
――成長は、設計しないと壊れる・第9回――
「売上は伸びている。でも、なぜか不安が消えない」
社長から、こんな言葉を聞くことがあります。
- 売上は過去最高
- 仕事の引き合いも多い
- 表面的には“成長企業”
それなのに、
「このまま突き進んでいいのか、分からない」
「どこかで無理をしている気がする」
これは、決して珍しい話ではありません。
むしろ――
まじめに成長してきた会社ほど、
この不安にぶつかる
と言ってもいいでしょう。
成長=正義、は本当か?
多くの経営者は、無意識にこう思っています。
「成長は止めてはいけない」
「売上は伸ばし続けるものだ」
確かに、成長は大切です。
でも、ここに落とし穴があります。
すべての成長が、
会社を良くするとは限らない
実は、会社を壊す成長も、確実に存在します。
「伸びているのに壊れる会社」の共通点
まず、成長に失敗する会社には
分かりやすい共通点があります。
それは、
“伸びているかどうか”しか見ていない
ということ。
- 売上が増えた
- 取引先が増えた
- 人も増えた
でも、
- 何が伸びているのか
- 何を犠牲にしているのか
を、見ていません。
成長には「2つの種類」がある
ここで、はっきり整理しておきましょう。
成長には、
- 伸ばしていい成長
- 止めるべき成長
この2種類があります。
ポイントは、
スピードや規模ではありません。
判断基準は、ただ一つ。
社長の意思と、
数字が噛み合っているかどうか
です。
伸ばしていい成長①:利益構造が強くなる成長
まず、伸ばしていい成長の代表例。
それは、
売上が増えるほど、
利益の“質”が良くなる成長
具体的には、
- 粗利率が改善している
- 高付加価値の商品・サービスが伸びている
- 社長が動かなくても回る部分が増えている
この成長は、
多少時間がかかっても、
必ず会社を強くします。
ケーススタディ①:売上を“あえて”断った会社
あるコンサル会社。
大型案件の引き合いがありましたが、
利益率が極端に低い。
社長は悩んだ末、断りました。
結果として、
- 社員の負荷は上がらず
- 高単価案件に集中
- 利益率は改善
売上は一時的に伸びませんでしたが、
会社の体力は確実に上がりました。
伸ばしていい成長②:社長の役割が軽くなる成長
もう一つの良い成長は、
社長が現場から離れても回る成長
です。
- 判断が仕組みに置き換わる
- 属人業務が減る
- 社長の時間が空く
この成長は、
短期的には“物足りなく”感じることもあります。
でも、
中長期で見ると、最も価値のある成長です。
止めるべき成長①:忙しさだけが増える成長
次に、止めるべき成長。
代表例は、これです。
売上は増えているのに、
社長も社員も疲弊していく
この状態では、
- 利益率が下がる
- ミスが増える
- 離職リスクが高まる
一見すると順調ですが、
内部では確実に壊れ始めています。
ケーススタディ②:売上1.5倍、でも社長は限界
ある制作系の会社。
売上は1.5倍。
しかし、
- 社長は毎日深夜まで仕事
- 社員も残業続き
- クレーム増加
原因は明確でした。
“断らない成長”を続けたこと
選ばない成長は、
必ず歪みを生みます。
止めるべき成長②:固定費だけが先に膨らむ成長
もう一つ、危険な成長があります。
それは、
将来の売上を信じて、
固定費だけが先に増える成長
- 人を先に増やす
- オフィスを拡張する
- 設備投資を急ぐ
もちろん、必要な投資もあります。
でも、
数字の裏付けがない投資は、
成長ではなく“賭け”
です。
「伸ばす/止める」を決めるのは、感覚ではない
ここで大事なこと。
伸ばしていいか、止めるべきかは、
- 気合
- 根性
- 社長の勘
で決めるものではありません。
決めるために必要なのは、
管理会計という“判断材料”
です。
判断に使うべき3つの視点
成長を判断するとき、
最低限見るべき視点は、次の3つです。
① 利益が残るか
売上が増えても、
利益が残らなければ意味がありません。
② キャッシュが耐えられるか
黒字でも、
資金が回らなければ終わりです。
③ 社長が未来に時間を使えているか
成長しているのに、
社長の視野が狭くなるなら危険信号です。
成長を止めることは、後退ではない
ここで、多くの社長が
一番怖がるポイントに触れます。
「成長を止めたら、
衰退するのでは?」
答えは、はっきりしています。
止めるべき成長を止めることは、
前進です。
むしろ、
- 壊れる前に止める
- 立て直す
- 再設計する
これができる社長こそ、
長く勝ち続けます。
成長設計のゴールとは何か?
このシリーズのテーマ
『成長は、設計しないと壊れる』
そのゴールは、
“大きくすること”ではありません。
ゴールは、
- 社長が納得している
- 数字が裏付けている
- 無理なく続けられる
そんな成長を、
自分で選べる状態になることです。
成長を選ぶのは、社長だけ
最後に、一番大事な話をします。
- 銀行
- 税理士
- 周囲の経営者
彼らはアドバイスはしてくれます。
でも、
どの成長を選ぶかを決めるのは、
社長しかいない
だからこそ、
- 伸ばす成長
- 止める成長
この線引きを、
数字と言葉でできる社長になる必要があります。
シリーズを通して伝えたかったこと
この「成長設計編」で一貫して伝えてきたのは、
- 成長は自然現象ではない
- 気合論でもない
- 売上至上主義でもない
ということです。
成長とは、
意思と数字の組み合わせである
これが、全体を貫くメッセージです。
今日の一言
すべての成長を追うな。
選び抜いた成長だけを、育てよ。
