
― 意思決定と数字の関係 ―
忙しい社長ほど、「決めていない」
「毎日忙しくて、とにかく時間がないんです」
これは、ほぼすべての社長から聞く言葉です。
現場、営業、採用、トラブル対応。
気づけば一日が終わり、「今日もよく働いた」と感じる。
ところが、少し踏み込んで話を聞くと、
こんな違和感にぶつかります。
- 重要なことほど、先送りになっている
- 方向性は「なんとなく」のまま
- 決めたつもりだが、行動が揃っていない
実は、忙しい社長ほど、決めていないことが多いのです。
ここで言う「決めていない」とは、
サボっている、という意味ではありません。
むしろ逆です。
一生懸命「考えて」はいる。
しかし、考えていることと、
決めていることは、まったく別物です。
「考えている」と「決めている」の決定的な違い
「この先、どうしたらいいと思います?」
こう聞くと、多くの社長は語り始めます。
- 市場は厳しい
- 人手不足が深刻
- でもチャンスもある
話はとても筋が通っています。
でも最後にこう続くことが多い。
「だから、もう少し様子を見ようと思っていて……」
これは、「考えている」状態です。
一方で、「決めている」状態とはこうです。
「今年は○○に集中する
それ以外は、やらない」
決めるとは、
可能性を捨てることでもあります。
だから怖い。
だから、多くの社長は無意識に避けます。
この記事では、
社長の仕事を「決める」という視点から整理し、
そこに数字がどう関わるのかを解き明かしていきます。
社長が本来決めるべき3つのこと
社長の仕事は、突き詰めると
3つの「決定」に集約されます。
① 方向性|どこへ向かう会社なのか
まず一つ目は、方向性です。
- この会社は、どこへ向かうのか
- 何を強みにしていくのか
- 何をしない会社なのか
方向性が決まっていないと、
現場はバラバラに動きます。
ある会社の例です。
- 営業は「とにかく売上を伸ばしたい」
- 現場は「これ以上忙しくなるのは無理」
- 社長は「利益を残したい」
誰も間違っていません。
でも、方向が揃っていない。
これは、社長が方向性を決め切っていない
ただそれだけの話です。
② 配分|限られた資源をどこに使うか
二つ目は、配分です。
会社の資源は限られています。
- お金
- 人
- 時間
- 社長自身のエネルギー
全部に全力投球はできません。
- どの事業に投資するか
- どの業務に人を割くか
- 何に時間を使い、何を切るか
これは、現場では決められません。
社長だけが決められる仕事です。
③ 優先順位|今、何を先にやるのか
三つ目は、優先順位です。
「全部大事」は、
「何も決めていない」と同じです。
- 今月やること
- 今年やること
- 今はやらないこと
優先順位が決まると、
現場は迷わなくなります。
逆に、社長が決めていないと、
現場が勝手に決め始めます。
それが、後で問題になるのです。
数字があると、決断が早くなる理由
「決めるのが苦手なんです」
そう言う社長ほど、
数字を持っていないケースが多いです。
感情との距離が取れる
人は、感情で迷います。
- この事業、思い入れがある
- この社員を切りたくない
- 昔うまくいった経験が忘れられない
ここに数字が入ると、
一歩、距離が取れます。
例えば、
- この事業は、売上の◯%
- 利益への貢献は、実は小さい
- 人も時間も多く使っている
数字は、
「冷たい判断」をするためではなく、
冷静に判断するための補助線です。
責任の所在が明確になる
数字がない判断は、
あとから必ずこうなります。
「あのとき、何となくで決めたよね」
数字がある判断は、こうなります。
「この前提で、この数字だったから決めた」
結果がどうであれ、
意思決定の責任を引き受けやすくなる。
これが、社長にとって非常に重要です。
決められない会社の共通点
当事務所の支援先には、
決められない会社の典型パターンがあります。
情報が多すぎる
- 会議資料が分厚い
- 数字はたくさんある
- グラフも表も揃っている
でも、最後にこうなります。
「で、どうします?」
情報が多すぎると、
判断は遅くなります。
決断に必要なのは、情報量ではなく、焦点です。
判断基準がない
もう一つの共通点は、
判断基準が言語化されていないこと。
- 何を優先する会社なのか
- 利益なのか、成長なのか
- 短期なのか、長期なのか
基準がないと、
毎回ゼロから悩むことになります。
数字は、この判断基準を
ブレない形で支える道具です。
数字は「決断の免罪符」ではない
ここで、非常に大事な話をします。
数字は、
決断から逃げるための道具ではありません。
数字に逃げる経営の危険性
よくあるのが、こんな状態です。
- 「もう少し数字を見てから決めよう」
- 「来月の結果を待とう」
- 「データが揃ってからにしよう」
一見、慎重に見えます。
でも実際は、決断の先送りです。
数字が揃う日は、
ほとんどの場合、永遠に来ません。
最後に決めるのは、社長
数字は、
決断を「正当化」してくれません。
数字が示すのは、
選択肢の輪郭だけです。
最後に、
- どれを選ぶか
- どれを捨てるか
を決めるのは、
いつも社長自身です。
これが、社長業の重さであり、
同時に、面白さでもあります。
社長業とは「決め続ける仕事」
ここまでの話を、
シンプルにまとめます。
- 社長の仕事は、決めること
- 決めるとは、方向・配分・優先順位を定めること
- 数字は、その決断を助ける道具
考えるだけでは、会社は動きません。
決めて、初めて動き出します。
社長業とは、「決め続ける仕事」である
これを自覚した瞬間から、
数字の見え方も、
管理会計の意味も、変わっていきます。
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今日の一言
社長がやるべき仕事は、正しい判断をすることではない。
決断から逃げず、決め続けることである。
