
――社長の仕事は、決めること・第7回――
なぜ「やる/やらない」は迷うのか
社長の仕事の本質は「決めること」です。しかし、判断は簡単ではありません。
- 新規事業に投資するか
- 広告費を増やすか
- 人材を採用するか
これらはどれも一長一短があり、直感だけでは判断がブレやすくなります。
実際、感覚で決める社長の多くは「やったけど結果が出なかった」と後悔することがあります。
それは意思決定が数字で裏付けられていないからです。
数字で判断するとはどういうことか
「数字で決める」とは、単に売上や利益を確認するだけではありません。
具体的には以下を意識します。
- 投資額やコストを正確に把握する
- 期待される利益や効果を見積もる
- リスクや不確実性を数値で整理する
これにより、感覚に頼った判断ではなく、根拠ある意思決定が可能になります。
ケーススタディ:新商品投入の判断
ある社長は、新商品の投入を検討していました。
- 感覚:「面白そうだからやりたい」
- 数字で整理:
- 初期費用:500万円
- 期待売上:月間100万円、利益率20%
- 回収期間:約25か月
→ 数字で整理すると、利益回収までの期間が長く、リスクが高いことが一目で分かる
→ 社長は「投入は延期してリスクを減らす」と判断
数字を使うことで、やる/やらないの判断が明確になりました。
期待利益のシミュレーションで迷いを減らす
やる/やらないの判断で重要なのは、未来の利益を「仮説として数値化」することです。
- 新規事業A:売上見込み1,000万円、コスト700万円 → 利益300万円
- 新規事業B:売上見込み500万円、コスト100万円 → 利益400万円
単純な売上だけを見るとAが魅力的に見えますが、利益ベースで見るとBの方が効率的です。
このように、数字で比較することで、迷いや誤解を排除できます。
固定費と変動費を分けて考える
やる/やらないを判断する際、コスト構造を整理することも大切です。
- 固定費:投資しても売上に関わらず発生する費用
- 変動費:売上に応じて増減する費用
例えば、広告費を増やす場合でも、固定費が膨らむ施策は慎重に判断する必要があります。
ケーススタディ:広告投資の意思決定
- 広告費:月50万円(固定費)
- 期待売上:月100万円
- 粗利:60%
→ 広告投資を数字で計算すると、利益増加は20万円
→ しかし固定費が増えることで、売上が少ない月は赤字リスク
→ 社長は広告内容を絞り、変動費として管理する方法に変更
数字を使うと「やる/やらない」だけでなく、「どうやるか」まで精緻に判断できます。
シナリオを作って複数の選択肢を比較
意思決定は、複数の選択肢を数字で比較することで精度が上がります。
- シナリオ1:全力投資
- シナリオ2:部分投資
- シナリオ3:延期
各シナリオごとに、売上、利益、回収期間、キャッシュフローを計算することで、リスクとリターンを見える化できます。
ケーススタディ:設備投資の判断
ある製造業の社長は、新設備の導入を検討。
- シナリオ1:即導入 → 投資額2,000万円、期待利益100万円/月
- シナリオ2:段階導入 → 投資額1,000万円、期待利益50万円/月
- シナリオ3:見送り → 投資ゼロ、利益ゼロ
→ 数字で比較した結果、段階導入が最も安全で効率的
→ 社長は安心して段階導入を決断
数字で判断する習慣を作る
大切なのは、数字で判断することを「一度だけの作業」にしないことです。
- 月次で施策効果を振り返る
- 投資や新規事業のROIを毎回確認
- 重要指標をダッシュボード化して簡単に見られるようにする
こうすることで、日々の意思決定は迷いなく、スピーディに行えるようになります。
数字は直感の補強材である
数字でやる/やらないを判断する目的は、感覚を否定することではありません。
- 感覚:社長の経験や勘
- 数字:その感覚を検証するツール
直感と数字の両方を組み合わせることで、より安全で合理的な意思決定が可能になります。
今日の一言
意思決定は感覚だけでは不安。
やる/やらないは数字で整理し、
仮説とリスクを見える化することで、
迷わず正しい選択ができる。
