⑨判断を先送りするコスト


――社長の仕事は、決めること・第9回――

なぜ社長は判断を先送りしてしまうのか

社長が意思決定を先送りする理由は、意外と身近なものです。

  • 情報が十分に揃っていない
  • リスクが怖い
  • 社員や株主の反応を気にしている

「判断は後でもできる」と考えてしまいがちですが、経営の世界では先送りがそのままコストになります。

ケーススタディ:設備投資の先送り

ある製造業の社長は、工場の老朽化した設備の更新を「もう少し先でもいい」と先送りしました。

  • 結果:設備故障で生産ラインが3日間停止
  • 損失:売上損失+修理費で合計500万円以上
  • 教訓:先送りは判断コストとして数値化できる

このように、判断を先送りすると、目に見える損失が発生することがあります。


判断先送りの3つのコスト

判断を先送りすることによるコストは、大きく分けて3つに整理できます。

1. 機会損失コスト

判断を先送りすると、将来のチャンスを逃します。

  • 新規事業の立ち上げを迷う → 競合に先行される
  • 新商品投入を先延ばし → 市場シェアを失う

2. 金銭的コスト

先送りによって、無駄な出費や損失が増えることがあります。

  • 設備更新の先送り → 故障修理費
  • 倉庫の整理を先延ばし → 在庫劣化による損失

3. 社内士気・時間コスト

判断を先送りすると、社員も方向性が不明確なまま行動し、無駄な時間や努力が発生します。

  • 会議で何度も議論する
  • 不確定な方向で業務を進める → やり直し発生

先送りの心理的メカニズム

社長が判断を先送りする心理には、3つの典型パターンがあります。

① 完璧主義

「情報が揃わないと判断できない」という思い込み。

  • 解決策:8割の情報で意思決定し、後で微調整

② リスク回避

「失敗したらどうしよう」という恐怖心。

  • 解決策:リスクを数値化し、許容範囲を明確にする

③ 外部評価重視

社員や取引先、銀行などの反応を気にして先延ばし。

  • 解決策:判断の軸を「会社の成長」に固定し、外部評価は参考程度に

先送りを数字で可視化する

判断の先送りによるコストは、管理会計を活用することで具体的に見える化できます。

ケーススタディ:広告戦略の先送り

  • 先送り前:広告費0円 → 新規顧客増加なし
  • 仮に判断して投資:広告費50万円、予想売上増80万円
  • 数字で比較 → 先送りコストは機会損失30万円

こうして数字に落とし込むと、「判断しないこと」のリスクが明確になり、意思決定を後押しします。


先送りを防ぐ3つの方法

1. 判断期限を設定する

  • 「○月○日までに決める」と期限を決める
  • 期限があると、心理的に先送りしにくくなる

2. 小さく試してみる

  • 判断を一気に完璧にするのではなく、小規模で試す
  • 例:広告費10万円からテスト運用 → 効果確認後、本格投入

3. 数字とシナリオで検証する

  • 決断の結果を事前にシミュレーション
  • 成功・失敗の影響を見える化 → 不安を軽減

先送りが慢性化する会社の特徴

  • 社長が意思決定を避ける
  • 社員も方向性が曖昧で判断を避ける
  • 会議が議論だけで終わる

この状態が続くと、会社全体が停滞し、成長機会を失うスパイラルに陥ります。

ケーススタディ:ベンチャー企業の失速

ベンチャーA社は、新サービスの展開を判断せず先送りし続けました。

  • 初期のリードを獲得できず
  • 競合他社が市場を独占
  • 結果:後から参入しても顧客獲得に苦戦

ここでも「判断を先送りするコスト」が数字で現れています。


先送りを防ぐ社長の習慣

  1. 毎週の意思決定リストを作る
    • 「今週決めること」「来週までに情報収集すること」を明確化
  2. 短期・長期判断を区別する
    • 短期判断はスピード重視
    • 長期判断はシナリオ分析を活用
  3. 数字で裏付ける
    • 機会損失、コスト、ROIを見える化

この3つを習慣化することで、判断先送りのリスクを大幅に減らせます。


今日の一言

「決めないこと」もコストになる。
社長は判断を先送りせず、

数字と期限で意思決定を加速することが、
会社の成長を守る最強の武器である。


PAGE TOP