
――社長の仕事は、決めること・第6回――
なぜ社長の判断は数字なしでは不安なのか
社長の仕事は「決めること」です。
しかし、毎日の判断は常に不確実性を伴います。
- 新商品の投入
- 新規事業の採算
- 人材採用や配置
- 設備投資のタイミング
これらの意思決定を感覚だけで行うと、失敗リスクは高くなります。
一方で、直感だけに頼る社長も少なくありません。
その理由は「数字が難しそう」「管理会計って何かよく分からない」と感じているからです。
しかし、社長の意思決定に数字を組み込むことは、決して難しいことではありません。
むしろ、管理会計を使うことで、直感を補強し、迷いを減らすことができます。
管理会計は「未来を見るレンズ」
財務会計は過去の結果をまとめるのに対し、管理会計は未来の意思決定を支えるツールです。
- 過去の損益や資金残高
- 部門別の利益率
- 商品・サービス別の収益性
これらを整理することで、社長は「この判断をすると利益はどうなるか」「どの選択肢が会社にとって有利か」を数字で確認できるようになります。
ケーススタディ:新規事業の投資判断
ある社長は新規事業に投資を検討していました。
- 感覚的には「面白そうだからやりたい」
- しかし、初期投資額は大きく、既存事業への影響も懸念
管理会計を活用し、以下を確認しました。
- 投資額と回収期間
- 既存事業のキャッシュフローへの影響
- 期待利益率
→ 結果、投資判断を数字で可視化でき、リスクとリターンのバランスを社長自身が理解
→ 感覚だけで決めるより、納得感のある意思決定が可能に
意思決定は「数字の仮説」として立てる
管理会計の最大の利点は、意思決定を「仮説」として組み立てられることです。
- 収益はどこから生まれるか
- コストはどこにかかるか
- 目標利益を達成するには何を変えるべきか
これらを数値化することで、社長は意思決定を「感覚+数字の仮説」として検討できます。
具体例:価格改定の判断
ある小売店の社長は、価格改定を検討中。
抽象的な問い:「価格を上げると売上はどうなる?」
管理会計で仮説化:
- 価格を5%上げると、販売数量は10%減少の見込み
- その結果、粗利益は+3%
- 固定費への影響はない
→ 社長は数字に基づき、価格改定を決定
→ 結果、利益改善と顧客反応の予測が両立
部門・商品ごとに収益を分解する
社長が意思決定に数字を使う場合、会社全体の数字だけを見るのは不十分です。
- 部門別
- 商品別
- 顧客別
これらに分解することで、どこにリソースを投下すれば効果的かが明確になります。
ケーススタディ:複数店舗の飲食店
- 全店の売上は前年比+5%で悪くない
- しかし、管理会計で店舗別の利益率を分析すると、1店舗だけ赤字が膨らんでいた
→ 問題のある店舗に経営リソースを集中
→ 赤字店舗を改善または閉鎖
→ 結果、全体利益は前年比+12%に改善
このように、数字を分解して可視化することで、意思決定の精度が上がります。
数字は「判断の後押し」として使う
重要なのは、数字はあくまで社長の判断を補強するツールであることです。
- 感覚で「やりたい」と思った施策を
- 数字で確認し、リスク・リターンを整理
- 結果として、迷いを減らして意思決定する
数字が先導して判断するのではなく、社長の意思決定を支える存在として活用するのがポイントです。
管理会計を日常の習慣にする
管理会計は特別なものではなく、日常の経営判断に組み込むことで力を発揮します。
- 毎月の損益チェック
- 主要指標(売上、粗利、経費)を部門別に可視化
- 投資判断や施策効果のシミュレーション
こうした習慣化により、意思決定のたびに「数字を確認してから決める」というフローが自然と身につきます。
事例:ITサービス企業
- 毎月、プロジェクト別利益率を管理会計で確認
- 高利益プロジェクトにはリソース集中
- 低利益プロジェクトは改善施策を検討
→ 結果、社長は直感だけで判断するストレスから解放され、会社全体の利益率も向上
数字があると、組織の判断も早くなる
社長だけでなく、組織全体の意思決定も加速します。
- 部門長:「数字で比較できるから、提案がブレない」
- 社員:「基準が明確なので、迷わず行動できる」
- 社長:「重要な判断に集中できる」
数字を共通言語にすることで、社内の合意形成もスムーズになります。
今日の一言
意思決定は感覚だけでなく、管理会計で支えることで精度と速度が劇的に上がる。
数字は迷いを減らし、社長の判断を最適化する最強のパートナー。
