
――成長は、設計しないと壊れる・第6回――
数字の話になると、社長が急に黙る理由
「じゃあ、その成長を数字にしてみましょう」
そう言った瞬間に、
社長の表情が少し硬くなる場面を、何度も見てきました。
- 急に現実的な話になる
- 正解を言わなければいけない気がする
- 外したら責められそう
その結果、出てくるのがこんな数字です。
「売上は…とりあえず、来期1.5倍くらいですかね」
この“とりあえず数字”こそが、
多くの成長計画を絵に描いた餅にしている正体です。
数字は「目標」ではなく「物語の登場人物」
まず、最初に大事な前提をひとつ。
数字は、目標ではありません
正確に言うと、
数字は、
社長が描こうとしている未来の“登場人物”
です。
- なぜ、その数字なのか
- その数字が実現したとき、会社はどうなっているのか
- その途中で、何が起きているのか
これらが語れない数字は、
単なる「願望の数値化」にすぎません。
「数字が苦手」なのではなく、「物語がない」
社長からよく聞く言葉があります。
「数字はちょっと苦手で…」
でも実際に話を聞いてみると、
数字が苦手なのではありません。
数字の“背景”を語る場がなかった
だけです。
- なぜ人を増やすのか
- なぜ今、その投資をするのか
- なぜこのスピードで成長するのか
これらを数字でつなげると、
それは立派な「シナリオ」になります。
成長を「シナリオ」で描くとは、どういうことか
ここで言う「数字のシナリオ」とは、
1年後の数字を当てること
ではありません。
そうではなく、
数字の変化を、時間軸で並べること
です。
つまり、
- 今、どんな状態で
- 次に、何が起きて
- その結果、数字がどう動くのか
を順番に考えていく、ということです。
いきなりPLを見るから、話が飛ぶ
多くの事業計画が破綻する理由はシンプルです。
いきなりPL(損益計算書)から作るから
です。
売上、利益、経費。
もちろん大事です。
しかし、PLはあくまで「結果の集計表」。
そこに至るまでの、
- 行動
- 判断
- 選択
が抜け落ちると、
数字は一気に現実味を失います。
数字のシナリオは「行動 → 数字」の順で描く
成長をシナリオとして描くときの基本構造は、
とてもシンプルです。
- どんな行動をするのか
- その結果、何が変わるのか
- 変化が数字にどう表れるのか
この順番です。
逆にすると、
- 数字ありき
- 後付けの説明
になってしまいます。
ケーススタディ①:数字が動く理由が説明できない計画
あるサービス業の会社。
事業計画には、
- 売上:前年比150%
- 営業利益:2倍
と、立派な数字が並んでいました。
しかし、
「どうやって150%になるんですか?」
と聞くと、
- 営業を頑張る
- 紹介が増える
- 市場が伸びている
と、言葉は出てくるものの、
順番も因果関係もバラバラでした。
これは数字の計画ではなく、
希望の羅列です。
シナリオは「分解」と「積み上げ」で作る
では、どうすればよいのか。
ポイントは2つだけです。
① 数字を細かく分解する
② 下から積み上げる
たとえば売上。
- 客単価 × 件数
- 件数 = 問い合わせ数 × 成約率
ここまでは、多くの社長が知っています。
大事なのは、そのさらに手前。
「なぜ問い合わせが増えるのか?」
という物語です。
ケーススタディ②:成長を“場面”で描いた社長
ある小規模IT企業の社長。
この社長は、数字をこう語りました。
「上期は新サービスのテスト期間。
売上はあまり伸びないが、問い合わせが増える。
下期から成約率が上がり、
来期に売上が跳ねる設計です」
この時点で、
- 数字の上下
- 時期
- 社内の動き
が、はっきりイメージできます。
これが、数字のシナリオです。
数字のシナリオは、社長の覚悟を映す
数字をシナリオで描くと、
必ず避けて通れない問いが出てきます。
- 本当にその投資をするのか
- その間、利益が落ちても耐えられるか
- 人を増やす覚悟はあるか
ここで初めて、
「やりたい成長」
と
「耐えられる成長」
の差が見えてきます。
これは、数字でしか見えません。
シナリオがあると、数字はブレなくなる
数字のシナリオを描くと、
予実管理の意味も変わります。
- 目標未達=失敗
ではなく、 - シナリオと現実のズレを確認する作業
になります。
すると、
- 修正が早くなる
- 判断が感情的にならない
- 社内説明が楽になる
という効果が出てきます。
成長を“当てにいく”のをやめる
最後に、とても大事なことをひとつ。
事業計画の数字は、当てにいくものではありません
当てようとするから、
- 無難な数字
- どこかで見た数字
になります。
そうではなく、
自分たちの選択を、
数字で説明できる状態を作る
これが、数字のシナリオの目的です。
今日の一言
数字は未来を当てるための道具ではない。
社長の覚悟を、見える形にするための言葉である。
