②会計は誰のための数字なのか


――財務会計は過去、管理会計は未来・第2回――


「数字を見ろ」と言われて、苦しくなったことはありませんか?

経営をしていると、
必ず誰かにこう言われます。

  • 「数字、ちゃんと見てますか?」
  • 「会計を理解しないと経営はできませんよ」
  • 「社長なんだから、数字は分からないと」

そして多くの社長が、
こう感じます。

「見てはいるけど…
正直、これって自分のための数字なのか?」

この違和感。
実は、とても健全です。

なぜなら、
多くの会計数字は、そもそも社長のために作られていない
からです。


会計数字の正体は「報告用の数字」

まず、はっきりさせておきましょう。

あなたが普段見ている、

  • 決算書
  • 試算表
  • 損益計算書
  • 貸借対照表

これらの会計数字は、

「経営判断のため」ではなく、
「報告のため」に作られた数字

です。

これは批判ではありません。
そういう役割なのです。


会計は「誰に」向けて作られているのか

会計には、明確な相手がいます。

主に、次の人たちです。

  • 税務署
  • 金融機関
  • 株主
  • 取引先(信用判断)

つまり、

社外の第三者のための共通言語

これが会計です。

だから、

  • ルールが厳密
  • 表示方法が決まっている
  • 主観が入りにくい

ように設計されています。


【ケース①】「税理士向けの数字」を見せられている社長

ある社長が、こんなことを言っていました。

「試算表を見ても、
 なんか“自分の言葉”じゃない気がするんですよね」

よく話を聞くと、

  • 勘定科目は専門用語だらけ
  • 何が重要か分からない
  • 判断につながらない

つまりその数字は、

税理士さんにとっては分かりやすいが、
社長にとっては使いにくい数字

だったのです。


会計が「社長に優しくない」理由

ここで誤解しないでください。

会計が悪いわけではありません。

ただ、

会計は、
「社長がワクワクしながら未来を考える」
ためには作られていない

というだけです。

会計の目的は、

  • 正確性
  • 公平性
  • 一貫性

これらを守ること。

経営判断に必要な、

  • ざっくり感
  • 仮説
  • スピード

とは、性質が違います。


「この数字、誰のため?」と一度立ち止まってみる

数字を見て、

  • 分からない
  • ピンとこない
  • 行動に移せない

と感じたら、
能力不足を疑う前に、こう考えてみてください。

「この数字は、誰のために作られたんだろう?」

ほとんどの場合、答えはこうです。

「社長のため“だけ”ではない」


【ケース②】銀行に説明するための数字と、社長の数字は違う

銀行融資の場面を想像してください。

銀行が知りたいのは、

  • 返せるか
  • 安定しているか
  • 数字が整っているか

です。

一方、社長が知りたいのは、

  • この事業、続けていいのか
  • 次に何を打つべきか
  • どこに手を入れれば楽になるか

同じ「数字」でも、
目的がまったく違います。


会計をそのまま経営に使おうとすると起きること

ここで、多くの社長が陥る罠があります。

「せっかく数字があるんだから、
これで経営判断もしよう」

すると、こんな症状が出ます。

  • 数字を見る時間が増える
  • でも判断は遅くなる
  • 自信がなくなる

なぜか。

他人向けに作られた数字で、
自分の決断をしようとしているから

です。


管理会計は「社長のためだけ」に作っていい

ここで登場するのが、管理会計です。

管理会計には、
たった一人の読者しかいません。

社長、あなた自身

極端に言えば、

  • 税務署に見せなくていい
  • 銀行に見せなくていい
  • 形式がバラバラでもいい

大事なのは、

あなたが判断できるかどうか

それだけです。


【ケース③】社長専用の数字を作ったら、会話が変わった

ある社長は、
管理会計をこう定義しました。

  • 「この数字を見て、
     YESかNOか言えればOK」

それだけです。

  • 利益率
  • 固定費
  • キャッシュ残高

すべてを完璧に把握する必要はありません。

結果として、

  • 税理士との会話が楽になり
  • 銀行との面談も怖くなくなり
  • 社内の意思決定が早くなった

と言います。


会計は「外の目線」、管理会計は「社長の目線」

整理すると、こうなります。

  • 会計:外に説明するための数字
  • 管理会計:内で決めるための数字

どちらも必要です。

でも、

役割を入れ替えた瞬間に、
数字は社長を苦しめ始める

のです。


「数字が苦手」と感じる社長ほど、実は健全

ここまで読んで、

「だから自分は数字が苦手だったのか」

と感じた方もいるかもしれません。

それは、
数字そのものが苦手なのではなく、
自分向けに翻訳されていない数字が苦手

なだけです。

これは、とても健全な反応です。


管理会計は、社長の思考を助ける道具

管理会計の役割は、

  • 正解を出すこと
  • 未来を当てること

ではありません。

考えやすくすること
決めやすくすること

それだけです。

だから、

  • 雑でもいい
  • 仮でもいい
  • 曖昧でもいい

のです。

会計は、他人のため。
管理会計は、自分のため。

ここを分けられた瞬間から、
数字との付き合い方は
確実に変わり始めます。


今日の一言

その数字は、
誰のために作られたものか。
そこを間違えなければ、
数字は社長の味方になる。


PAGE TOP