― 価格競争から抜け出すためのポジショニング再設計|第5回目(全6回) ―
「強みは何ですか?」と聞かれた瞬間、言葉が薄くなる理由
ポジショニングを考える場面で、
ほぼ確実に出てくる質問があります。
「あなたの強みは何ですか?」
この問いに対して、多くの人はこう答えます。
- 丁寧な対応
- 豊富な経験
- 高い専門性
- 柔軟な提案力
どれも間違ってはいません。
ですが、正直に言うと──
これで選ばれることは、ほとんどありません。
なぜなら、
それらはすべて「自分目線で語った評価」だからです。
ポジショニングで本当に必要なのは、
「なぜ、あなたが選ばれたのか」という、
結果として起きた事実の言語化です。
「強み」から考えると、だいたい独りよがりになる
強みからポジションを作ろうとすると、
思考はこう流れます。
- 自分はこれが得意
- これは他より優れている
- だから、ここを打ち出そう
一見、論理的です。
ですが、ここには決定的な欠点があります。
それを「価値」と感じるかどうかは、相手次第
という点です。
あなたが、
- 時間をかけて
- 工夫して
- 苦労して身につけたこと
であっても、
それが選ばれた理由と一致しているとは限らない。
ここに、多くのズレが生まれます。
ケース①:本人が誇る「専門性」は、選定理由ではなかった
ある専門サービスを提供している人の話です。
本人は、こう語っていました。
「専門知識には、かなり自信があります」
実際、資格も実績もあり、
勉強も人一倍している。
そこで、
ホームページや説明資料では、
- 専門性
- 理論
- 手法
- フレームワーク
を前面に出していました。
ところが、
実際に顧客に「なぜ選んだのか」を聞いてみると、
返ってきた答えはこうでした。
「正直、専門性の違いは分かりませんでした」
「でも、話していて“整理してもらえそう”だと思ったんです」
つまり、
- 本人が押していた強み → 専門性
- 実際に選ばれた理由 → 頭の中が整理される感覚
だったのです。
このズレを放置したままでは、
どれだけ言葉を磨いても刺さりません。
STEP4は「自己分析」ではなく「事後分析」
ここで、STEP4の本質をはっきりさせましょう。
STEP4でやるのは、
- 自分の良さを掘り下げること
- ストーリーを盛ること
- 魅力的に見せること
ではありません。
「なぜ、実際に選ばれたのか」を、後から分析すること。
つまり、事後分析です。
すでに起きた事実だけを材料にする。
推測や願望は、できるだけ排除します。
「選ばれた理由」は、だいたい本人が気づいていない
面白いことに、
選ばれた理由は、
当の本人が一番気づいていないことが多いです。
なぜなら、
- 無意識にやっている
- 当たり前すぎる
- 努力している自覚がない
からです。
例えば、
- 話を聞くテンポ
- 言葉の噛み砕き方
- 判断を急がせない姿勢
- 迷いを許す空気
こうしたものは、
履歴書にも、実績一覧にも載りません。
ですが、
選ばれる瞬間に、強く作用している要素です。
ケース②:「安いから」ではなかった、本当の理由
別の事例を見てみましょう。
ある事業者は、
自分が選ばれている理由を、こう思っていました。
「たぶん、価格が抑えめだからだと思います」
確かに、
相場より少し安い。
ところが、
数人の顧客にヒアリングしてみると、
こんな声が出てきました。
- 「急かされなかったのが良かった」
- 「決めるまで待ってくれた」
- 「押し売りされなかった」
つまり、
- 価格 → 表面的な要素
- 実際の理由 → 安心して決められた
だったのです。
もし彼が、
- 「安さ」を前面に出し続けていたら
- もっと安い競合が現れた瞬間
一気に比較の土俵に引きずり出されていたでしょう。
「選ばれた理由」は、感情の中にある
ここで重要なポイントがあります。
選ばれた理由は、
- 機能
- スペック
- 条件
よりも、
感情の変化として語られることが多い。
例えば、
- 「不安が減った」
- 「整理された」
- 「一緒に考えてくれた」
- 「任せても大丈夫だと思えた」
これらは、
強み一覧には出てこない言葉です。
ですが、
意思決定の最後の一押しになっています。
STEP4では、
この感情の変化を丁寧に拾い上げます。
競合と被らない理由は、ここにある
STEP3までで、
- 競合比較から降り
- 思い出される状況を定め
ました。
STEP4で「選ばれた理由」を起点にすると、
自然とこんな特徴が現れます。
- 抽象的ではない
- 比較しづらい
- 真似しにくい
なぜなら、
それは“あなたと、その人の間で起きた出来事”
だからです。
競合が真似できるのは、
- サービス内容
- 価格
- 表現
まで。
関係性の中で生まれた理由は、
簡単にはコピーできません。
STEP4の具体的な問い
STEP4では、
次のような問いを自分に投げかけます。
- 最後の決め手は、何だったと言われたか
- 比較していた他社は、なぜ選ばれなかったか
- どんな言葉をかけた後、表情が変わったか
- どの瞬間に「任せます」と言われたか
これらを、
評価せず、盛らず、そのまま書き出す。
すると、
- 自分では意識していなかった役割
- 無意識に提供していた価値
が、浮かび上がってきます。
「強み」は後から名前がつく
ここまで来ると、
ようやく「強み」という言葉が使えます。
ただし、順番が逆です。
- 先に強みを決める → 失敗しやすい
- 選ばれた理由を集める → 後から強みになる
この順番です。
つまり、
強みとは、
選ばれ続けた結果に付けられる“ラベル”
にすぎません。
最初から決めに行くものではないのです。
STEP4のゴール:「説明しなくても伝わる感覚」
STEP4を終えた状態とは、
- 自分の価値を必死に説明しなくても
- なぜか話が通じ
- 比較されにくくなる
そんな感覚が出始める段階です。
これは、
- 言葉がうまくなったから
- プレゼン力が上がったから
ではありません。
“選ばれた理由”と同じ構造で、
自分を語れるようになったからです。
次回予告:STEP5|ポジションは「作る」ものではなく「定着させる」もの
次回はいよいよ、
- STEP1〜4で見えてきた立ち位置を
- どう日常の発信・説明・行動に落とすか
を扱います。
一度決めたポジションが、
なぜブレてしまうのか。
どうすれば、自然に定着していくのか。
「設計」と「運用」の話に入っていきます。
今日の一言
ポジショニングは、
自分が語りたい“強み”ではなく、
相手が語る“選んだ理由”から
始めるとうまくいく。
