①売上を分解すると、なぜ社長は迷子になるのか


―「細かく見ているのに、なぜ判断できないのか?」―

「数字は見ている。でも、決められない」

「売上はちゃんと把握しています」
「商品別、取引先別、月別にも出しています」
「数字はあるんですが…正直、どう判断すればいいのか分からなくて」

これは、利益構造の話を始める前段階で、
多くの社長が口にする言葉です。

一見すると、
数字をしっかり管理している“優秀な社長”に見えます。
実際、努力もしています。

それなのに、なぜか――

  • 次に何を打てばいいか分からない
  • 売上を見ても、ワクワクもしない
  • 判断が遅れ、結局「現状維持」になる

今回は、この状態がなぜ起きるのか。
そして、
なぜ「売上を分解すればするほど、社長は迷子になるのか」
を、構造的に解き明かしていきます。

分解=正解、と思い込まされてきた

まず、大前提としてお伝えしたいことがあります。

売上を分解すること自体が、
悪いわけではありません。

問題は、
「誰のために」「何のために」分解しているのか
が、曖昧なままになっていること
です。

多くの社長は、こう教わってきました。

  • 数字は細かく見なさい
  • 原因は分解しなさい
  • 詳細を把握しなさい

たしかに、
経理や分析の世界では正しい話です。

しかし――
社長の仕事は、分析ではありません。

社長の仕事は、
「次に何をするか」を決めることです。

ここを取り違えると、
数字は“武器”ではなく“迷路”になります。

売上を分解すると、情報は一気に増える

売上を分解すると、何が起きるでしょうか。

  • 商品別
  • 取引先別
  • 担当者別
  • エリア別
  • 月別

数字は、どんどん細かくなります。

一見すると、
「見える化が進んだ」ように感じます。

しかし実際には、
社長の頭の中では、こういうことが起きています。

  • Aは伸びている
  • Bは落ちている
  • Cは横ばい
  • Dは利益が薄い気がする

で、最終的にこうなります。

「結局、どれを優先すればいいんだ…?」

ケーススタディ|ITサービス業F社の話

F社は、複数のサービスを提供する会社です。

社長はとても真面目で、
売上データを細かく管理していました。

  • サービス別売上
  • 月別推移
  • 顧客別ランキング

資料は、立派でした。

しかし、社長はこう言いました。

「数字を見れば見るほど、
 どれも大事に見えてしまって…」

結果、

  • 伸びているサービスも
  • 伸び悩んでいるサービスも
  • 利益が薄いサービスも

すべて“頑張る対象”になっていました。

これは、
情報が足りないのではありません。
情報が多すぎたのです。

社長が迷子になる本当の理由

ここで、核心に入ります。

売上を分解すると社長が迷子になる理由は、
数字が細かいからではありません。

理由は、たった一つです。

分解された数字が、
「判断の形」になっていないから

売上表をいくら眺めても、
そこにはこう書いてありません。

  • どれを捨てるべきか
  • どれに集中すべきか
  • 次に打つ一手は何か

数字は、事実を示すだけです。
判断は、社長がしなければならない。

しかし、
判断に使えない形で数字を渡されると、
社長は考え続けるしかなくなる
のです。

分解が生む、もう一つの罠

売上分解には、
もう一つ厄介な副作用があります。

それは、

「全部大事に見えてしまう」

という罠です。

  • 売上が立っている
  • 長年の取引がある
  • 現場が慣れている

こうした理由で、
本来は見直すべき売上も、
触れない聖域になります。

結果、

  • 忙しさは減らない
  • 利益も変わらない
  • でも、手は打てない

という状態に陥ります。

社長が見るべきは「点」ではなく「型」

ここで、視点を変えてみましょう。

売上を
「商品Aがいくら」
「取引先Bがいくら」
というで見るのを、いったんやめます。

代わりに、こう考えてみてください。

この売上は、
どんな“取り方”で生まれているのか?

  • 定期か、単発か
  • 手間がかかるか、かからないか
  • 価格が決まっているか、都度交渉か

これは、
売上の“型”を見るということです。

ケーススタディ|卸売業G社の場合

G社の社長は、
取引先別の売上表を見て、悩んでいました。

しかし、
取引先名を一旦すべて隠し、
「型」で整理してみると、こうなりました。

  • 定期で、条件が安定している取引
  • 毎回条件が変わる、単発取引
  • 急ぎ・イレギュラーが多い取引

ここで初めて、
社長はこう言いました。

「売上の額じゃなくて、
 “しんどさ”が全然違うんですね」

この瞬間、
数字は判断材料に変わりました。

分解しすぎると、社長の仕事がズレていく

売上を細かく分解し続けると、
社長の仕事は、少しずつズレていきます。

  • 現場目線になる
  • 管理目線になる
  • でも、意思決定が後回しになる

本来、社長がやるべきなのは、

「全体の形を見て、
方向を決めること」

分解は、その後で十分です。

次回予告|売上は、3つの視点でしか見なくていい

次回は、
売上を細かく分けなくても、
社長が判断できる“たった3つの視点”
についてお話しします。

これを知ると、

  • 売上表を見る時間が減る
  • 迷いが減る
  • 判断が早くなる

そんな変化が起きます。

今日の一言

売上を細かく分けても、
社長の答えは増えない。
答えが出る形に、見直すことが先だ。

売上を見る目的は、
安心するためでも、分析するためでもありません。
決めるためです。

そこを忘れないことが、
社長業の第一歩です。


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