④社長の仕事は何を決めることなのか


― 意思決定と数字の関係 ―

忙しい社長ほど、「決めていない」

「毎日忙しくて、とにかく時間がないんです」

これは、ほぼすべての社長から聞く言葉です。
現場、営業、採用、トラブル対応。
気づけば一日が終わり、「今日もよく働いた」と感じる。

ところが、少し踏み込んで話を聞くと、
こんな違和感にぶつかります。

  • 重要なことほど、先送りになっている
  • 方向性は「なんとなく」のまま
  • 決めたつもりだが、行動が揃っていない

実は、忙しい社長ほど、決めていないことが多いのです。

ここで言う「決めていない」とは、
サボっている、という意味ではありません。

むしろ逆です。
一生懸命「考えて」はいる。

しかし、考えていることと、
決めていることは、まったく別物です。

「考えている」と「決めている」の決定的な違い

「この先、どうしたらいいと思います?」

こう聞くと、多くの社長は語り始めます。

  • 市場は厳しい
  • 人手不足が深刻
  • でもチャンスもある

話はとても筋が通っています。
でも最後にこう続くことが多い。

「だから、もう少し様子を見ようと思っていて……」

これは、「考えている」状態です。
一方で、「決めている」状態とはこうです。

「今年は○○に集中する
それ以外は、やらない」

決めるとは、
可能性を捨てることでもあります。

だから怖い。
だから、多くの社長は無意識に避けます。

この記事では、
社長の仕事を「決める」という視点から整理し、
そこに数字がどう関わるのかを解き明かしていきます。

社長が本来決めるべき3つのこと

社長の仕事は、突き詰めると
3つの「決定」に集約されます。

① 方向性|どこへ向かう会社なのか

まず一つ目は、方向性です。

  • この会社は、どこへ向かうのか
  • 何を強みにしていくのか
  • 何をしない会社なのか

方向性が決まっていないと、
現場はバラバラに動きます。

ある会社の例です。

  • 営業は「とにかく売上を伸ばしたい」
  • 現場は「これ以上忙しくなるのは無理」
  • 社長は「利益を残したい」

誰も間違っていません。
でも、方向が揃っていない。

これは、社長が方向性を決め切っていない
ただそれだけの話です。

② 配分|限られた資源をどこに使うか

二つ目は、配分です。

会社の資源は限られています。

  • お金
  • 時間
  • 社長自身のエネルギー

全部に全力投球はできません。

  • どの事業に投資するか
  • どの業務に人を割くか
  • 何に時間を使い、何を切るか

これは、現場では決められません。
社長だけが決められる仕事です。

③ 優先順位|今、何を先にやるのか

三つ目は、優先順位です。

「全部大事」は、
「何も決めていない」と同じです。

  • 今月やること
  • 今年やること
  • 今はやらないこと

優先順位が決まると、
現場は迷わなくなります。

逆に、社長が決めていないと、
現場が勝手に決め始めます。

それが、後で問題になるのです。

数字があると、決断が早くなる理由

「決めるのが苦手なんです」

そう言う社長ほど、
数字を持っていないケースが多いです。

感情との距離が取れる

人は、感情で迷います。

  • この事業、思い入れがある
  • この社員を切りたくない
  • 昔うまくいった経験が忘れられない

ここに数字が入ると、
一歩、距離が取れます。

例えば、

  • この事業は、売上の◯%
  • 利益への貢献は、実は小さい
  • 人も時間も多く使っている

数字は、
「冷たい判断」をするためではなく、
冷静に判断するための補助線です。

責任の所在が明確になる

数字がない判断は、
あとから必ずこうなります。

「あのとき、何となくで決めたよね」

数字がある判断は、こうなります。

「この前提で、この数字だったから決めた」

結果がどうであれ、
意思決定の責任を引き受けやすくなる

これが、社長にとって非常に重要です。

決められない会社の共通点

当事務所の支援先には、
決められない会社の典型パターンがあります。

情報が多すぎる

  • 会議資料が分厚い
  • 数字はたくさんある
  • グラフも表も揃っている

でも、最後にこうなります。

「で、どうします?」

情報が多すぎると、
判断は遅くなります。

決断に必要なのは、情報量ではなく、焦点です。

判断基準がない

もう一つの共通点は、
判断基準が言語化されていないこと。

  • 何を優先する会社なのか
  • 利益なのか、成長なのか
  • 短期なのか、長期なのか

基準がないと、
毎回ゼロから悩むことになります。

数字は、この判断基準を
ブレない形で支える道具です。

数字は「決断の免罪符」ではない

ここで、非常に大事な話をします。

数字は、
決断から逃げるための道具ではありません。

数字に逃げる経営の危険性

よくあるのが、こんな状態です。

  • 「もう少し数字を見てから決めよう」
  • 「来月の結果を待とう」
  • 「データが揃ってからにしよう」

一見、慎重に見えます。
でも実際は、決断の先送りです。

数字が揃う日は、
ほとんどの場合、永遠に来ません。

最後に決めるのは、社長

数字は、
決断を「正当化」してくれません。

数字が示すのは、
選択肢の輪郭だけです。

最後に、

  • どれを選ぶか
  • どれを捨てるか

を決めるのは、
いつも社長自身です。

これが、社長業の重さであり、
同時に、面白さでもあります。

社長業とは「決め続ける仕事」

ここまでの話を、
シンプルにまとめます。

  • 社長の仕事は、決めること
  • 決めるとは、方向・配分・優先順位を定めること
  • 数字は、その決断を助ける道具

考えるだけでは、会社は動きません。
決めて、初めて動き出します。

社長業とは、「決め続ける仕事」である

これを自覚した瞬間から、
数字の見え方も、
管理会計の意味も、変わっていきます。

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立体的につながっていきます。

今日の一言

社長がやるべき仕事は、正しい判断をすることではない。
決断から逃げず、決め続けることである。


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