③社長が「忙しいのに儲からない」と感じる本当の理由


――黒字なのに、なぜ苦しい?・第3回――

「こんなに働いているのに…」という社長の本音

「毎日朝から晩まで働いている」
「仕事の依頼は途切れていない」
「むしろ昔より忙しい」

それなのに、
通帳を見ても安心できない
給料日や支払い前になると気が重い
なぜか将来に不安が残る

こうした感覚を持っている社長は、決して少数派ではありません。

そして多くの場合、社長自身がこう考えています。

「まだ会社が小さいから仕方ない」
「今は我慢の時期なんだろう」
「もっと売上を伸ばせば楽になるはず」

ですが、ここで一つ、少し厳しいことを言います。

「忙しいのに儲からない」という状態は、努力不足ではありません。
数字の見方を間違えているだけです。


忙しさと儲けは、まったく別物

まず大前提として、はっきりさせておきたいことがあります。

忙しさ ≠ 利益

これは頭では分かっていても、感覚としては非常に混同しやすいポイントです。

たとえば、こんなケースです。

ケース①:とにかく案件を断らない社長

・仕事の依頼は全部受ける
・単価は低めでも「経験になるから」と引き受ける
・人手が足りなければ自分が残業する

結果として、
✔ 売上は伸びる
✔ スケジュールはパンパン
✔ でも、利益はほとんど残らない

この社長は、「忙しさ」で経営を評価してしまっています。


なぜ「忙しさ=順調」と錯覚してしまうのか

社長が忙しさを成果だと感じてしまう理由は、とてもシンプルです。

① 現場感覚では「仕事量」しか見えないから

特に小規模事業では、社長自身が現場の中心です。

・電話が鳴る
・メールが来る
・作業が増える

この体感はとてもリアルです。
一方で、利益やキャッシュは目に見えにくい

だから無意識のうちに、

「忙しい = 会社は回っている」

と判断してしまうのです。

② 会計が「結果報告」になっているから

決算書や試算表を見ても、

・月に一度
・税理士から送られてくる
・専門用語が多い

こうなると、会計は過去の通信簿になります。

「もう終わった話」
「今さら言われても変えられない」

そう感じた瞬間、社長は数字を行動に使えなくなるのです。


「忙しいのに儲からない」会社の典型パターン

ここで、実際によくある構造を整理してみましょう。

パターン①:利益率の低い仕事が中心

・売上は大きい
・でも、原価や外注費が高い
・手元に残るのはわずか

数字で見れば一目瞭然なのに、
忙しさの中では見落とされがちです。

パターン②:社長の時間が一番安く使われている

・本来は判断や営業をすべき社長が
・現場作業や雑務に追われている

結果として、

✔ 社長は忙しい
✔ でも会社の生産性は上がらない

これは会社として非常にもったいない状態です。

パターン③:「全部やらないと不安」病

・断るのが怖い
・手放すのが不安
・任せるのが苦手

この気持ちはとても自然ですが、
結果として儲からない仕事まで抱え込むことになります。


ここで初めて登場する「管理会計」の役割

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。

「でも、それって性格の問題じゃない?」
「結局、社長の考え方次第では?」

半分正解で、半分違います。

考え方を変えるために必要なのが、
**管理会計という“見える化の道具”**です。


管理会計が変えるのは「社長の判断基準」

管理会計がもたらす最大の変化は、これです。

忙しいかどうか

儲かっているかどうか

判断基準が、完全に入れ替わります。

管理会計で見えるようになること

・どの仕事が利益を生んでいるのか
・どの取引先が会社を支えているのか
・社長の時間は、どこに使うべきか

これらは、決算書だけでは見えません


ケーススタディ:忙しさから抜け出した社長の話

あるサービス業の社長の例です。

・売上は右肩上がり
・毎月黒字
・でも資金繰りは常に不安定

管理会計の視点で整理したところ、分かったことは、

✔ 売上の6割が「ほぼ利益ゼロ」の仕事
✔ 社長の稼働時間の半分以上が低単価業務
✔ 実は、全体の利益の8割は一部の仕事から出ていた

そこで社長がやったことは、

・利益の出ない仕事を徐々に縮小
・単価交渉を実施
・社長の時間を「利益の出る仕事」に集中

結果、

✔ 売上は少し減った
✔ でも利益とキャッシュは大幅改善
✔ 「忙しさ」から解放された

社長自身がこう言いました。

「働く時間が減ったのに、気持ちは一番楽です」


忙しさを疑える社長が、強い

ここで一つ、大事な視点をお伝えします。

「忙しい」という感覚は、経営判断の材料としては非常に危険です。

忙しさは、
✔ 努力
✔ 責任感
✔ 真面目さ

これらと結びつきやすいからこそ、
疑うことが難しいのです。

でも、管理会計は問いを投げかけてきます。

「その忙しさは、会社に何を残しているのか?」


会計は過去、管理会計は未来

このシリーズのテーマに戻りましょう。

会計は、
✔ 過去を正しく記録するもの

管理会計は、
✔ 未来の選択を楽にするもの

「忙しいのに儲からない」という感覚は、
未来への警告サインです。

それを気合や根性で乗り切ろうとすると、
社長が一番先に疲弊します。


今日の一言

忙しさは成果ではない。
社長の仕事は「動くこと」ではなく、「残すこと」を決めること。


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