
――戦わない市場を決めるという戦略・第10回――
経営が「楽になる」とは、どういう状態か?
まず、誤解を一つ解いておきましょう。
ここで言う「楽になる」とは、
- 何もしなくてよくなる
- 苦労がゼロになる
- 努力が不要になる
という話ではありません。
そうではなく、
同じ努力量なのに、
消耗しなくなる状態
のことです。
以前の経営は「常に緊張状態」だった
市場を選び直す前の多くの社長は、
こんな状態にあります。
- 電話が鳴るたびに身構える
- 見積提出が怖い
- 値下げを言われる前提で話す
常に、防御姿勢。
この状態が続くと、
- 判断が保守的になる
- 余計な仕事を断れない
- 社長の顔が曇る
経営は、じわじわ重くなっていきます。
市場を変えた瞬間、何が起きるのか
市場を選び直した社長が、
まず最初に感じる変化。
それは、
違和感
です。
- 「あれ?説明が早い」
- 「値段の話が出ない」
- 「話が前向き」
劇的ではないけれど、
確実に空気が違う。
ケーススタディ①:見積で緊張しなくなった日
ある制作系の会社。
以前は、
- 相見積もり前提
- 値下げ交渉当たり前
- 決まらない案件多数
市場を絞り、
- 業界特化
- 課題特化
- 成果物の定義を明確化
したところ、社長が言った一言。
「見積を出すとき、
手が震えなくなったんです」
これが、**最初の「楽」**です。
「売らなくていい」感覚が生まれる
市場を選び直すと、
次に起きる変化があります。
売らなくていい
という感覚。
- 無理に説得しない
- 合わない人は断る
- 話が合う人だけ残る
これは強気になったからではなく、
最初から合う人しか来なくなる
からです。
マーケティングが「楽」になる理由
よく、
「マーケティングが苦手で…」
という声を聞きます。
しかし本当の原因は、
誰に向けて話しているかが曖昧
なこと。
市場を選び直すと、
- 話す相手が一人に近づく
- 例え話が刺さる
- 発信が自然になる
マーケティングが、
説明ではなく、会話
になります。
ケーススタディ②:発信が苦痛でなくなった社長
SNS発信が続かなかった社長。
- 何を書いても反応がない
- 正解が分からない
- 義務感だけが残る
市場を定め直し、
- 特定の業種
- 特定の悩み
- 特定のフェーズ
に絞ったところ、
「書く内容で迷わなくなった」
これも、市場が合ったサインです。
数字を見るのが怖くなくなる
市場を間違えていると、
- 売上目標
- 集客数
- 成約率
すべてがプレッシャーになります。
市場を選び直すと、
数字は敵ではなく、道具
になります。
- 改善点が見える
- 打ち手が想像できる
- 一喜一憂しなくなる
「やらないこと」が増えると楽になる
市場を定めるとは、
やらないことを決めること
です。
- 合わない仕事
- 消耗する案件
- 説明が大変な顧客
これを手放すと、
時間と気力が戻る
ケーススタディ③:断れるようになった社長
以前は、
「仕事は断っちゃダメ」
と思っていた社長。
市場を選び直した後、
「断る方が、
会社を守ると分かった」
と言いました。
断れるようになると、
- 社長の疲労が減る
- 社員の不満が減る
- 品質が安定する
不思議と、
売上は下がらなかった。
市場が合うと、社長の判断が速くなる
市場が曖昧だと、
- これはやるべきか
- 断っていいのか
- 値段はどうするか
すべて悩みます。
市場が定まると、
判断基準が一本通る
判断が速くなる=楽になる、です。
「孤独」が薄れる瞬間
経営者の一番のストレスは、
孤独
です。
市場を選び直すと、
- 分かってくれる顧客
- 話が通じる相手
- 応援してくれる人
が増えます。
これが、
精神的な楽さ
につながります。
市場は、社長の心を守る
これはあまり語られませんが、
市場選択は、
メンタルマネジメントでもある
間違った市場は、
- 自信を削り
- 判断を鈍らせ
- 社長を疲弊させる
正しい市場は、
- 自信を育て
- 判断を助け
- 社長を前向きにする
楽になったとき、初めて成長が始まる
皮肉なことに、
経営が楽になった瞬間から、
本当の成長が始まる
余白ができ、
- 考える時間
- 設計する時間
- 人を見る時間
が生まれるからです。
市場を選び直すとは「自分を取り戻すこと」
最後に。
市場を選び直すとは、
- 弱くなることでも
- 逃げることでもなく
自分らしい経営を
取り戻すこと
です。
今日の一言
市場を変えると、
仕事が減るのではない。
無理が減る。
だから、経営は楽になる。
