
「まずは経費を削らないとですよね」
社長の方と利益の話をすると、かなり高い確率で出てくる言葉があります。
最近利益が出なくて…やっぱり経費を見直さないとですね
この発言自体が、間違っているわけではありません。
無駄な経費があるなら、見直すことは大切です。
ただ、ここで一つ問いを投げかけたいのです。
なぜ社長は、利益の話になると
真っ先に“経費”を見にいってしまうのでしょうか。
今回はこの「ごく自然に起きている思考のクセ」を、
やさしく解きほぐしていきます。
利益が出ない=経費が多い、は本当か?
多くの社長の頭の中では、
利益の式がこんな形になっています。
売上 − 経費 = 利益
この式自体は、もちろん間違いではありません。
でも、この式のどこに目が行きやすいかが問題です。
売上はすぐに増えない。
でも、経費は削ればすぐに効果が出そう。
そう考えて、
- 広告費を止める
- 人を採らない
- 外注を減らす
という判断が続いていきます。
その結果どうなるか。
頑張っているのに、なんだか会社がしんどくなっていく
こう感じた経験はないでしょうか。
社長が経費を見てしまう“3つの理由”
なぜ、ここまで経費に意識が向いてしまうのか。
理由は、大きく3つあります。
理由①|数字として「見えやすい」から
経費は、帳簿や試算表を見ればすぐに分かります。
- 家賃
- 人件費
- 広告費
一方で、
- 粗利がどこで生まれているのか
- どの商品・サービスが会社を支えているのか
これは、意識して見に行かないと見えません。
人は、
見えやすいものに引っ張られる生き物です。
理由②|「管理している感」が得られるから
経費を削ると、
- 判断した
- コントロールした
という感覚が得られます。
社長として「仕事をした気」になる。
これは、心理的にはとても自然なことです。
ただしその管理が、
- 会社を強くしているのか
- ただ縮めているだけなのか
は、別の話です。
理由③|粗利は“設計対象”だと思われていないから
実はこれが、一番大きな理由です。
多くの社長は、
粗利を「結果」だと思っています。
- 売れた結果、粗利が残る
- たまたま良い商品が当たった
こう考えている限り、
粗利をコントロールしようとは思いません。
結果として、
「触れる気がしない粗利」より
「触れそうな経費」に目が行くのです。
経費を削り続けた会社の末路(よくある話)
ここで、よくあるケースを紹介します。
ケース|サービス業E社
売上は横ばい。
利益が出ないため、社長は次々に経費削減を実施しました。
- 広告を止める
- 人を増やさない
- 外注を内製化
短期的には、利益が少し改善しました。
しかし半年後、
- 新規客が減る
- 社員が疲弊する
- サービス品質が下がる
結果、売上が落ち、
以前より苦しい状態になってしまいました。
この会社に足りなかった視点は何か。
それは、
どこで粗利を生み、どこで消耗しているのか
を見ることでした。
粗利は「会社の体力」を表す数字
ここで、一度立ち止まって考えてみましょう。
粗利とは何でしょうか。
売上 − 原価 = 粗利
この粗利から、
- 人件費
- 家賃
- 広告費
などを支払い、
最後に利益が残ります。
つまり粗利とは、
会社が自由に使える“体力”そのものです。
体力がないのに、
節約だけで乗り切ろうとする。
それが、経費ばかり見てしまう経営の正体です。
「経費を見る前に、粗利を見る」だけで判断が変わる
ここで、視点を一つ変えてみます。
これまで:
「利益が出ない → 経費を削ろう」
これから:
「利益が出ない → 粗利は足りているか?」
この問いに変えるだけで、
見える景色が一変します。
- 売上はあるのに、粗利が薄い
- 忙しいのに、粗利が残らない
こうした違和感が、
初めて言語化されるようになります。
ケーススタディ|粗利を見た瞬間に打ち手が変わった会社
背景
小売業F社。
社長は「人件費が高い」と悩んでいました。
粗利を見てみると
- 商品A:売上は大きいが、粗利率が低い
- 商品B:売上は小さいが、粗利率が高い
忙しさの正体は、
粗利の薄い商品Aでした。
導き出された判断
- 人を減らす
ではなく、 - 商品構成を見直す
- 粗利の高い商品Bを前に出す
結果、
売上は少し下がったものの、
会社は驚くほど楽になりました。
社長の仕事は「削る」ことではない
誤解しないでいただきたいのですが、
経費削減が悪いわけではありません。
ただし、順番があります。
- どこで粗利を作るかを見る
- その粗利で、何を支えているかを見る
- それでも足りない時に、経費を見直す
この順番を飛ばすと、
会社は少しずつ痩せていきます。
社長の仕事は、
会社を小さく守ることではなく、
利益が残る構造を作ることです。
粗利を見る社長になる第一歩
今日からできることは、とてもシンプルです。
- 「経費が高いな」と思ったら
- その前に「粗利はどこで生まれているか」を考える
それだけで、
判断の質は確実に変わります。
次回は、
「粗利を“率”で見ると何が起きるのか」
について、さらに踏み込んでいきます。
今日の一言
経費を見る前に、粗利を見よ。
社長が向き合うべき数字は、“削る数字”ではなく“生み出す数字”である。
