
――戦わない市場を決めるという戦略・第3回――
「競争戦略」と聞いて、何を思い浮かべますか?
「競争戦略」と聞くと、多くの人がこんなイメージを持ちます。
- どうやって勝つか
- どうやって競合より上に行くか
- どうやってシェアを取るか
つまり、
“勝ち筋”を探す話
だと思われがちです。
ですが、ここに
多くの中小企業がハマる落とし穴があります。
競争戦略の本質は「勝ち方」ではない
結論から言います。
競争戦略とは、
「どう勝つか」ではなく
「どう戦うか」を決めること
です。
もっと言えば、
どこで、誰と、どんな条件で戦うか
を決めること。
この視点が抜けたまま、
- 強みを伸ばそう
- 差別化しよう
- 頑張って改善しよう
としても、
戦場選びを間違えたまま戦っている限り、
苦しさは消えません。
なぜ「勝ち方」思考は危険なのか
「勝ち方」から考えると、
人はこうなります。
- 競合を見て焦る
- 価格を下げる
- 機能を足す
- サービスを増やす
つまり、
相手に合わせにいく
のです。
結果として、
- 自分たちの軸が薄まる
- コストが上がる
- 価格競争に巻き込まれる
という、典型的な消耗戦に入ります。
ケーススタディ①:真面目な改善が、会社を苦しめた例
ある中小のサービス会社。
競合が増えたことで、
- 対応スピードを上げ
- サービス内容を増やし
- 値段も合わせた
社長は言います。
「努力はしているんです。でも、どんどん厳しくなる」
これは、
勝ち方を探し続けた結果です。
しかし、本当に考えるべきだったのは、
「そもそも、その市場で戦うべきだったのか?」
という問いでした。
戦略とは「戦場ルールを決めること」
競争戦略とは、
- 相手より強くなること
ではなく、 - 戦うルールを決めること
です。
ルールが違えば、
- 同じ実力でも
- 同じ商品でも
- 結果はまったく変わります
「強者のルール」で戦っていませんか?
多くの小さな会社は、
知らないうちに
大手・先行企業のルール
で戦っています。
たとえば、
- 価格の安さ
- 対応スピード
- 機能の多さ
- 実績の量
これらは、
資本力・人員・知名度がある側が有利なルールです。
この土俵に乗った瞬間、
勝負はほぼ決まっています。
ケーススタディ②:戦い方を変えたら、競争が消えた例
ある専門サービス業。
以前は、
- 幅広い顧客
- 価格も中間
- 競合多数
という状態でした。
そこで社長が決めたのは、
- 顧客を1業界に絞る
- 課題を1つに絞る
- 提供範囲を明確にする
すると、
- 比較されにくくなり
- 値引き交渉が減り
- 問い合わせの質が変わった
戦ったのではなく、
戦いが起きなくなった
のです。
競争戦略とは「戦いを避ける技術」
ここが、このシリーズの重要な思想です。
良い競争戦略とは、
勝つ戦略ではなく
戦わなくて済む戦略
です。
- 競合が少ない
- 比較されにくい
- 価値が伝わりやすい
そんな場所を選ぶことこそ、
競争戦略の本質です。
マーケティングは「戦略の後」に来る
よくある間違いがあります。
- 先に集客を考える
- 先にSNSをやる
- 先に広告を打つ
しかし、
戦い方が決まっていないマーケティングは、
ただの拡声器
です。
間違った戦場で声を大きくしても、
疲弊が早まるだけです。
管理会計も「戦い方」が決まって初めて回り出す
競争戦略が曖昧だと、
- どの数字を見るべきか分からない
- 何が良くて、何が悪いか判断できない
- 改善の方向性が見えない
一方で、
- 戦う市場
- 戦わない市場
- 取るべき顧客
が決まると、
数字が、意思決定の道具になる
のです。
小さな会社ほど「戦い方」がすべて
資源が限られている会社にとって、
- 根性
- 努力
- 気合
は、戦略の代わりにはなりません。
勝てる場所でしか、戦わない
これが、小さな会社の唯一の強さです。
「競争戦略=我慢」ではない
誤解してほしくないのは、
- 絞る
- 避ける
- 戦わない
ことは、
逃げでも、妥協でもない
ということ。
むしろ、
自分たちが一番価値を出せる場所を、
真剣に選ぶ行為
です。
このシリーズの軸に立ち返る
このシリーズが一貫して伝えているのは、
市場は、戦って奪るものではなく
選んで入るもの
という考え方です。
競争戦略とは、
- 勝ち続ける方法
ではなく、 - 消耗しない方法
なのです。
今日の一言
競争戦略とは、
どう勝つかではなく
どんなルールで戦うかを決めること。
良い戦略は、戦う前から勝敗を決めている。
