
――財務会計は過去、管理会計は未来・第3回――
「その数字、誰に説明するためですか?」
ある社長が、ぽつりとこう言いました。
「この数字って、
誰かに説明する必要があるんですか?」
とても大事な問いです。
なぜなら、
この質問にすぐ答えられない数字は、
社長のために存在していない可能性が高い
からです。
会計は「説明する数字」、管理会計は「決める数字」
まず、大前提を整理しましょう。
- 会計 → 説明するための数字
- 管理会計 → 決めるための数字
似ているようで、役割は真逆です。
会計は、
- 税務署に説明する
- 銀行に説明する
- 利害関係者に説明する
ために存在します。
一方、管理会計は、
社長が、迷わず決めるためだけ
に存在します。
「社長のためだけ」という言葉が、なぜ重要なのか
ここで強調したいのは、
**“社長のためだけ”**という部分です。
管理会計は、
- 税理士のためではありません
- 経理担当のためでもありません
- 銀行のためでもありません
極端に言えば、
社長以外が見て分からなくてもいい
のです。
これが、多くの社長を救います。
【ケース①】「きれいな資料」を作って、判断が遅くなった社長
ある会社では、
毎月こんなことが起きていました。
- 経理が立派な資料を作る
- 社長は一通り目を通す
- でも何も決められない
理由は簡単です。
その資料は、
- 正確
- きれい
- 説明向き
でも、
「社長が次に何をするか」
が分からない数字
だったからです。
管理会計は「雑でいい」「未完成でいい」
管理会計において、
よくある誤解があります。
- きちんとしていなければいけない
- 正確でなければ使えない
- プロが作るもの
全部、違います。
管理会計は、
社長が使えれば、それで正解
です。
- 手書きでもいい
- Excel一枚でもいい
- 仮の数字でもいい
むしろ、
完璧を求めるほど、使われなくなります。
【ケース②】「社長の落書き」から始まった管理会計
ある社長は、
最初こんな管理会計を使っていました。
- 月の売上(ざっくり)
- 固定費
- 今月あといくら使えるか
たったこれだけ。
でも、この「落書き」が、
- 投資判断
- 採用判断
- 値上げ判断
の基準になっていきました。
税理士が見たら、
「雑ですね」と言うかもしれません。
でも、
社長にとっては、これ以上ない“武器”
だったのです。
管理会計は「社長の思考の補助輪」
管理会計の役割を、
一言で言うならこうです。
社長の頭の中を、
少しだけ外に出す道具
完璧な未来予測はいりません。
- 考えるきっかけ
- 比較する材料
- 決断する後押し
これができれば十分です。
会計をそのまま使うと、社長は「考えなくなる」
ここで怖い話をします。
会計数字をそのまま経営に使い続けると、
社長はどうなるか。
- 数字に従う
- 数字に振り回される
- 数字に黙らされる
つまり、
考えなくなる
のです。
「数字がそう言っているから」
これは、一見正しそうですが、
とても危険な状態です。
管理会計は「反論していい数字」
管理会計は、
社長にこう言われる存在でなければなりません。
- 「本当にそうか?」
- 「現場感覚と違うぞ」
- 「これは一時的だな」
つまり、
疑っていい数字
です。
会計数字は疑いにくい。
管理会計は疑っていい。
この違いは、決定的です。
【ケース③】数字に「ツッコミ」を入れ始めた社長
数字が苦手だった社長が、
ある時こう言いました。
「最近、数字にツッコミ入れてます」
- 「この利益、たまたまだな」
- 「この費用、来月は減るはず」
- 「この数字、感覚とズレてる」
これこそが、
管理会計が機能し始めたサインです。
管理会計があると、社長は孤独じゃなくなる
経営者は、基本的に孤独です。
- 正解が分からない
- 誰にも相談できない
- 決断は自分だけ
そんな中で、管理会計は、
黙って話を聞いてくれる相棒
になります。
- 感情を整理し
- 状況を俯瞰し
- 決断を支える
それだけで、十分価値があります。
「社長のためだけ」という覚悟を持つ
管理会計を導入する時、
ぜひこう決めてください。
「これは、自分のためだけに使う」
- 誰かに褒められなくていい
- 理解されなくていい
- 共有しなくてもいい
この覚悟があると、
数字との距離が一気に縮まります。
その数字が、
あなたの背中を押しているか。
それだけが、
管理会計の合否基準です。
今日の一言
管理会計は、
正しいために存在するのではない。
社長が決めるためだけに存在する。
