
――戦わない市場を決めるという戦略・第12回――
戦略の最後に残るのは、「決断」だけ
ここまで11回にわたって、
- 市場をどう見るか
- 競争をどう避けるか
- マーケティングと利益をどうつなぐか
- 管理会計でどう検証するか
をお伝えしてきました。
理屈としては、
もう十分に揃っているはずです。
それでも最後に残るのは、これです。
「本当に、そこを捨てられますか?」
戦わない戦略は、優しいようで一番厳しい
「戦わない市場を選ぶ」
この言葉は、
どこかスマートで、賢く聞こえます。
でも実際は、とても厳しい行為です。
なぜなら、
戦わないと決める=
何かを“やらない”と決めること
だからです。
社長が一番苦手なのは「やらない決断」
多くの社長は、
- 行動する
- 頑張る
- 挑戦する
ことには慣れています。
でも、
- 断る
- 手放す
- 諦める
ことには、慣れていません。
だから市場戦略は、
いつも途中で止まります。
「もったいない」が決断を鈍らせる
戦わない場所を決められない理由の多くは、
とても人間的です。
- せっかく問い合わせが来ている
- 売上がゼロではない
- 昔からの取引先
- 可能性がゼロではない
これらが、頭をよぎります。
「もったいない」
この感情が、
決断を先延ばしにします。
しかし、戦略は「全部取る」話ではない
ここで、戦略の原点に戻りましょう。
戦略とは、
限られた資源を、
どこに集中させるか
の話です。
- 時間
- 人
- お金
- 社長の思考力
これらは、無限ではありません。
戦わない市場を決める=資源配分の再設計
戦わない場所を決めるとは、
- 人を、どこに使うか
- 時間を、何に使うか
- 数字を、どこで追うか
を決め直すことです。
つまり、
経営の重心を、
意図的にずらす行為
です。
ケーススタディ①:決断できなかった社長
ある制作会社の社長。
- 法人
- 個人
- 単発
- 継続
すべてを受けていました。
売上はそこそこ。
でも、いつも疲れていました。
理由は単純。
戦場が多すぎた
決断を避けた結果、起きたこと
- 単価は上がらない
- 教育が進まない
- 仕組み化できない
- 社長が常に現場
「全部やる」は、
実は一番ハードな戦略です。
ケーススタディ②:戦わないと決めた社長
同業で、別の社長。
- 「法人の継続案件だけ」に集中
- 単発・個人は丁寧に断る
最初は怖かったそうです。
「売上が落ちる気がした」
でも、結果は逆でした。
捨てたことで、見えたもの
- 営業トークがシンプルに
- 単価が上がる
- お客さんの質が揃う
- 数字が読みやすくなる
何より、
社長が、楽になった
決断とは「未来を信じる行為」
戦わない場所を決める決断は、
今の売上より、
未来の構造を信じる行為
です。
- 今月の数字は下がるかもしれない
- 一時的に暇になるかもしれない
それでも、
この市場なら、
ちゃんと積み上がる
と信じる。
決断を支えるのが、管理会計
この決断を
「根性」だけでやると、折れます。
そこで必要なのが、管理会計です。
- どこが利益を生んでいるか
- どこが時間を食っているか
- どこが将来につながっているか
これが見えていると、
決断は、怖くなくなる
戦わない決断は、逃げではない
誤解されがちですが、
戦わない=逃げ
ではありません。
むしろ、
勝てない戦場に、
しがみつかない勇気
です。
「選ばない」ことで、選ばれる
不思議なことに、
- 何でもやります
- 誰でも歓迎します
と言っている会社より、
- これはやります
- これはやりません
と言える会社の方が、
選ばれます。
市場は、覚悟に反応する
社長の仕事は「決め続けること」
経営が楽になる瞬間は、
- 売上が増えた時
- 利益が出た時
ではありません。
決めた後、
迷わなくなった時
です。
戦わない市場を決めると、
- 判断が早くなる
- 数字が素直になる
- 戦略がブレなくなる
戦略とは、社長の人生観でもある
最後に、少し大きな話をします。
どこで戦わないかは、
- どんな仕事をしたいか
- どんな毎日を送りたいか
- どんな会社にしたいか
という、
社長自身の価値観と直結しています。
このシリーズの本当のゴール
この12回のシリーズで伝えたかったのは、
- 市場分析
- 競争理論
- マーケティング手法
だけではありません。
「決められる社長になること」
です。
戦わない市場を決めた社長は、強い
なぜなら、
- ブレない
- 迷わない
- 振り回されない
そして、
数字と仲良くなれる
からです。
今日の一言
戦略とは、
何をやるかではなく、
何をやらないかを
決め切る覚悟である。
