
――成長は、設計しないと壊れる・第8回――
「ちゃんと数字は見ているのに、なぜか苦しい」
こんな言葉を、社長からよく聞きます。
- 毎月、試算表は見ている
- 売上も利益も把握している
- 税理士とも定期的に話している
それなのに、
「何かが噛み合っていない気がする」
「この先、成長できる気がしない」
この違和感の正体は、
数字を見ていないことではありません。
今の成長フェーズに合っていない数字を見ている
これが、最大の原因です。
成長しても「見る数字」を変えない会社の末路
多くの会社は、
- 創業期
- 成長期
- 拡大期
とフェーズが変わっても、
同じ数字を見続けています。
たとえば、
- 売上
- 利益
- 現預金残高
もちろん、これらは大事です。
でも、それだけを見ていても、
- なぜ伸びないのか
- どこが詰まり始めているのか
は、分かりません。
成長とは、
関心を向ける数字を変えていくプロセス
でもあるのです。
そもそも「成長フェーズ」とは何か?
ここでいう成長フェーズとは、
売上規模の大小ではありません。
ポイントは、
社長の悩みが何に変わっているか
です。
- 仕事が取れるか不安
- 忙しすぎて回らない
- 任せたいが怖い
- 投資していいのか迷う
この悩みの変化こそが、
フェーズが変わったサインです。
フェーズ①:立ち上げ期 ― 生き残るための数字
立ち上げ期の会社で、
最優先で見るべき数字は何でしょうか。
答えは、シンプルです。
キャッシュが持つかどうか
この時期に重要なのは、
- 売上の大小
- 利益率の美しさ
ではありません。
- いつ入金されるか
- 固定費はいくらか
- 何ヶ月耐えられるか
ここを外すと、
「黒字倒産」という言葉が
現実になります。
ケーススタディ①:利益は出ているのに、眠れない社長
ある創業2年目の会社。
決算は黒字。
税理士からも「順調ですね」と言われていました。
それでも社長は言います。
「月末が近づくと、胃が痛くなるんです」
理由は簡単でした。
- 入金は遅い
- 固定費は毎月確実に出ていく
このフェーズでは、
利益より、キャッシュ
これが絶対ルールです。
フェーズ②:成長初期 ― 再現できるかを見る数字
少し事業が回り始めると、
次の壁が来ます。
「売上は伸びた。でも、これは偶然なのか?」
このフェーズで見るべき数字は、
- 客数
- 単価
- 受注率
- 稼働率
つまり、
売上の中身
です。
売上合計だけ見ていると、
- 何が伸びたのか
- 何が再現できるのか
が見えません。
フェーズ③:成長期 ― 利益の“質”を見る数字
売上が安定してくると、
次の悩みが生まれます。
「忙しいのに、なぜか楽にならない」
ここで重要になるのは、
- 粗利率
- 商品・サービス別利益
- 人時生産性
です。
このフェーズでは、
売上を伸ばすほど、
利益が薄まる危険
が常につきまといます。
ケーススタディ②:売上倍増、でも社長は疲弊
ある制作会社。
売上は2年で倍増。
でも社長は、以前より忙しくなりました。
数字を分解すると、
- 利益率の低い案件が増加
- 社長の稼働がボトルネック
成長しているように見えて、
実は「消耗戦」に入っていたのです。
フェーズ④:拡大期 ― 判断を誤らないための数字
さらに進むと、
- 人を増やす
- 投資をする
- 新規事業を考える
といった局面が出てきます。
ここで重要なのは、
- 固定費構造
- 損益分岐点
- 投資回収期間
です。
このフェーズでは、
一度の判断ミスが、
数年の重荷になる
だからこそ、
数字の精度が問われます。
「全部見ればいい」は、実は一番危ない
ここまで読むと、
「じゃあ、全部の数字を見ればいいのでは?」
と思うかもしれません。
でも、それは違います。
見る数字が多すぎると、
- 何が重要か分からない
- 判断が遅れる
- 結局、感覚に戻る
という状態になります。
成長フェーズごとに、
“今の主役の数字”を決める
これが、管理会計の使い方です。
成長フェーズは「社長の仕事」を変える
成長フェーズが変わるということは、
社長の役割が変わる
ということでもあります。
- 立ち上げ期:自分が動く
- 成長初期:仕組みを作る
- 成長期:任せる
- 拡大期:判断する
それに合わせて、
見る数字も変わらなければなりません。
管理会計は「今のフェーズ」を教えてくれる
管理会計の本当の価値は、
会社が今、どの段階にいるかを
数字で教えてくれること
です。
- まだ耐久戦なのか
- 再現フェーズなのか
- 効率改善フェーズなのか
これが分かると、
- 焦らなくなる
- 無理をしなくなる
- 次の一手が見える
ようになります。
成長を壊す社長の共通点
ここまでのまとめとして、
成長を壊してしまう社長には、
ある共通点があります。
それは、
昔うまくいった数字に、
いつまでもしがみつくこと
過去の成功体験は、
次の成長では足かせになります。
成長とは、数字の“卒業”の連続
成長とは、
- 見る数字を増やすこと
ではありません。
見る数字を、
入れ替えていくこと
です。
- この数字はもう卒業
- 次はこの数字
そうやって、
社長の視点は進化していきます。
今日の一言
成長とは、
同じ数字を見続けることをやめる勇気である。
