③会計ソフトで回る「社長のための入力ルール」


―― 迷わない記帳は、“操作”ではなく“考え方”で決まる


「会計ソフトが苦手」なのではなく、「判断ルールがない」だけ

第1回では、
簿記を学んでも利益が増えない理由を整理しました。

第2回では、
**仕訳を意識しない「判断ベース記帳」**という考え方をお伝えしました。

今回はいよいよ、実務の話です。

freee や マネーフォワードを前にして、
こう感じたことはありませんか?

  • 何をどこまで入力すればいいのか分からない
  • 画面の質問に答えているうちに不安になる
  • 「これで合っているのか?」がずっと残る

でも、はっきり言います。

会計ソフトが難しいのではありません。
社長側に「迷わないためのルール」がないだけです。


社長が会計ソフトでやろうとしてはいけないこと

まず最初に、
社長が やらなくていいこと を整理します。

  • 勘定科目を完璧に選ぼうとする
  • 仕訳が合っているかを毎回気にする
  • 一発で正解を入れようとする

これらはすべて、
入力を止める原因になります。

社長に必要なのは、
「正解を出す力」ではなく、
**「迷わず前に進む力」**です。


社長のための入力ルールは、たった4ステップでいい

ここからが本題です。

freee/マネーフォワードを前提にした
社長のための入力ルールは、
実はとてもシンプルです。

社長入力の基本4ステップ

  1. 取引を「事実」として受け取る
  2. お金の動きを決める
  3. 今月の儲けとの関係を考える
  4. 「いつものか/特別か」を分ける

この4つだけです。


ステップ①|取引を「会計」ではなく「事実」として見る

まず最初にやるべきことは、

「これは何の仕訳か?」と考えないこと

です。

代わりに、こう考えます。

  • 何をしたのか?
  • 誰に対して?
  • 何が起きたのか?

例:広告費を払った場合

×「これは広告宣伝費で、借方が…」
○「今月、広告会社に○円払った」

これだけでOKです。

会計ソフトは、
事実さえ入力できれば、裏側は自動でやってくれます。


ステップ②|お金は「今」動いたのか?「まだ」なのか?

次に判断するのは、これです。

  • すでに支払った?
  • まだ払っていない?

この判断は、とても重要です。

ケーススタディ|カード払いで混乱する社長

よくあるのが、このケースです。

「クレジットカードで払ったから、
まだお金は減っていない気がする」

でも、判断はこうです。

  • 支払いを“確定”させたか? → YES
  • あとは引き落としを待つだけか? → YES

なら、
「お金は動いた」と判断してOKです。

細かい仕訳は、
会計ソフトが勝手に処理します。


ステップ③|今月の儲けに「関係あるか?」だけを見る

次に考えるのは、

この取引は、今月の利益に影響するか?

です。

例①|消耗品を買った

  • 文房具
  • 日用品
  • 消耗品

今月の儲けに関係あり

例②|パソコンを買った

  • 仕事用PC
  • 高額
  • 数年使う

今月の儲けには直結しない

ここまで判断できれば十分です。

「減価償却」という言葉を知らなくても、
判断はできます。


ステップ④|「いつもの支出」か「特別な支出」かを分ける

最後のステップは、
P/Lを“読みやすくする”ための判断です。

  • 毎月ある支出か?
  • 今回限りの支出か?

ケース|P/Lを見て「なんかおかしい」と思える社長

ある社長は、
月次P/Lを見てこう言いました。

「今月、利益が少ない気がする」

よく見ると、

  • ホームページ制作費
  • 研修費
  • 備品購入

が同じ月に重なっていました。

これが分かるのは、
入力時に「特別」と認識していたからです。


会計ソフトは「迷わせるため」に作られていない

freeeやマネーフォワードの画面には、
たくさんの選択肢があります。

でも、忘れないでください。

あれは、あなたを試す問題ではありません。

あくまで、

  • 状況を整理するための質問
  • 判断を助けるための誘導

です。

「全部に正しく答えなければいけない」
と思った瞬間に、苦しくなります。


事例|入力ルールを決めたら、数字を見る余裕が生まれた

ある小規模事業者の例です。

以前は、

  • 月末にまとめて入力
  • 毎回1時間以上かかる
  • 結果、P/Lは見ない

という状態でした。

そこで、

「この4ステップだけ守りましょう」

と伝えました。

すると、

  • 入力時間は10〜15分
  • 毎週入力できる
  • 月次P/Lを自然に見るようになった

入力が目的から手段に戻ったのです。


社長が“触るところ”と“触らなくていいところ”

ここで、線引きをしておきましょう。

社長が触るところ

  • 取引内容の確認
  • お金の動き
  • 月次P/Lのチェック

社長が触らなくていいところ

  • 仕訳の細かい形
  • 勘定科目の厳密な定義
  • 決算時の調整

ここを混同すると、
また元に戻ってしまいます。


正解を目指さない入力が、結果的に一番正しい

皮肉な話ですが、

「正しく入力しよう」とするほど
記帳は止まり、数字は見えなくなります。

一方で、

「判断だけして、先に進む」

と決めた社長ほど、

  • 数字を見る頻度が増え
  • 気づきが増え
  • 結果的に修正も早くなります

今日の一言

「会計ソフトを正しく使おうとするな。
判断ルールを決めて、止まらずに使え。」


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