
――成長は、設計しないと壊れる・第1回――
「成長したいですね」から、経営事故は始まる
社長とお話ししていると、ほぼ100%の確率で出てくる言葉があります。
「やっぱり、成長したいですよね」
この言葉自体は、とても前向きで、健全です。
問題は、その次です。
- どんな成長ですか?
- どこがどう変わる状態ですか?
- 何が増えて、何が変わらないのですか?
こう聞いた瞬間、空気が止まる。
多くの社長が、
「成長」という言葉を使っているのに、説明できないのです。
成長は「目的」ではなく「状態変化」である
まず大前提として、ここを押さえておきましょう。
成長は、目的ではありません
成長とは、
- 売上が増える
- 利益が増える
- 人が増える
- 影響力が広がる
といった、状態の変化です。
つまり、
「成長したい」
=「何かを変えたい」
という意思表示に過ぎません。
にもかかわらず、多くの経営では、
- 成長したい → 売上目標を上げる
- 成長したい → 人を採る
- 成長したい → 事業を増やす
という短絡的な変換が行われます。
これが、後に「壊れる成長」の正体です。
成長の中身が曖昧な会社で起きる3つの現象
① 現場が「何を頑張ればいいか」分からない
社長は「成長したい」と言う。
しかし現場はこう思っています。
- 売上?
- 利益?
- 件数?
- スピード?
結果、
各自が“自分なりの成長”を追い始める
組織が静かにバラバラになっていきます。
② 数字は伸びているのに、なぜか苦しい
よくあるケースです。
- 売上は前年比120%
- 取引先も増えている
- 忙しさはピーク
なのに、
- お金が残らない
- 社長が現場から離れられない
- 不安が消えない
これは、
設計されていない成長が、会社を圧迫している
典型例です。
③ 成長が止まった瞬間、全部が崩れる
設計のない成長は、
「勢い」に依存しています。
そのため、
- 市況が変わる
- キーマンが抜ける
- 一時的に売上が落ちる
こうした瞬間に、一気に崩れます。
ケーススタディ①:「売上成長」が会社を壊しかけた例
ある小規模サービス業の社長。
口癖は、
「まずは売上を伸ばさないと」
実際に、
- 広告を強化
- 値引きキャンペーン
- 無理な受注
で売上は急増しました。
しかし半年後、
- クレーム増加
- 利益率悪化
- 社員の疲弊
最終的に社長はこう言いました。
「成長したかったはずなのに、
なんでこんなに苦しいんでしょう…」
原因は明確です。
売上しか定義していない成長
だったからです。
「成長したい」は、最低でも4つに分解できる
では、「成長したい」をどう扱えばいいのか。
私は必ず、社長にこう聞きます。
成長って、
何が増えて、
何が変わらず、
何が減ってもいいですか?
ここから、成長は分解できます。
① 量の成長(売上・件数・人数)
② 質の成長(利益率・単価・効率)
③ 構造の成長(仕組み化・権限移譲)
④ 影響の成長(ブランド・信頼・選ばれ方)
このうち、
どれを成長と呼びたいのか
を決めない限り、設計は始まりません。
ケーススタディ②:「成長しない選択」をした会社
製造業のある社長は、こんな決断をしました。
「売上は伸ばさない。
その代わり、利益率と再現性を上げる」
結果、
- 売上横ばい
- 利益は安定増
- 社長の稼働が激減
この会社は、
成長=売上増
という思い込みを捨てた
ことで、結果的に強い会社になりました。
成長設計とは「壊れない変化」を描くこと
このシリーズで扱う
「成長設計」とは、
- 無理に大きくすること
- とにかく拡大すること
ではありません。
会社が耐えられる変化を、順番に設計すること
です。
その第一歩が、
「成長したい」の中身を、言葉と数字で説明できること
なのです。
事業計画は「成長の翻訳機」である
ここで、事業計画の役割が見えてきます。
事業計画とは、
- 銀行に出すもの
- 形式的に作るもの
ではなく、
成長という曖昧な願望を、
数字と行動に翻訳する道具
です。
逆に言えば、
- 成長の定義がない
- 設計思想がない
事業計画は、ほぼ確実に「絵に描いた餅」になります。
「成長したい」と言える社長は多い。
だが、その中身を説明できた瞬間から、
経営は“勢い”ではなく“設計”になる。
