わる

これが、事業構造転換の出発点です。

「市場」とは、エリアや業界のことではない

ここで、まず定義を揃えておきましょう。

市場選定というと、

  • 都市部か地方か
  • 法人向けか個人向けか
  • 製造業かサービス業か

といった話を想像されがちですが、
このSTEP1で扱う「市場」は、もう少し踏み込みます。

この講座での「市場」の定義

市場 =
「誰が、どんな困りごとを、どんな理由で解決したいと思っているか」

つまり、

  • 顧客の属性
  • 困りごとの種類
  • お金を払う動機

この3点がセットになったものを、市場と呼びます。

社長に最初に考えさせる、たった一つの問い

STEP1の市場選定ワークで、
最初に社長に投げる問いは、とてもシンプルです。

今のあなたの会社は、
“誰の、どの困りごと”でお金をもらっていますか?

ここで重要なのは、
理想や今後の話を一切しないこと。

  • 将来やりたいこと
  • 得意なこと
  • 伸ばしたい分野

これらはいったん横に置きます。

まずは、
現実にお金をもらっている市場を、
言葉にして把握
します。

ワーク①|「売上の正体」を言葉で書き出す

最初のワークは、数字を使いません。

紙とペン、もしくはメモ帳を用意して、
次の3点を書き出します。

  1. よくお金を払ってくれる顧客は誰か
  2. その人は、何に困っているのか
  3. なぜ、あなたの会社を選んでいるのか

ポイントは、
一番多い顧客像を1つに絞って書くこと。

ケーススタディ:ある士業事務所の例

ある士業の社長は、最初こう書きました。

  • 顧客:中小企業全般
  • 困りごと:手続きが分からない
  • 選ばれる理由:対応が丁寧

一見、それっぽく見えますが、
これでは市場が広すぎて、何も見えません。

そこで、さらに掘り下げました。

  • 顧客:従業員10名以下、創業5年以内の会社
  • 困りごと:初めての手続きが不安
  • 選ばれる理由:専門用語を使わず説明してくれる

ここまで具体化すると、
「戦っている場所」が、はっきりします。

ワーク②|「儲かっている市場」と「疲れる市場」を分ける

次に行うのが、
市場を感覚ではなく手応えで分ける作業です。

次の2つに、顧客を分類してみてください

  • 話が早く、意思決定がスムーズ
  • 価格交渉が少ない
  • 紹介が生まれやすい

こうした特徴を持つ顧客がいる市場と、

  • 説明に時間がかかる
  • 値下げ前提で話してくる
  • トラブルが多い

こうした顧客が多い市場。

どちらが多いでしょうか?

ここで大切なのは、
好き・嫌いではなく、事実ベースで見ること。

市場には「社長を消耗させる市場」がある

多くの社長が、無意識のうちに
自分を消耗させる市場に居続けています。

  • 昔からの付き合い
  • 今までやってきたから
  • 他に選択肢がない気がする

こうした理由で選び続けた市場は、
往々にして、

  • 利益が薄く
  • 判断が増え
  • 精神的負担が大きい

という特徴を持ちます。

市場選定とは、
「どこで頑張らないか」を決める作業でもあります

ワーク③|「選ばれている理由」を疑ってみる

次にやるべきは、
「選ばれている理由」を疑うことです。

多くの社長は、こう考えがちです。

  • 技術力があるから
  • 実績があるから
  • サービスが良いから

しかし、顧客の本音は、
もっと現実的です。

ケース:リフォーム会社の例

あるリフォーム会社は、
「技術力が高いから選ばれている」と思っていました。

しかし、実際にヒアリングすると、

  • 見積もりが早かった
  • 説明が分かりやすかった
  • 不安な点を先回りして教えてくれた

という声が大半。

技術力は、
選ばれる理由ではなく、前提条件だったのです。

このズレに気づくことが、
次のSTEPに進む土台になります

STEP1のゴールは「正解」を決めることではない

ここで誤解しないでほしいのですが、
STEP1は「最適な市場」を決め切る工程ではありません。

この段階のゴールは、たった一つ。

「今、自分はどの市場で戦っているのか」を
社長自身が説明できる状態になること。

  • どんな顧客で
  • どんな困りごとで
  • なぜ選ばれているのか

これを、
他人に説明できるレベルまで言語化する。

それだけで、
この後の5ステップの精度は、驚くほど変わります。

市場を選ぶとは、「覚悟」を決めること

最後に、少しだけ踏み込んだ話をします。

市場選定とは、
単なる分析作業ではありません。

それは、

  • どの顧客を優先するか
  • どの仕事を伸ばすか
  • どこに時間と判断を使うか

を決める、社長の覚悟決めです。

全員に好かれる市場はありません。
全部を取れる会社もありません。

だからこそ、
市場選定は最初にやる必要があるのです。

今日の一言

事業構造転換の最初の仕事は、
「何をやるか」を考えることではない。
「どこで戦うか」を、社長自身が言葉にすることだ。

ここが定まらなければ、
どんな打ち手も、ただの消耗戦になります。


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