
――戦わない市場を決めるという戦略・第7回――
「うちは、ちゃんと選ばれているはず」という危うさ
社長と話していると、よく出てくる言葉があります。
「ありがたいことに、
うちはお客さんから選んでもらえています」
この言葉自体は、決して悪くありません。
実際、仕事は回っているし、顧客もいる。
でも、ここで一つだけ問いを投げると、
空気が変わることがあります。
「それは、どの数字で確認していますか?」
選ばれている“実感”と、選ばれている“事実”
多くの社長は、
- 忙しい
- 問い合わせが来る
- 紹介がある
という状態を見て、
「選ばれている」
と感じます。
しかし、これは実感であって、
必ずしも事実とは限りません。
なぜ「選ばれる理由」を数字で見る必要があるのか
理由はシンプルです。
選ばれている理由が分からないと、
再現できないから
- なぜ選ばれたのか
- どこが評価されたのか
- 何が決め手だったのか
これが言語化・数値化されていないと、
- 次の施策が勘になる
- 改善がズレる
- 強化すべき点を間違える
という事態が起きます。
ケーススタディ①:「紹介が多い会社」の落とし穴
あるBtoBサービス会社。
- 売上の7割が紹介
- 営業はほぼ不要
- 社長は「うちは選ばれている」と自負
一見、理想的です。
しかし、数字を見てみると、
- 新規問い合わせ数は減少
- 既存顧客のリピート率も低下
- 客単価がじわじわ下がっている
つまり、
「昔の評価」で食べている状態
でした。
紹介は、「理由」が分からないと危険
紹介が多いこと自体は、素晴らしい。
しかし、
- なぜ紹介されたのか
- 誰が、何を評価してくれたのか
が分からないと、
市場の変化に気づけない
のです。
「選ばれる理由」を構造で考える
ここで、一度整理します。
お客さんがあなたを選ぶ理由は、
大きく分けると次の3層にあります。
- 出会い方(入口)
- 比較の中身(判断)
- 決断の決め手(出口)
この3つを、数字で確認していきます。
① 出会い方を数字で見る
まずは入口。
- 問い合わせ経路
- 紹介率
- リピート率
ここを見ることで、
「どこから来た人が、選んでいるのか」
が見えます。
よくある勘違い
「広告は意味がない」
「紹介が一番いい」
これは半分正解、半分危険。
なぜなら、
- 広告経由は単価が低いが数が多い
- 紹介は単価が高いが数が少ない
など、役割が違うからです。
数字で見るべきなのは、
- 経路別の成約率
- 経路別の客単価
- 経路別の継続率
です。
② 比較の中身を数字で見る
次に、お客さんが何を比べているか。
ここで使える数字は、
- 見積提出数
- 成約率
- 失注理由
です。
失注理由を取っていますか?
多くの会社が、
- 成約数
- 売上
は見ています。
でも、
失注理由
を取っていない。
これは非常にもったいない。
失注理由は、宝の山
例えば、
- 価格
- タイミング
- 他社に決まった
これをさらに分解すると、
- 価格 → 高いのか、価値が伝わっていないのか
- 他社 → どこが違ったのか
「価格が理由」と書かれていても、
本当の理由は、別のところ
にあるケースがほとんどです。
③ 決断の決め手を数字で見る
最後に、決め手。
これは少し見えづらいですが、
非常に重要です。
見るべきポイントは、
- 即決率
- 検討期間
- 条件交渉の有無
です。
即決が多い会社の共通点
即決が多い会社は、
- 比較されていない
- 判断基準が明確
- 提供価値が刺さっている
可能性が高い。
逆に、
- 検討が長い
- 何度も条件が出る
場合は、
「選ばれる理由」が弱い
サインです。
数字は、戦略の健康診断
ここまでの数字は、
- 売上
- 利益
とは違います。
これらは、
戦略の数字
です。
- ちゃんと選ばれているか
- どこで選ばれているか
- なぜ選ばれているか
を確認するためのもの。
管理会計と市場戦略がつながる瞬間
管理会計というと、
- 原価
- 利益
- キャッシュ
を思い浮かべがちです。
しかし、本来の役割は、
戦略が機能しているかを確認すること
です。
「選ばれる理由」が数字で見えると、
- 強化すべき市場
- 捨てるべき市場
- 投資すべき施策
が自然と見えてきます。
数字がないと、改善は“願い”になる
数字がない状態での改善は、
- もっと頑張ろう
- 工夫しよう
- 営業を強化しよう
という、願いになります。
数字があると、
どこを、どれだけ変えるか
が見えます。
選ばれる理由は、作るものではなく、確かめるもの
最後に、大事なことを。
「選ばれる理由」は、
- 無理に作るもの
- 格好良く語るもの
ではありません。
すでに選ばれている理由を、
数字で確認するもの
です。
そこから、
- 言語化し
- 強化し
- 再現する
これが、戦わない市場を育てるプロセスです。
今日の一言
選ばれているかどうかは、
気持ちではなく、数字が教えてくれる。
「選ばれる理由」を確認できた会社だけが、
戦わない市場に居続けられる。
