
―黒字なのに苦しい会社で、何が起きているのか?―
「利益は出ているはずなんですが…」という相談から始まる話
「決算書を見ると黒字なんです」
「売上も去年より増えているんです」
「それなのに、なぜかお金の不安が消えないんですよね…」
これは、私が小規模事業の社長と話す中で、本当によく聞く言葉です。
そしてこの一言が出てくる会社には、ほぼ例外なく共通点があります。
それは、
“利益”という言葉を、社長自身がちゃんと理解したつもりになっている
という点です。
いきなり厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、安心してください。
これは能力の問題ではありません。
むしろ、多くの社長が**「そう思い込まされてきた」**結果です。
今回は、そんな社長が特に勘違いしやすい
「利益の3つの正体」を解剖していきます。
勘違い①|「黒字=安心」という思い込み
まず一番多いのが、この勘違いです。
「決算が黒字だから、うちは大丈夫」
一見、正しそうに聞こえます。
でも、ここに大きな落とし穴があります。
黒字なのに、なぜか不安が消えない理由
例えば、こんなケースです。
- 決算書上は、毎年100万円ほどの黒字
- でも、通帳残高は常にギリギリ
- 大きな支払いがあるたびに、胃がキリキリする
この状態、心当たりはありませんか?
実はこれ、「黒字=お金が増えている」ではないから起きています。
会計上の利益(いわゆる黒字)は、
「ルールに従って計算された結果」であって、
「今、自由に使えるお金」とは限りません。
ケーススタディ|建設業A社の話
建設業のA社は、3期連続黒字。
税理士からも「順調ですね」と言われていました。
しかし社長は、常に資金繰りの不安を抱えていました。
理由はシンプルです。
- 売上は立っている
- でも、入金は数か月先
- その間に、材料費や外注費の支払いが先に来る
つまり、
利益は出ているが、現金がない状態です。
黒字という言葉が、社長にとって
「安心のサイン」になってしまった瞬間、
このズレは見えなくなります。
勘違い②|「利益=売上−経費」だと思っている
次に多いのが、この理解です。
「利益って、売上から経費を引いた残りですよね?」
間違ってはいません。
でも、この理解で止まっていることが問題なのです。
なぜ、この理解だけだと危険なのか
「売上を増やす」
「経費を削る」
この2つしか手が浮かばなくなるからです。
すると、経営はどうなるか。
- 売上を増やそうとして、無理な仕事を取る
- 忙しくなるが、なぜか儲からない
- 最後は「経費削減だ!」と現場が疲弊する
これは、利益を“結果”としてしか見ていない状態です。
利益は「結果」ではなく「構造の帰結」
本来、利益はこう捉えるべきです。
利益とは、
「どんな売り方をし、
どんな仕事を選び、
どんなコスト構造を持っているか」
その構造の結果として、あとから現れるもの
つまり、
利益そのものを追いかけても、利益は増えません。
追いかけるべきは、
利益が生まれる“仕組み”のほうです。
勘違い③|「頑張れば、そのうち利益は残る」という幻想
最後は、精神論に近い勘違いです。
「今は我慢の時期」
「もう少し売上が伸びれば…」
「軌道に乗れば、自然と利益は残るはず」
これ、真面目で責任感の強い社長ほど陥りがちです。
頑張っている会社ほど、実は危ない
怖い話をします。
頑張っている会社ほど、
利益構造が壊れていることに気づきにくい。
なぜなら、
- 忙しい
- 現場対応に追われる
- 数字を見る時間がない
結果として、
「今は踏ん張りどころ」という言葉で、
構造の問題を努力で覆い隠してしまうのです。
ケーススタディ|サービス業B社の話
B社は、社長ひとり+スタッフ数名の会社。
売上は年々増加。仕事の依頼も多い。
しかし、
- 社長は休めない
- 利益は思ったほど残らない
- 値上げは怖くてできない
詳しく見ると、
- 単価が低い仕事ほど忙しい
- 手間のかかる仕事ほど利益が薄い
つまり、
頑張るほど利益が削られる構造でした。
これは「努力不足」ではありません。
設計ミスです。
じゃあ、社長は「利益」をどう捉え直せばいいのか?
ここまでの話をまとめると、
社長が陥りやすい勘違いは、次の3つです。
- 黒字なら安心だと思っている
- 利益を単なる計算結果だと思っている
- 頑張れば何とかなると信じている
これらに共通するのは、
利益を“コントロールできないもの”として扱っている点です。
しかし、本来の利益は違います。
利益とは、
社長が「決めたこと」の積み重ねの結果。
- どんな仕事を取るか
- どんな売り方をするか
- どこに力を入れ、どこを捨てるか
これらの判断が、
あとから数字として表れているだけなのです。
利益を「運」や「結果」から解放する
利益構造設計プログラムの最初の一歩は、
難しい計算でも、細かい分析でもありません。
まずは、これを腑に落とすことです。
- 利益は偶然ではない
- 利益は気合でもない
- 利益は、設計できる
この前提に立てた瞬間、
社長の見える景色は大きく変わります。
次回は、
「なぜ“頑張って売っているのに”利益が残らないのか」
を、さらに構造的に掘り下げていきます。
今日の一言
利益は“結果”ではない。
社長が下した判断の、通信簿である。
ここを取り違えないこと。
それが、すべての出発点です。
