
――成長は、設計しないと壊れる・第11回――
「計画は守るもの」だと思っている会社ほど、危うい
経営の世界では、よくこんな言葉を聞きます。
- 「計画は一度決めたら、やり切るもの」
- 「途中で変えるのは、ブレている証拠」
- 「数字を下方修正するのは、負けを認めることだ」
一見、もっともらしく聞こえます。
しかし、現場で多くの会社を見ていると、はっきり言えます。
この考え方を強く信じている会社ほど、
静かに、しかし確実に壊れていく
なぜでしょうか。
経営環境は「想定通りに進まない」のが前提
まず大前提として、これを押さえておく必要があります。
事業計画が立てられるほど、
経営環境は安定していない
- 市場の変化
- 人材の離職
- 原価の高騰
- 競合の参入
- 社長自身の体力・判断力の変化
これらは、計画時点では完全に読み切れません。
つまり、
計画通りにいかないのは、
失敗ではなく「通常運転」
なのです。
計画を修正できない会社で起きていること
では、計画を修正できない会社では、何が起きているのでしょうか。
① 現実が、計画に合わせて歪められる
計画を守ることが目的化すると、
- 「一時的な未達だ」
- 「来月で取り返せる」
- 「今は我慢の時期」
という言葉が増えます。
結果、
現実の悪化が正しく認識されなくなる。
これは、かなり危険な状態です。
② 社長の判断が、根性論に寄っていく
計画と現実がズレてくると、
最後に頼るのは何か。
「気合」
「営業をもっと頑張る」
「現場の努力」
もちろん努力は必要です。
しかし、
努力で埋められないズレを、
努力で埋めようとし始めた瞬間、
経営は事故る
これは、ほぼ例外がありません。
③ 現場が「数字」を信じなくなる
計画が現実と合わなくなると、
現場ではこう思われます。
- 「どうせ数字は机上の空論」
- 「実態を分かっていない」
- 「言っても変わらない」
こうなると、
数字は管理の道具ではなく、
ストレスの原因になる
管理会計が機能しなくなる瞬間です。
生き残る会社は「計画を軽く扱っている」
一方で、長く安定している会社には
共通点があります。
それは、
計画を、とても“軽く”扱っている
軽いと言っても、
適当にしているわけではありません。
軽い計画とは?
- いつでも修正できる
- 間違っていても恥ではない
- 現実に合わせて形を変える
つまり、
計画は、絶対視しないが、
常に参照する
この距離感です。
ケーススタディ①:計画を「変えなかった」会社
ある小売業。
- 3年前に立てた成長計画
- 出店ペースも売上目標も固定
- 「計画は守るべきもの」という社長の信念
しかし現実は、
- 人手不足
- 原価上昇
- 既存店の利益率悪化
それでも計画は修正されず、
- 無理な出店
- 現場疲弊
- キャッシュ悪化
結果、
「計画通り進めた結果、資金が尽きた」
これは決して珍しい話ではありません。
ケーススタディ②:計画を「何度も直した」会社
一方、別のサービス業。
- 当初は急成長を狙う計画
- 半年で利益率の悪化に気づく
- 計画を見直し、成長速度を落とす
社長はこう言いました。
「この計画、今の会社には重すぎる」
結果、
- 採用ペースを調整
- 高付加価値案件に集中
- キャッシュが安定
売上の伸びは遅くなりましたが、
会社は確実に強くなった。
「修正できる会社」と「できない会社」の決定的な差
この差は、能力でも経験でもありません。
決定的な違いは、これです。
計画に対する“スタンス”
修正できない会社
- 計画=約束
- 計画=評価
- 計画=正解
修正できる会社
- 計画=仮説
- 計画=実験
- 計画=判断材料
この違いが、
数年後に「生き残り/撤退」という差になります。
計画修正は「逃げ」ではなく「経営判断」
ここで、強調しておきたいことがあります。
計画を修正するのは、逃げではない
むしろ、
- 現実を直視し
- 数字を見て
- 判断を変える
これは、
経営者にしかできない高度な仕事です。
現場に任せていては、
決して起きません。
計画を修正するための3つの条件
では、どうすれば
「修正できる会社」になれるのか。
ポイントは3つです。
① 月次で数字を見ること
年1回では遅すぎます。
② 未達を責めない文化
責めると、数字は隠れます。
③ 計画は“変えていい”と社長が宣言する
これが一番重要です。
社長が変えない限り、
会社は変われません。
成長とは「正しい修正を重ねること」
成長というと、
- 右肩上がり
- 一直線
- 加速
をイメージしがちです。
しかし現実は、
修正 → 微調整 → 踏み直し → 再設計
この繰り返しです。
つまり、
成長とは、
計画を当てることではなく、
修正を間違えないこと
なのです。
このシリーズが伝えたかったこと
『成長は、設計しないと壊れる』
そしてもう一つ、
このシリーズの裏テーマがあります。
設計したら、壊していい
正確に言えば、
現実に合わせて、
設計を壊し続けられる会社だけが、
生き残る
これが、
成長設計の本当のゴールです。
今日の一言
計画を守れた会社ではなく、
計画を直せた会社が、最後まで残る。
