
― 財務三表を一気に俯瞰する ―
数字を見ると、なぜ社長は身構えてしまうのか
決算書や試算表を開いた瞬間、
少し肩に力が入る。
できれば後回しにしたくなる。
これは、あなただけではありません。
むしろ、多くのスモールビジネス経営者が同じ感覚を持っています。
- 間違いを指摘されそう
- 責められる気がする
- 自分の経営が丸裸にされる感じがする
でも、まず最初にお伝えしたいことがあります。
数字は、あなたを評価するためのものではありません
数字は、
あなたがこれまでどう動き、何を選び、何を積み上げてきたかの「足跡」
にすぎません。
これから8回にわたり、財務諸表に味方に付いてレクチャーします。
この第1回は、
会計の知識を増やす回ではありません。
数字との向き合い方を、根本から変える回です。
なぜ社長は、数字に苦手意識を持ってしまうのか
社長が数字を苦手に感じる理由は、だいたい次の3つに集約されます。
① 会計は「経理の仕事」だと思っている
多くの社長は、こう思っています。
「数字は、経理や税理士がちゃんとやってくれていればいい」
その結果、
数字は「自分の仕事ではないもの」になり、
いざ見ろと言われると距離を感じてしまいます。
② 数字は「正解・不正解」がある世界だと思っている
会計=テスト
数字=点数
そんなイメージを持っていると、
どうしても怖くなります。
③ 数字を見る=過去を責められる、と思っている
「なんでこのとき、こうしなかったんですか?」
「この判断、間違ってましたよね?」
そんな問いを突きつけられる気がして、
無意識に数字から目をそらしてしまう。
でも、これらはすべて誤解です。
会計は「作業」ではない。経営の結果報告書である
会計というと、
- 仕訳
- 勘定科目
- ルール
- 法律
こうした「作業」のイメージが先に来ます。
でも本質は違います。
会計とは、1年間の経営活動を、後から振り返るための報告書
あなたが、
- 誰に売ったのか
- 何にお金を使ったのか
- どんな判断をしたのか
それらすべての結果が、
数字という形で整理されているだけです。
うまくいった判断も、
苦しかった判断も、
全部含めて「記録」。
責めるためではなく、
理解するためにあります。
財務三表は「3種類の別資料」ではない
ここで、多くの社長がつまずくポイントがあります。
それが、
財務三表(P/L・B/S・CF)を別々のものだと思っていることです。
- P/L(損益計算書)はなんとなく分かる
- B/S(貸借対照表)はよく分からない
- CF(キャッシュフロー計算書)は見たことがない
でも、実はこの3つは、
同じ経営活動を、違う角度から見ているだけです。
カメラで言えば、
正面・横・上から撮っているようなもの。
P/L=成果表|どれだけ価値を生んだか
まずはP/L。
P/Lは、
その期間で、どれだけ成果を出したか
を見る表です。
- 売上:どれだけ価値を提供したか
- 粗利:どれだけ付加価値を生んだか
- 利益:どれだけ経営判断が噛み合ったか
P/Lは、
**経営の「成績表」**とも言えます。
ただし、ここで大事なのは、
成績=現金ではない、という点です。
B/S=状態表|今、どんな体力か
次にB/S。
B/Sは、
今この瞬間の会社の状態を切り取った写真です。
- 資産:稼ぐための道具
- 負債:他人の力
- 純資産:自分の覚悟の蓄積
B/Sを見ると分かるのは、
「この会社は、どんな装備で戦っているのか」
派手ではありませんが、
長く続く会社かどうかは、
B/Sにすべて出ます。
CF=血流|お金はちゃんと回っているか
最後が、キャッシュフロー。
これは一番イメージしやすいかもしれません。
- お金が入ってきた
- お金が出ていった
その動きを追う表です。
P/Lが良くても、
CFが詰まれば会社は止まります。
だからCFは、
経営の血流・呼吸
と捉えると、非常に分かりやすくなります。
1年間の経営活動は、こうして3表に分解される
ここで、簡単なケースを見てみましょう。
ケース:小さな制作会社の1年
- 売上:1,200万円
- 利益:120万円
- 設備投資:300万円
- 借入返済:100万円
この1年を、
財務三表はこう分けて記録します。
- P/L
→ いくら売って、いくら儲けたか - CF
→ 投資で300万円出ていき
返済で100万円出ていった - B/S
→ 設備が増え
借入が減り
純資産が積み上がった
同じ1年を、
3つの視点で整理しているだけだと分かります。
「数字を読む=過去を責める」ではない
多くの社長が、
数字を見るときに無意識にやってしまうことがあります。
それは、
「もし、あのとき別の判断をしていたら…」
という後悔の思考です。
でも、管理会計の世界では、
過去を責めることに意味はありません。
数字は、反省ではなく“理解”のためにある
なぜそうなったのか。
どんな前提で判断したのか。
次はどうするか。
それを考えるための材料が、数字です。
ゴール|「全部つながっている」と分かるだけで、怖さは消える
この第1回のゴールは、
知識を覚えることではありません。
- 財務三表は別物ではない
- 数字は経営活動の結果
- 数字はあなたの敵ではない
この3つが腹に落ちれば、
数字への心理的ハードルは一気に下がります。
今日の「虎の巻」→ 会計は、社長の努力を記録したもの
会計とは、経営の良し悪しを裁くものではない
社長がどんな判断を積み重ねてきたかを記録した「足跡」である
