― 価格競争から抜け出すためのポジショニング再設計|第3回目(全6回) ―
「仕事は来ている。でも、正直しんどい」
売上はゼロじゃない。
むしろ、そこそこ忙しい。
それなのに、
- 気を使う案件ばかり
- 話が二転三転する
- 値段の話ばかりされる
- 終わっても、達成感がない
そんな仕事が続くと、
ふと、こんな気持ちが湧いてきます。
「この仕事、正直あまりやりたくないな…」
多くの経営者は、
この感情を見なかったことにします。
- 仕事を選べる立場じゃない
- 贅沢は言えない
- 文句を言ってはいけない
ですが、実はここに
ポジショニングを設計するための“宝の山”が眠っています。
STEP2でやるのは「強み探し」ではない
ポジショニングの話になると、
よくこんな質問をされます。
- 「自分の強みが分かりません」
- 「他より優れている点が見つからなくて」
ですが、STEP2でやるべきことは、
強みを探すことではありません。
むしろ、真逆です。
「やりたくない仕事」を、徹底的に言語化すること。
なぜなら、
人は“できること”よりも、
“やりたくないこと”の方が圧倒的に本音が出るからです。
「全部やります」が、地獄の入口になる
多くの人は、こう言います。
- 「基本、何でもやります」
- 「できる限り対応します」
- 「お客様の要望には柔軟に」
一見、誠実で、良さそうです。
ですが、これが何を引き寄せるか。
- 無茶な要求
- 曖昧な依頼
- 丸投げ
- 価格にシビアな案件
なぜなら、
「断らない人」には、
“断られたくない仕事”が集まるからです。
その結果、
- 疲弊する
- 利益が出ない
- 仕事が嫌になる
という悪循環に入ります。
ケース①:「安くて早くて全部やって」が常態化した制作現場
ある制作系の事業者の話です。
彼は、技術力もあり、対応も丁寧。
そのため、最初はこう考えていました。
「とにかく間口を広くして、仕事を取ろう」
結果、集まったのは、
- 予算は低い
- 要望は多い
- 修正は無限
- 決定は遅い
という案件ばかり。
本人は言います。
「正直、この手の仕事はもうやりたくない」
しかし、ホームページや営業資料を見ると、
- 「柔軟に対応します」
- 「幅広いニーズにお応え」
と、まさにその仕事を歓迎する言葉が並んでいました。
つまり、
やりたくない仕事を、自分で呼び込んでいたのです。
「嫌いな仕事」は、能力不足ではなく“相性”の問題
ここで大事な視点があります。
やりたくない仕事=
自分が未熟だから、
努力が足りないから、
ではありません。
多くの場合、それは
価値観・思考・進め方の“相性”の問題です。
例えば、
- 決断が遅い人との仕事
- 数字より感覚で話す人との仕事
- 丸投げ前提の人との仕事
これらは、
- 能力の問題ではなく
- 向き・不向きの問題
です。
にもかかわらず、
「仕事なんだから仕方ない」と我慢し続けると、
ポジションはどんどん濁っていきます。
STEP2の核心:「NO」を言語化する
STEP2でやるべきことを、
一言で言うならこれです。
「自分は、何を引き受けないのか」を決める
ここでいう「引き受けない」は、
- 横柄な態度を取る
- 上から目線になる
という意味ではありません。
“最初から対象外にする”
という、立ち位置の設計です。
ケース②:「やらない仕事」を決めた瞬間、相談内容が変わった
ある業務支援系の事業者は、
以前、こんな案件に悩まされていました。
- とりあえず話を聞いてほしい
- 方向性は決まっていない
- でも、安く済ませたい
本人は、こう感じていました。
「正直、覚悟のない相談はしんどい」
そこで、
あえて言語化したのが、次の一文です。
「方針を決める覚悟がない状態でのご相談はお受けしていません」
これを軸に、
発信・説明・会話の仕方を整えたところ、
- 相談内容が具体化
- 決断前提の相談が増加
- 価格交渉が激減
しました。
やりたくない仕事を切ったことで、
やりたい仕事が“選ばれて”来るようになったのです。
「やりたくない仕事」を分解してみる
STEP2では、
感情をそのまま放置しません。
次のように、分解して言語化します。
- どんな状態の相手か
- 何が一番ストレスか
- どのタイミングが嫌か
- 何が起きると後悔するか
例えば、
- 決断を先延ばしにする
- 予算を決めない
- 目的が曖昧
- 人任せ
こうした要素が見えてくると、
逆に、自分が輝く条件も浮かび上がります。
ポジショニングは「好き」より「嫌い」から決まる
多くの人は、
- どんな仕事が好きか
- どんな分野に興味があるか
から考えようとします。
ですが、実務の現場では、
「これは嫌だ」と感じるポイントの方が、
圧倒的に再現性が高い。
なぜなら、
- 体験済み
- 感情が動いている
- 記憶に残っている
からです。
この「嫌だ」を丁寧に拾い上げることで、
自分が立つべきポジションの“輪郭”が
はっきりしてきます。
STEP2のゴール:「これはやらない」と言える状態
STEP2のゴールは、
明確なキャッチコピーを作ることではありません。
- これは引き受けない
- この条件ではやらない
- この状態の人とは組まない
を、自分の中で言語化できていることです。
これができると、
- 仕事の選別が楽になる
- 説明がブレなくなる
- 結果的に価格交渉が減る
という変化が起きます。
「やりたくない」を言えない限り、価格競争は終わらない
価格競争に陥りやすい人の共通点は、
とてもシンプルです。
「NO」を言えない
- 条件を飲む
- 期待に応えようとする
- 合わせてしまう
その結果、
「誰でもいいから受けます」という立ち位置になり、
最も厳しい比較にさらされます。
逆に、
- やらない仕事
- 組まない相手
が明確な人ほど、
価格以外の軸で選ばれるようになります。
次回予告:STEP3|「何者として記憶されたいか」を設計する
次回は、
- STEP1で決めた「誰に」
- STEP2で決めた「やらないこと」
を踏まえた上で、
「結局、自分は何屋として記憶されたいのか」
を言語化するSTEPに進みます。
ここで初めて、
肩書き・説明文・打ち出し方が
一本の線でつながっていきます。
今日の一言
ポジショニングは、
「何ができるか」ではなく
「何をやらないか」を決めた瞬間に、輪郭を持つ。
