②判断を手放してはいけないラインの引き方


「任せたいのに、任せきれない」社長の本音

「もっと任せたほうがいいのは分かっている」
「でも、どこまで任せていいのかが分からない」

これは、多くの社長が口にする本音です。

実際のところ、
社長が判断を抱え込んでしまう理由は、とても真っ当です。

  • 失敗したときに責任を取るのは自分
  • 会社の将来に直結する判断が多い
  • 現場判断がズレたときの修正コストが大きい

だからこそ、
「手放したい」と「手放せない」の間で揺れ続けることになります。

では、どうすればいいのか。

答えはシンプルで、
「判断を任せる/任せない」を感覚で決めないことです。

今回のテーマは、
判断を“安心して”手放すための、ラインの引き方

前回整理した
「社長が必ず決める3つの判断」を前提に、
今回はさらに一歩踏み込みます。

判断を手放す前に、絶対にやってはいけない勘違い

まず最初に、
判断委譲でよくある勘違いを整理しておきましょう。

それは、

任せる=全部自由にしていい

という誤解です。

これは、
社長にとっても、現場にとっても不幸な状態を生みます。

よくある失敗パターン

  • 「好きにやっていいよ」と言われたが、基準が分からない
  • 判断したら、後からダメ出しされる
  • 結局、社長の顔色をうかがうようになる

こうして現場は萎縮し、
社長は「やっぱり自分がやるしかない」と戻ってしまいます。

大切なのは、
自由を与えることではなく、境界線を渡すことです。

「任せていい判断」と「絶対に残す判断」は、こうして分ける

判断を手放してはいけないラインは、
次の3つの視点で引くことができます。

  1. 会社の前提条件が変わるかどうか
  2. 取り返しがつくかどうか
  3. 判断基準が言語化されているかどうか

順に見ていきましょう。

ライン①|その判断で「会社の前提」が変わるか?

まず1つ目は、
その判断が、会社の前提条件を変えてしまうかどうかです。

ここで言う前提条件とは、

  • 誰を顧客とするか
  • どんな価値を提供する会社なのか
  • どこで勝負するのか

といった、会社の土台です。

これが変わる判断は、
基本的に社長が手放してはいけません。

ケーススタディ:営業判断が、会社の軸を壊した例

ある会社では、
営業担当に「受注判断」を任せていました。

すると、

  • 値引き前提の案件が増える
  • 短期的な売上は上がる
  • しかし利益率が急落

という状態に。

営業担当としては「数字を達成するため」の合理的判断。
しかし会社としては、
「何で稼ぐ会社なのか」という前提が崩れていたのです。

前提を動かす判断は、
社長が握るべき最重要ラインです。

ライン②|失敗したとき、取り返しがつくか?

2つ目の視点は、
その判断が失敗したとき、やり直せるかどうかです。

  • 修正できる
  • 学習に変えられる
  • ダメージが限定的

この条件がそろう判断は、
比較的任せやすい判断です。

逆に、

  • 信用を失う
  • 大きな資金が一気に失われる
  • 法的・契約的なリスクがある

こうした判断は、
社長が最終ラインに立つべきです。

ケーススタディ:小さな判断ミスが、大きな損失に

ある小規模企業で、
現場判断で設備投資を進めたケース。

当初は「業務効率化」のつもりでしたが、

  • 実際の業務と合わない
  • 使われない設備が残る
  • 回収不能

結果として、
数年にわたって資金繰りを圧迫しました。

「金額が大きいからNG」ではなく、
「戻れない判断かどうか」
ここがラインになります。

ライン③|判断基準は、言葉になっているか?

3つ目は、
その判断の基準が、言語化されているかどうかです。

基準が言葉になっていない判断は、
絶対に手放してはいけません

なぜなら、
それは「社長の感覚」でしか判断できないからです。

感覚判断を任せると、何が起きるか

  • 人によって判断がブレる
  • 結果論で叱られる
  • 誰も判断したがらなくなる

こうなると、
組織は完全にストップします。

逆に言えば、

基準が言葉になった瞬間、その判断は任せられる候補になる

ということです。

「任せてOK」の判断が増える、思考の切り替え

ここで大事な考え方があります。

それは、
「今は任せられない判断」=「永遠に任せられない判断」ではない
ということ。

多くの社長は、

  • 任せられない
  • だから自分でやる
  • 忙しい

というループに入ります。

しかし、本来やるべきなのは、

  1. 任せられない理由を特定する
  2. 判断基準を言語化する
  3. 小さく任せてみる

このプロセスです。

判断ラインは、
固定するものではなく、育てていくものなのです。

実践ワーク|あなたの「手放せないライン」を可視化する

ここで、今回のワークです。

次の3つの質問に、
できるだけ具体的に答えてみてください。

  1. その判断で、会社の前提が変わるものは何か?
  2. 失敗したら、取り返しがつかない判断は何か?
  3. まだ言葉にできていない判断基準は何か?

書き出してみると、

  • 自分が抱え込んでいる理由
  • 実は任せられる判断
  • 仕組みにすべき判断

が、はっきり見えてきます。

「社長がいなくても回る会社」の正体

ここまで読んで、
こう感じた方もいるかもしれません。

「結局、社長の仕事は減らないのでは?」

確かに最初は減りません。
むしろ、一時的に増えます。

なぜなら、

  • 判断基準を言葉にする
  • ラインを引き直す
  • 任せ方を設計する

という作業が必要だからです。

しかし、この作業をやり切った先にあるのが、

「判断が社長の頭ではなく、会社に残る状態」です。

これが、
社長がいなくても回る会社の正体です。

今日の一言

判断は、勇気で手放すものではない。
構造で、安心して手放すものだ。

このラインが引けたとき、
社長はようやく「考える仕事」に集中できるようになります。


PAGE TOP