①社長が一番疲れる仕事は、決断である


――社長の仕事は、決めること・第1回――

「社長って自由でいいですよね?」と言われたとき

「社長って、時間も自由だし、最終決定するだけで楽そうですよね」

もしあなたが経営者なら、一度はこんな言葉をかけられたことがあるかもしれません。
そのたびに、心の中でこう思っていませんか。

いや、決めるのが一番しんどいんだけど…

社員時代は「上が決めてくれたこと」を実行する立場でした。
しかし社長になった瞬間、誰も決めてくれない世界に放り込まれます。

・この価格でいくか、値上げするか
・人を採るか、今は我慢するか
・この案件を受けるか、断るか
・今、攻めるか、守るか

決断しない限り、物事は一歩も進みません。
そして、その決断の責任はすべて自分に返ってきます。

社長が一番疲れる仕事は、間違いなく「決断」です。


決断は「作業」ではなく「消耗」する仕事

多くの人が誤解していますが、決断は単なる判断作業ではありません。
決断とは、精神力を削る行為です。

なぜなら、決断には必ず次の3つがセットでついてくるからです。

  1. 正解が分からない
  2. 失敗したときの責任が重い
  3. 誰かを納得させなければならない

例えば、こんな場面を想像してください。

「売上は伸びているが、利益が出ていない。
人を増やせば回るが、固定費が増える。
さて、どうする?」

数字を見れば見るほど、
・増やしても怖い
・増やさなくても限界
という板挟みにあいます。

どちらを選んでもリスクがある。
リスクの大きさを天秤にかけ続けること自体が、ものすごく疲れるのです。


決めないという選択が、実は一番危険

決断が疲れると、人はどうするか。
答えはシンプルです。

決めない

・もう少し様子を見よう
・今じゃない気がする
・来月考えよう

この「先送り」は、一時的には楽です。
しかし、経営においては最も危険な行為でもあります。

なぜなら、
市場も、社員も、取引先も、待ってくれないからです。

ケース:決断を先送りし続けた社長の話

ある小規模サービス業の社長は、
「人を増やすかどうか」を1年以上悩み続けていました。

結果どうなったか。

・現場は疲弊
・ミスが増加
・既存社員が1人退職
・結局、急いで採用(条件は悪化)

つまり、
決断を避けた結果、最悪の形で決断させられたのです。

経営では、「決めない」ことは現状維持ではありません。
静かに悪化していく選択なのです。


なぜ社長の決断は、こんなにも孤独なのか

社員であれば、決断を上司と共有できます。
チームで責任を分散できます。

しかし社長は違います。

・最終判断者は自分
・失敗しても言い訳できない
・相談しても、最後は自分で決める

特に小規模企業では、

「社長がOKと言ったから」

この一言で全てが動きます。

だからこそ、社長の決断は孤独です。
誰にも代われない仕事だからです。


「良い決断」をしようとするほど、苦しくなる

ここで、多くの真面目な社長がハマる罠があります。

「できるだけ正解を出そう」

この姿勢自体は素晴らしい。
しかし、経営においては危険でもあります。

なぜなら、
経営判断に100点の正解は存在しないからです。

・情報は常に不完全
・未来は誰にも分からない
・環境はすぐ変わる

それでも「正解を出そう」とすると、

・調べ続ける
・考え続ける
・決められなくなる

結果、決断疲れがどんどん溜まっていきます。


上手な社長は「決断の質」ではなく「構造」を整えている

ここで重要な視点があります。

優秀な社長ほど、決断で消耗しない仕組みを持っている
という事実です。

彼らは、

・毎回ゼロから考えない
・感覚ではなく、基準で決める
・数字やルールを使って判断する

つまり、
決断を「属人的な悩み」から「仕組み」に落としているのです。

例えば、

・利益率○%を下回る案件は受けない
・固定費が売上の○%を超えたら見直す
・この数字を超えたら採用検討

こうした「判断基準」があるだけで、
決断のエネルギー消費は一気に下がります。


決断疲れは、能力不足ではない

ここで、はっきり言っておきたいことがあります。

決断に疲れるのは、あなたが弱いからではありません

それは、
・責任を背負っている証拠
・真剣に考えている証拠
・経営者としてまともである証拠

なのです。

問題は、
その重たい決断を、ずっと素手でやっていることです。

これからの「意思決定編」では、

・決断を軽くする考え方
・数字を使った判断の型
・迷いを減らすフレーム
・決めた後にブレない方法

こうしたテーマを、順番に扱っていきます。


今日の一言

社長の仕事は、正解を当てることではない。
決断を続けられる状態をつくることだ。


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