
――「社長が数字を嫌いになった日」第1回――
数字が苦手な社長ほど、実は真面目だ
「正直、数字は苦手でして……」
経営者の方とお話ししていると、
この言葉を聞かない日はありません。
そして多くの社長は、こう続けます。
- 学生時代から数学がダメで
- 会計の授業もよく分からなくて
- だから今も、数字は税理士さん任せで
でも、私はこの話を聞くたびに、
ある違和感を覚えます。
本当に、社長は
「最初から」数字が苦手だったのでしょうか?
社長は、数字が分からずに起業したわけではない
少し思い出してみてください。
会社を始めた頃、あるいは独立する前。
あなたは、こんなことを考えていなかったでしょうか。
- この仕事なら、これくらいの売上はいけそうだ
- 原価はこのくらいだから、利益は残るはず
- 月に〇件取れれば、生活できる
これ、全部数字の話です。
完璧な計算ではなかったかもしれません。
でも、
- いくら売るか
- いくら残すか
- どれくらい必要か
数字を使って考えていたはずです。
つまり、
社長は「数字が嫌い」だったわけでも、
「数字が全く分からなかった」わけでもない。
必要な範囲で、ちゃんと数字を使っていたのです。
それでも、いつの間にか数字が怖くなった
では、なぜ今はこう感じてしまうのか。
「数字を見ると、よく分からなくて不安になる」
「決算書を見ると、頭が止まる」
ここで、多くの社長に共通する
**“ある転換点”**があります。
【ケース】頑張っているのに、数字が追いつかなくなった日
ある建設業の社長の話です。
独立当初は、
「月に〇件取れれば大丈夫」
という感覚で、順調に回っていました。
ところが、
仕事が増え、社員を雇い、外注も増えた頃から、
- 売上は伸びている
- 忙しさも増している
- でも、なぜかお金が残らない
この状態が続きます。
決算書を見ても、
黒字なのか赤字なのか、正直ピンとこない。
税理士からは
「利益は出ていますよ」と言われる。
でも、口座残高を見ると不安になる。
この瞬間、社長の中で
数字が「味方」から「敵」に変わります。
数字が嫌いになったのではなく、数字が「分からなくなった」
ここが、とても大事なポイントです。
社長は、
数字を嫌いになったのではありません。
分からなくなった数字に、触れるのが怖くなっただけです。
- 見ても判断できない
- 正しいかどうか分からない
- 間違えたら怖い
こうなると、人は自然に距離を取ります。
これは、
能力の問題でも、意欲の問題でもありません。
人として、極めて自然な反応です。
社長が突然「失敗できない立場」になる瞬間
もう一つ、重要な変化があります。
それは、
社長は途中から「失敗できない立場」になる
ということです。
- 社員の生活がかかっている
- 家族の生活もかかっている
- 取引先への責任もある
学生時代のテストと違って、
「間違えました」で済まされない。
だからこそ、
分からない
自信がない
とは、言いづらくなる。
この瞬間から、
社長は数字に対して
「分からない」と言えない存在になります。
「分からない」と言えない数字ほど、怖いものはない
結果として起きるのが、これです。
- 数字の話は税理士に任せる
- 自分は現場と営業に集中する
- 決算書は一応もらうけど、深く見ない
これは怠慢ではありません。
防衛反応です。
でも、この状態が続くと、
- 数字はますます遠ざかり
- 分からなさは蓄積し
- 不安だけが大きくなる
という悪循環に入ります。
そして、ある日こう思うようになります。
「自分は、数字が苦手なんだ」
それ、本当に「苦手」でしょうか?
ここで、もう一度問い直したいのです。
あなたは本当に、
数字が苦手なのでしょうか?
それとも、
- 途中から難しくなりすぎた
- 誰も整理して教えてくれなかった
- 分からないまま責任だけが増えた
その結果、
数字との距離が開いただけではないでしょうか。
多くの社長は、
「才能がない」のではありません。
順序を飛ばしただけです。
管理会計の虎の穴が、入門から始める理由
だからこそ、
このブログ「管理会計の虎の穴」は、
いきなり専門的な話をしません。
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そういう世界ではありません。
まずやるべきなのは、
「自分はダメじゃなかった」と理解することです。
社長は、
最初から数字が苦手だったわけじゃない。
途中で、
置いていかれただけなのです。
今日の一言
社長が数字を嫌いになったのではない。
数字が、社長を置き去りにしただけだ。
