
――黒字なのに、なぜ苦しい?・第2回――
「ちゃんと利益は出ているんですけどね…」
社長との面談で、
この言葉を聞かないことはありません。
- 決算は黒字
- 税金も払っている
- 税理士からも「問題ない」と言われる
それなのに、
- 通帳の残高は増えない
- 資金繰りの不安が消えない
- 「儲かっている実感」がまったくない
そして、最後にこう続きます。
「これって、普通なんですか?」
先に結論:利益とお金は、別の生き物です
いきなりですが、
今日一番大事なことを言います。
利益とお金は、まったく別の生き物です。
似ているようで、
動き方も、性格も、危険ポイントも違います。
この違いを知らないまま経営すると、
- 利益が出ているのに苦しい
- 頑張るほど不安になる
- 黒字なのに倒れる
という事態が起きます。
利益とは「計算上の結果」である
まず、利益の正体を整理しましょう。
利益とは、
一定期間の売上と費用を、
ルールに従って計算した結果
です。
- 実際にお金が入ったかどうか
- 実際にお金を払ったかどうか
とは、必ずしも一致しません。
【ケース①】利益は出ている。でも入金はまだ先
あるIT系の会社の話です。
- 12月に仕事完了
- 売上として計上(利益も出る)
- 入金は翌年2月
決算上は、
- 12月:黒字
- 利益もしっかり出ている
でも、
12月時点で通帳にお金はありません。
これが、
「利益はあるが、お金はない」
状態です。
お金とは「今、使える現金」である
一方、お金はとても現実的です。
- 今、払えるか
- 今、残っているか
- 今、足りているか
それだけを問いかけてきます。
お金は、
「黒字かどうか」には一切興味がありません。
利益が出ていても、お金が減る代表例
ここで、
よくあるパターンを整理してみましょう。
① 売掛金が増えている
- 売上は計上されている
- でも、まだ入金されていない
売上が伸びるほど、
お金が入ってくる前に、
先に支払いが発生する
という現象が起きます。
② 在庫が増えている
- 仕入れはすでに支払い済み
- でも、まだ売れていない
決算書上は、
- 在庫=資産
ですが、
現金はすでに出ていっています。
③ 借入の返済をしている
ここは、特に盲点です。
- 借入返済 → 利益には影響しない
- でも、お金は確実に減る
社長はこう言います。
「利益出てるのに、
毎月お金が減る理由が分からなかった」
【ケース②】借入返済で、静かにお金が消えていった会社
ある製造業の会社。
- 毎月50万円の借入返済
- 年間600万円
決算上は、
- 利益300万円(黒字)
でも、
実際のキャッシュは、
- 利益300万円
- 返済600万円
→ 差引▲300万円
当然、苦しくなります。
なぜ社長は、このズレを教わらないのか
ここで、
多くの社長が感じる疑問。
「なんで、誰も教えてくれなかったんだろう?」
答えは、残念ですが明確です。
- 会計は「利益」を教える
- 税理士は「決算」を整える
- 銀行は「返せるか」を見る
でも、
社長が日々感じる
「お金の苦しさ」を
体系的に教える人はいない
のです。
利益を追う経営が、逆に首を絞めることもある
ここで、
少し怖い話をします。
「もっと売上を上げよう」
「もっと利益を出そう」
この判断が、
お金を一番減らす判断
になることもあります。
【ケース③】頑張った結果、資金繰りが悪化した社長
ある社長は、
こう言いました。
「売上を取りに行くほど、
資金繰りが悪くなりました」
理由はシンプルです。
- 外注費は即支払い
- 入金は2か月後
- 利益率は低い
結果、
- 忙しい
- 黒字
- でも資金は減る
これが、
「黒字なのに苦しい」正体です。
管理会計は「利益」と「お金」を分けて考える
ここで、
管理会計の出番です。
管理会計は、
- 利益の話
- お金の話
を、意識的に分けます。
- 今、儲かっているか
- 今、耐えられるか
この2つを、
同時に見にいきます。
社長が最初にやるべき、たった一つのこと
今日からできることは、
難しくありません。
「利益が出ている」
と聞いたら、
「それで、お金はどうなってる?」
と必ず聞くこと
これだけで、
経営の視点が一段上がります。
利益は“成績”、お金は“体力”
分かりやすく言うなら、
- 利益 → 成績表
- お金 → 体力
成績が良くても、
体力が尽きたら終わりです。
でも、
体力があれば立て直せます。
この違いに気づいた瞬間から、
あなたの経営は、
確実に一段ラクになります。
今日の一言
利益が出ているのに苦しいのは、
経営が下手だからではない。
利益とお金を、同じものだと思っているだけだ。
