②なぜ“頑張って売っているのに”利益が残らないのか


―忙しさの正体を、そろそろ直視しよう―

「去年より忙しいのに、なぜか楽にならない」

「売上は確実に伸びているんです」
「問い合わせも増えて、正直かなり忙しいです」
「なのに、なぜか前より余裕がないんですよね…」

この言葉も、前回と同じくらい、よく耳にします。
そして多くの社長は、ここでこう考えます。

「もっと売らなきゃダメなんだ」
「まだ頑張りが足りないんだ」

でも、本当にそうでしょうか。

今回は、
「頑張って売っているのに、利益が残らない理由」を、
努力論ではなく、構造の話として解きほぐしていきます。

忙しさ=成長、と思い込んでいませんか?

まず、はっきりさせておきたいことがあります。

忙しさと、利益は、ほとんど関係がありません。

これは、感覚的には受け入れにくいかもしれません。
なぜなら、私たちはずっとこう教えられてきたからです。

  • 忙しい=求められている
  • 忙しい=売れている
  • 忙しい=成長している

しかし、経営の現場では、
「忙しい会社ほど、利益が薄い」
という現象が、珍しくありません。

ケーススタディ|卸売業C社の話

C社は、取引先も多く、毎日出荷に追われる会社です。

  • 売上は前年比110%
  • 取引先も増加
  • 社内は常にバタバタ

しかし決算を見ると、
利益はほとんど横ばい。
むしろ、社長の疲労感だけが増していました。

なぜでしょうか。

理由は単純でした。

  • 利益の薄い取引ほど、量が多い
  • 手間のかかる仕事ほど、売上が立つ
  • 忙しさを生む仕事と、利益を生む仕事が一致していない

つまり、
「売れている」と「儲かっている」が別物だったのです。

頑張りすぎる社長ほど、ハマる落とし穴

利益が残らない会社には、
ある共通した“思考のクセ”があります。

それは、

「売上を増やせば、いつか利益はついてくる」

という考え方です。

これは、決して怠慢ではありません。
むしろ、誠実で、責任感の強い社長ほど、
この考えに縛られやすい。

でも、ここに大きな誤解があります

売上には、性質の違いがあります。

  • 売れば売るほど、楽になる売上
  • 売れば売るほど、苦しくなる売上

この違いを無視して、
「とにかく売上を積み上げる」
という判断を続けると、どうなるか。

頑張れば頑張るほど、
利益が削られていく構造
が完成します。

「利益が残らない売上」には、共通点がある

ここで一度、
「頑張っても報われない売上」の特徴を整理してみましょう。

特徴①|単価が低く、量で稼ぐ前提になっている

  • 値上げは怖い
  • 周りも安い
  • 断ったら仕事がなくなりそう

こうして、
薄利多売が“当たり前”になります。

結果、

  • 売上は増える
  • でも、忙しさも比例して増える
  • 利益は、ほとんど増えない

特徴②|手間や負荷が価格に反映されていない

  • 急ぎ対応
  • イレギュラー対応
  • ついで作業

これらが、
「サービスだから」「関係性だから」
という理由で、すべて無償化されていきます。

気づいたときには、

一番手のかかる仕事ほど、利益が薄い

という状態になっています。

特徴③|「断らない」ことが美徳になっている

  • 来た仕事は基本断らない
  • 社長自ら穴埋めする
  • 無理が常態化している

これは一見、立派に見えます。
しかし経営として見ると、

仕事を選ばない=利益構造を放棄している

状態です。

なぜ社長は、構造ではなく「気合」で乗り切ろうとするのか

ここで、少し厳しい話をします。

利益が残らない理由を
「忙しいから」「景気が悪いから」「人が足りないから」
と外に求めている限り、構造は変わりません。

なぜなら、
それらはすべて“結果”だからです。

本当の原因は、もっと手前にある

  • どんな仕事を取ると決めたのか
  • どんな条件を飲むと決めたのか
  • どこまでを“サービス”にすると決めたのか

これらはすべて、
社長の判断です。

ただし、多くの場合、
社長自身が「決めている自覚」がありません。

  • なんとなく
  • これまでそうしてきたから
  • 断るのが怖いから

こうした“無意識の判断”が積み重なり、
今の利益構造が出来上がっています。

「頑張らないと回らない会社」は、危険信号

ここで、一つの基準を提示します。

社長が頑張らないと利益が出ない会社は、
すでに構造的に無理がある。

これは、才能や努力の問題ではありません。

  • 社長が現場に出ないと回らない
  • 社長が詰めないと数字が合わない
  • 社長が無理をして、ようやく黒字

この状態は、
社長の体力を利益に変換しているだけです。

長くは続きません。

利益が残る会社は、何が違うのか?

では逆に、
「それほど無理していないのに、利益が残る会社」は、
何が違うのでしょうか。

共通点は、たった一つです。

最初から、
「頑張らなくても利益が出る形」を前提にしている

  • 仕事を選んでいる
  • 条件を揃えている
  • 手間と価格のバランスを意識している

つまり、
利益を、後から何とかしようとしていないのです。

次にやるべきことは「もっと売る」ではない

ここまで読んで、
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
と思われたかもしれません。

安心してください。
いきなり値上げをしろ、仕事を断て、
という話ではありません。

次にやるべきことは、ただ一つです。

「どの売上が、
自分たちを忙しくしているのか」を知ること

そして、

「その忙しさは、
利益につながっているのか」を疑うこと

この視点を持つだけで、
社長の判断は、確実に変わり始めます。

次回は、
「売上を細かく分解しなくても、
“構造”として捉える方法」
について掘り下げていきます。

今日の一言

忙しさは、努力の証明ではない。
それは、利益構造からの“警告”である。

ここに気づけた社長から、
経営は静かに、しかし確実に変わり始めます。


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