
― 簿記との正しい付き合い方・最終結論 ―
6回シリーズのゴール地点に立って
ここまで、全6回にわたって
「スモールビジネス経営者が学ぶべき簿記の基本」
というテーマでお話ししてきました。
- 仕訳を意識しない記帳の考え方
- 月次P/Lの見方
- P/LとB/Sの繋がり
- 社長が最低限知っておくべき仕訳パターン
正直に言えば、
これだけやれば“簿記としては十分すぎる” 内容です。
それでも、最後にもう一度だけ、
とても大切なことを整理しておきたいと思います。
それは、
簿記を「どう学ぶか」よりも
「どう付き合うか」で会社の未来は決まる
ということです。
仕訳を学ぶ順番を間違えると、ほぼ確実に失敗する
数字が苦手な社長が、
会計や簿記でつまずく一番の原因。
それは 「学ぶ順番」 です。
多くの社長が、こんな順番で挑戦します。
- いきなり簿記の本を買う
- 借方・貸方で挫折
- 「自分は数字が苦手だ」と思い込む
- 会計を完全に税理士任せにする
これ、ほぼ失敗ルートです。
本来の正しい順番
本来は、順番が逆です。
- 判断のために数字を見る
- 月次P/Lで経営を振り返る
- 「なぜこうなった?」と疑問を持つ
- その理由として仕訳を理解する
仕訳は「入口」ではありません。
“答え合わせ”の位置づけです。
記帳・仕訳・財務諸表の「正しい距離感」
ここで一度、社長と会計の距離感を整理しましょう。
記帳:近すぎても、遠すぎてもダメ
- 完璧にやろうとする → 疲弊
- 丸投げしすぎる → 中身がブラックボックス
社長にとっての記帳は、
「正しく入力されているかを判断できる距離」
これがベストです。
freeeやマネーフォワードで
「これは売上?経費?」
「これは今月?来月?」
この判断ができれば十分です。
仕訳:理解するが、覚えない
第5回でお伝えした通り、
社長が知っていればいい仕訳は 5パターンだけ でした。
- 売上が立つ
- 入金される
- 経費を払う
- 原価・外注を使う
- 借入・返済をする
これ以上は、
覚えなくていい のです。
仕訳は敵ではありません。
裏側で「数字がどう動いているか」を知るための
構造説明ツールです。
財務諸表:社長の主戦場はここ
社長が一番向き合うべきは、
- 月次P/L
- 簡易B/S
ここだけです。
決算書を完璧に読める必要はありません。
でも、
- 今月、儲かったのか?
- その利益は現金として残っているのか?
- 危険な兆候は出ていないか?
これを判断できないのは、
社長としてかなり危険です。
社長が「やるべきこと」と「やらなくていいこと」
ここで、はっきり線を引きましょう。
社長がやるべきこと
- 月次P/Lを見る
- 前月・前年と比較する
- 「なぜ?」を考える
- 次の一手を決める
社長がやらなくていいこと
- 仕訳を全部覚える
- 勘定科目を細かく設定する
- 会計ルールを完璧に理解する
会計は、
社長の仕事を減らすための道具であって、
仕事を増やすものではありません。
事例|会計を「武器」に変えた社長の話
ある小規模サービス業の社長の話です。
この社長は、以前こんな状態でした。
- 売上は増えている
- でもなぜかお金が残らない
- 決算前にいつも慌てる
そこでやったのは、たった一つ。
毎月、月次P/Lを15分見る
それだけです。
- 売上の増減
- 外注費の割合
- 利益率の変化
これを見ているうちに、
「この仕事、忙しいけど儲かってないな」
「この外注、コスパ悪いな」
と、自然に判断できるようになりました。
結果、
売上はほぼ同じなのに、
利益だけが残る会社に変わりました。
会計を「経営の武器」に変える視点
ここが一番伝えたいポイントです。
会計は、
- 正解を探すものではありません
- 点数を取るものでもありません
判断を良くするための道具です。
数字が苦手でも構いません。
むしろ、数字が苦手な社長ほど、
- 数字を「使う」意識
- 判断に繋げる姿勢
を持てば、
会計は一気に武器になります。
次のステップへ|利益計画・月次判断へ
このシリーズを読み終えたあなたは、
もう次の段階に進めます。
それは、
- 利益目標を先に決める
- 月次でズレを確認する
- 修正する
という 「利益計画 × 月次判断」 の世界です。
簿記は、もう怖くありません。
あなたはすでに、
「経営のために数字を見る社長」
になっています。
今日の一言
簿記は覚えるものではない。
社長が“判断するために使うもの”である。
