
――未来は、数字で設計できる・第3回――
立派な事業計画が、なぜ机の引き出しに眠るのか
「事業計画、ちゃんと作ったんですよ」
「数字もそれなりに考えました」
そう言う社長の机の引き出しには、
高い確率で “見返されなくなった事業計画書” が眠っています。
- 補助金用に作った計画
- 融資のときに提出した資料
- 税理士やコンサルと一緒に作った計画
完成した瞬間は、達成感もあったはずです。
それなのに、
経営の現場では、ほとんど使われていない。
なぜでしょうか。
今日は、この問いに真正面から向き合います。
結論:事業計画が悪いのではない。「使い方」が間違っている
先に結論を言います。
多くの事業計画が絵に描いた餅で終わる理由は、
事業計画を
「作るもの」だと思っているから
です。
本来、事業計画は
- 未来を当てるもの
ではなく - 未来と今をつなぐ道具
です。
ところが多くの場合、
- 作ることがゴール
- 提出して終わり
- 現場の判断と切り離されている
この状態では、
どんなに立派な計画でも、機能しません。
失敗パターン①:数字が“現場の行動”に翻訳されていない
よくある事業計画の中身を見てみましょう。
- 売上:前年比120%
- 利益率:10%
- 新規顧客獲得強化
一見、それっぽいですよね。
でも、ここで社長にこう聞くと、答えに詰まります。
- その120%は、何を増やすことで達成する?
- 誰が、いつ、何を変える?
- 今月は何を判断すればいい?
数字はある。
でも 行動に落ちていない。
これでは、現場は動きません。
ケース①:売上目標だけ立派な会社が、毎年同じ悩みを繰り返す理由
ある小売業の事例です。
この会社は、毎年しっかり事業計画を立てていました。
- 年商目標
- 利益目標
- 成長イメージ
ところが、実態はこうでした。
- 月末に「思ったより利益が出ない」
- 忙しいのにお金が残らない
- 来年も同じ目標を立て直す
なぜか。
計画と月次の数字が、まったくつながっていなかったからです。
事業計画は年に一度。
経営判断は毎月・毎日。
この断絶がある限り、
計画は「飾り」になります。
失敗パターン②:「当てにいく計画」になっている
もう一つ、よくある失敗があります。
それは、
事業計画を
「当てにいく数字」にしてしまうこと
です。
- 現実的すぎて、ワクワクしない
- 外したら恥ずかしい
- 保守的な数字になる
結果、
- 計画と現実がズレると、見なくなる
- 修正せず、放置される
本来、事業計画は
- ズレる前提
- 直す前提
で作るものです。
失敗パターン③:「未来」と「今」が分断されている
事業計画が機能しない最大の理由。
それは、
未来の数字と、
今の管理会計が別物になっている
ことです。
- 事業計画は年単位
- 管理会計は月次
この2つがつながっていないと、
- 今月の数字を見ても、未来に結びつかない
- 未来の目標を見ても、今日の行動が決まらない
これでは、計画が生きる余地がありません。
事業計画は「未来の地図」、管理会計は「現在地」
ここで、イメージしてください。
事業計画は、未来の地図です。
管理会計は、今いる場所を示すGPSです。
どちらか一方だけでは、意味がありません。
- 地図だけあっても、現在地が分からない
- 現在地だけ分かっても、どこに向かうか決まらない
多くの会社では、
- 地図は引き出し
- GPSは数字を見るだけ
この状態になっています。
機能する事業計画に共通する「たった一つの条件」
では、
絵に描いた餅で終わらない事業計画には、何が必要なのでしょうか。
答えはシンプルです。
事業計画が、
毎月の数字を見る“物差し”になっていること
具体的には、
- 月次の数字を見るときに
「計画と比べてどうか?」を必ず確認する - ズレた理由を、感覚ではなく構造で考える
- 計画を修正することを、失敗だと思わない
これだけで、
事業計画は一気に“生き物”になります。
ケース②:計画を「直す前提」にした会社が強くなった話
ある建設業の社長は、こう言っていました。
「計画って、外れるもんですよね?」
この社長の会社では、
- 毎月、計画と実績を並べる
- ズレたら理由を一言で言語化
- 次の月に微調整
これを淡々と続けています。
結果どうなったか。
- 数字への抵抗感がなくなった
- 判断が早くなった
- 銀行との会話もスムーズになった
事業計画は、
守るものではなく、使い倒すものだと分かっているからです。
「絵に描いた餅」を「毎日の判断軸」に変える発想転換
最後に、発想を一つだけ変えてください。
事業計画は、
× 正解を出すための答案
○ 判断を助けるための道具
です。
- 当たったかどうか
ではなく - 判断に使えたかどうか
ここを基準にすると、
事業計画への向き合い方がガラッと変わります。
今日の一言
事業計画は、当てるためのものではない。毎月の判断に使えた瞬間から、意味を持つ。
