
― 忙しさから解放される“意思決定構造”の完成形 ―
「社長なのに、ずっと現場にいる」その違和感から始まる
「社長って、こんなに細かいことまで決めなきゃいけないんでしたっけ?」
これは、私が多くの経営者と話す中で、何度も耳にしてきた言葉です。
・毎日の承認依頼
・現場から飛んでくる判断待ち
・本来考えたい“未来の話”は、いつも後回し
気づけば一日が終わり、「今日も社長の仕事はできなかったな」と感じる。
でも、ここで大事なのはあなたが怠けているわけでも、能力が足りないわけでもないという点です。
原因は、ほぼ一つ。
「意思決定の構造」が設計されていないことにあります。
社長が全部決める会社ほど、実は危うい
一見すると、「何でも社長が決めている会社」は強そうに見えます。
スピードもあるし、ブレも少ない。
しかし、裏側ではこんな問題が起きがちです。
- 社長が不在だと何も進まない
- 現場が“考えなくなる”
- 社長がボトルネックになる
- 社長が疲弊し、判断の質が落ちる
特に小規模事業では、「自分が一番分かっている」という理由で、
無意識のうちに全部を背負ってしまう社長が非常に多い。
でも冷静に考えてみてください。
社長の時間は、会社で一番高い資源です。
それを日常判断で使い切ってしまうのは、あまりにももったいない。
ゴールは「社長がいなくても回る」ではない
ここでよくある誤解があります。
最終的には、社長がいなくても回る会社を作りたいんですよね?
半分正解で、半分間違いです。
本当のゴールは、
社長が“考えるべきことだけ”に集中できる状態を作ること。
つまり、
- 日常業務 → 社長は関与しない
- 通常判断 → ルール通りに処理される
- イレギュラー → 社長が判断する
この構造を作ること。
その結果として、「社長がいなくても回る時間が増える」だけなのです。
社長の仕事は、たった2つに集約できる
では、意思決定構造が完成した会社で、
社長は何をしているのか。
答えはシンプルです。
① 確認
② 例外対応
これだけです。
①「確認」=数字と事実を見て、ズレを察知する
まず「確認」とは、
細かい作業をチェックすることではありません。
・正しく進んでいるか
・想定とズレていないか
・違和感がないか
を、決められた数字と事実で見ることです。
例えば、
- 売上は計画通りか
- 粗利率は基準内か
- 客数や単価に異常はないか
これらを毎日・毎週・毎月、
“同じフォーマット”で眺める。
ここで社長がやるべきなのは、
「なぜ?」を考えることだけです。
ケース:確認が「口出し」になってしまう会社
ある飲食店の社長は、
毎日売上を見ては、こんなことを言っていました。
「今日は客数少ないね」
「このメニュー、もっと出せない?」
一見、確認しているようで、
実は現場介入になっていた。
そこで行ったのは、
- 「見る数字」を3つに絞る
- 基準値を決める
- 基準内なら何も言わない
というルール作り。
結果、
社長は数字を見るだけ。
現場は考えて動くようになりました。
②「例外対応」=ルール外だけを社長が引き取る
次に「例外対応」。
これは、
事前に決めたルールでは処理できないことだけを、
社長が判断するという役割です。
例えば、
- 想定外の大口取引
- 基準を大きく外れる数字
- 人に関する重要判断
- 大きな投資や撤退判断
逆に言えば、
ルール内のことは、社長の仕事ではない。
ここが曖昧だと、
現場はすぐに「社長判断」に逃げます。
「例外」を定義しないと、全部が例外になる
多くの会社で起きている問題はこれです。
- 何が例外か決まっていない
- だから、全部が社長判断になる
解決策はシンプル。
この条件を超えたら、社長に上げる
という線を引くこと。
金額
利益率
リスク
影響範囲
この線を引くだけで、
社長の判断回数は一気に減ります。
社長が“判断しない勇気”を持てるか
意思決定構造設計で、
最大の壁になるのはここです。
「任せた判断が、少しズレることを許せるか」
最初は、必ずズレます。
でも、それは失敗ではありません。
- ルールが甘かった
- 基準が曖昧だった
そう気づける材料が手に入った、というだけ。
社長が全部決め続ける限り、
そのズレは永遠に表に出てきません。
構造ができると、社長の景色が変わる
意思決定構造が整った会社では、
社長の一日がこう変わります。
- 朝:数字を見る
- 気になる点だけ深掘る
- 例外案件に集中する
- 未来の打ち手を考える
「忙しい」はなくなりません。
でも、意味のある忙しさに変わります。
そして何より、
社長らしい仕事をしている
という実感が戻ってきます。
社長業とは、決め続けることではない
このシリーズを通して伝えたかったのは、
「社長が全部決める」ことではありません。
決めなくていいことを、決めない仕組みを作ること。
その先に、
- 確認
- 例外対応
だけを行う、
軽やかな社長業があります。
今日の一言
社長の仕事は「決めること」ではなく、
「決めなくていい状態を作ること」。
それができたとき、
あなたの会社は、次のステージに進み始めます。
