
――増やす前に、止まって考えろ・第1回――
「人が足りない!」その前に立ち止まる
社長からよく聞く言葉です。
- 「もう、社員が手一杯で回らない」
- 「売上は伸びているのに、現場が疲弊している」
- 「もっと人を増やさないと、会社が持たない」
確かに、人を増やせば短期的には現場の負担は減ります。
でも、ちょっと待ってください。
人を増やす前に、まず数字を見ていますか?
ここを飛ばすと、
増やした人件費だけが膨らんで、利益が圧迫される――
という典型的な落とし穴にハマります。
人を増やす=固定費の増加
人を増やすということは、単純に固定費が増えるということです。
- 新しく雇う社員の給与
- 社会保険料
- デスク・PC・備品
- 教育コスト
これらはすぐに数字に現れます。
そして、固定費が増えた状態で、
- 売上はまだ安定していない
- 利益率が低い
場合、会社の経営は一気に不安定になります。
ケーススタディ①:増員したのに赤字になった会社
ある小規模IT企業の例です。
- 売上:月商500万円
- 人員:3名
- 利益:50万円
「もう一人プログラマーを増やさないと、納期が回らない」と判断し、
月給40万円の社員を採用。
- 固定費:40万円増
- 売上:変わらず
結果、利益はマイナス10万円に転落。
社長は、「人を増やしたことで余裕ができる」と思っていましたが、
実際は会社の体力が削られただけでした。
まず見るべきは「限界利益」
ここで注目すべき数字は、
**限界利益(売上-変動費)**です。
- 変動費:売上に比例して増える費用(材料費、外注費など)
- 固定費:人件費や家賃など、売上に関係なく発生する費用
増員の判断は、
限界利益が固定費をカバーできるかどうか
で決めるのが基本です。
ケーススタディ②:数字で判断した増員
同じIT企業で別の部署。
- 月商:300万円
- 現在の限界利益:200万円
- 固定費:180万円
この状態で人を増やす場合、
- 新しい人件費+現固定費 < 限界利益
であれば、会社はまだ余裕がある
ということが数字で分かります。
もし限界利益を下回るなら、売上を先に増やすか、
変動費を減らす対策が必要です。
増員の前に考える3つのステップ
- 限界利益を把握する
今の売上から、固定費をどれだけカバーできるか - 必要な仕事量を明確にする
新人が担当する業務は、どれだけ利益に貢献するか - 投資回収の計算
採用コスト・教育コスト・給与を回収できるまでの期間を試算
「忙しい=人を増やす」ではない
忙しさの原因は、人手不足だけではありません。
- 無駄な仕事が多い
- 低単価・利益率の仕事に時間を取られている
- 社員の作業効率が悪い
これらは、数字で可視化できます。
人を増やす前に、
「忙しさの原因」を数字で把握することが重要です。
ケーススタディ③:人を増やさず改善した例
あるサービス業の例。
- 月商:400万円
- 従業員:4名
- 利益:50万円
「人を増やさないと回らない」と思っていましたが、
数字で分析すると、
- 利益率の低い案件に工数が集中
- 単価の高い案件は取りこぼしている
改善策:
- 低利益案件を断る
- 高利益案件に集中
- 作業フローを効率化
結果、人は増やさずに利益を20万円増やすことに成功。
増員の意思決定は、感覚ではなく数字で
- 「忙しいから人を増やそう」
- 「社員が疲れているから採用」
これは感覚判断です。
- 短期的には正解に見える
- 長期的には会社を圧迫する
数字で判断すれば、
- 増やすべきか
- 増やす前に効率化すべきか
- 投資回収の見込みが立つか
が分かります。
今日の一言
人を増やす前に、まず限界利益と固定費を確認せよ。
感覚で動く前に、数字で安心できる道筋を描ける社長だけが、
増員しても会社を潰さずに済む。
