
――なぜあなたの会社は、数字が揃わないのか・第3回――
「数字は多いほどいい」は間違い
多くの中小企業でよくある光景です。
- 「とりあえず売上の詳細も、原価も、顧客情報も、行動履歴も全部取っておこう」
- 「将来の分析に備えて、できるだけ多くデータを残そう」
一見、合理的に見えます。しかし、データは集めすぎると逆に使えなくなるのです。
理由はシンプルです。データが多すぎると、整理・分析・意思決定の負荷が増え、結局「何を見ればいいのか分からない状態」になってしまうからです。
データの海に溺れる社長たち
ケーススタディ:地方の小売店
ある地方の小売店では、POSシステム、手書き日報、Excel、顧客管理アプリを駆使して、ありとあらゆるデータを収集していました。
- 毎日の売上データ:店舗ごと、商品ごと、時間帯ごと
- 顧客情報:住所、年齢、購入履歴、来店頻度
- 在庫情報:棚ごとの数量、仕入れ日、消費期限
毎月、社長はこれらのデータをExcelにまとめようと試みましたが、膨大すぎて整理できない状態に陥りました。
結果、社長は結局「月末の数字はざっくり把握できればいいや」と妥協することに。データを集めた意味がほとんど失われてしまったのです。
データ過多の弊害とは?
データを集めすぎることには、次のような弊害があります。
- 意思決定が遅くなる
- どのデータを見ればよいか判断する時間が増える
- 分析作業が複雑化する
- データ量が多いほど集計や確認に時間がかかる
- 間違いが増える
- 複雑なデータを扱うほど、入力ミスや統合ミスが発生しやすい
- 社長や社員が疲弊する
- 「分析疲れ」で結局数字に向き合わなくなる
ケーススタディ:サービス業のレポート過多
ある小規模サービス業では、顧客ごとの売上、担当スタッフごとの作業時間、対応件数、顧客満足度…と、毎週30項目以上のデータをExcelで集計していました。
社員も社長も「どれを見ればいいのか分からない」と感じ、最終的には数字を見る習慣が消滅。
まさに「データは多すぎると、使えなくなる」という典型例です。
必要なのは「最小限の意思決定データ」
では、どのようにすればデータ過多を防げるのでしょうか?
ポイントは次の通りです。
- 意思決定に直結する数字だけを集める
- 社長や管理者が毎日/毎週確認する項目に絞る
- それ以外のデータは、必要な時だけ参照する
ケーススタディ:小規模飲食店の改善例
以前は、売上、原価、在庫、顧客情報などを細かく記録していた小さな飲食店。
改善後は次の3つに絞りました。
- 売上合計と商品別売上
- 材料コストと仕入れ量
- スタッフシフトと労働時間
- データ入力時間:1日1時間 → 15分
- 社長の判断スピード:月次 → 即日
- 売上・利益の改善施策:即実行可能
必要なデータだけに絞ることで、データが「意思決定の道具」として生き返りました。
「データの粒度」を調整する
データを集めるときは「粒度」を意識すると効果的です。
- 細かすぎるデータ:全体像が見えにくくなる
- 粗すぎるデータ:改善点が分からない
ケーススタディ:中小製造業
ある製造業では、製造ラインごとの毎時間の稼働データを集めていました。分析すると膨大なデータで、結局判断が遅れるだけ。
改善策:
- 「1日単位での稼働率」にまとめる
- 週次でライン別平均をチェック
- 必要なときだけ時間単位の詳細を見る
結果、分析時間が半分以下になり、判断も早くなったのです。
データは「使う目的」から逆算する
データを集めるときに重要なのは、目的から逆算することです。
- 「何を知りたいのか?」
- 「その情報を見て何を決めるのか?」
これを明確にすると、必要なデータだけに絞れます。
ケーススタディ:地方の小売店
目的:週末の人気商品の在庫を確実に確保する
→ 必要なデータ:商品別の過去4週間の週末売上平均、在庫数
→ 不要なデータ:平日の来店者数、顧客属性の詳細、時間帯別売上
データを目的に合わせて絞ることで、社長も現場も判断が速くなりました。
今日からできるデータ整理アクション
- 毎日/毎週確認する数字を3〜5個に絞る
- 粒度を調整して、必要以上に詳細にしない
- 目的に応じて必要なデータだけ集める
この3つを意識するだけで、データは「意思決定の武器」になります。
今日の一言
データは集めすぎると逆効果。
必要なのは、意思決定に直結する最小限の数字と、それを即座に判断に使える仕組みだけ。
