③ワーク:自社の売上を「一文」で説明する


「で、あなたの会社は“何で”売上を作っていますか?」

突然ですが、少し意地悪な質問をします。

「あなたの会社の売上は、どのように生まれていますか?」

この問いに対して、
スラスラと一文で答えられる社長は、実はそれほど多くありません。

多くの場合、返ってくるのはこんな答えです。

  • 「えーっと、商品AとBがあって、最近はCも始めて…」
  • 「基本は既存顧客で、たまに新規が入ってきて…」
  • 「売上の柱が3つあってですね…」

どれも間違ってはいません。
でも、ここで重要なのは正確さではなく、構造が伝わるかどうかです。

今回の記事では、
「売上を分解しない」シリーズの総仕上げとして、

自社の売上を“たった一文”で説明するワーク

に取り組んでいきます。

なぜ「一文」で説明できないと危険なのか

「一文で説明するなんて、言葉遊びでは?」
そう思われるかもしれません。

しかし、売上を一文で言えない状態には、
はっきりとした“経営上のリスク”があります。

理由①|社長自身が、構造を掴めていない

一文で言えないということは、
頭の中に「全体像」が存在していない可能性が高いということです。

細かい数字や個別案件は覚えている。
でも、

  • どこが軸なのか
  • 何に依存しているのか
  • どこを伸ばしたいのか

が、言語化されていない。

これは、地図を持たずに車を運転しているような状態です。

理由②|人に説明できない構造は、引き継げない

社員に方針を伝えるとき、
銀行や外部の人と話すとき、
あるいは将来、誰かに事業を任せるとき。

そのたびに、
「えーっとですね…」と長い説明が必要になる会社は、
構造が属人化しています。

一文で言える構造は、
そのまま「共有できる構造」になります。

「売上を分解しない」からこそ、一文にできる

ここで、これまでのシリーズを少し振り返ります。

  • 売上を細かく分解しすぎると、判断できなくなる
  • 社長が見るべき売上構造は3つだけ
    • 新規
    • 既存
    • 依存

つまり、
見る情報を意図的に減らしてきたわけです。

その結果、ようやくできるようになるのが、
「一文で説明する」という行為です。

細かい要素を削ぎ落とし、
構造だけを残す。
これが、このワークの本質です。

ワーク①|まずは「今の状態」を一文で書いてみる

それでは、実際に手を動かしてみましょう。

お題

「現時点での自社の売上構造」を、一文で書いてください

制限時間は5分。
完璧でなくて構いません。

例(よくあるパターン)

  • 「既存顧客からのリピート売上が中心で、新規は紹介に依存している」
  • 「単発案件が多く、毎月新規を取らないと売上が立たない構造」
  • 「社長個人の営業で受注した案件が売上の大半を占めている」

どうでしょうか。
意外と、ここまでは書ける方が多いはずです。

ここでのポイントは、
良し悪しを判断しないこと

まずは、現状をそのまま言葉にするだけでOKです。

ワーク②|「主語」と「動詞」をはっきりさせる

次に、今書いた一文を見直してみてください。

チェックポイントは2つです。

チェック①|主語は何か?

  • 商品なのか
  • 顧客なのか
  • 社長なのか
  • 仕組みなのか

例えば、

×「売上が安定している」
〇「既存顧客が、毎月継続して購入している」

主語が明確になると、
「誰が売上を作っているのか」が見えてきます。

チェック②|動詞は行動を表しているか?

×「売上がある」
〇「定期契約が更新され続けている」

動詞が弱いと、構造がぼやけます。
売上は“状態”ではなく、“動き”の結果だからです。

ワーク③|「不安になる一言」をあえて足す

次は、少し踏み込んだワークです。

今の一文の後ろに、
次の言葉を付け加えてみてください。

「もし〇〇が起きたら、売上はどうなるだろう?」

  • 「もし紹介が止まったら、この売上は続かない」
  • 「もし社長が動けなくなったら、売上が落ちる」
  • 「もし主要顧客が離れたら、売上の半分が消える」

この“不安になる一言”こそ、
あなたの会社の売上構造の弱点です。

一文で言語化できると、
弱点も同時に浮かび上がります。

ケーススタディ|一文が変わると、意思決定が変わる

ケース①|製造業A社

Before
「複数の商品を卸先に販売して売上を作っている」

一見、悪くなさそうです。
しかし、構造が見えません。

After
「特定の卸先2社への定番商品の継続出荷で、売上の7割を作っている」

一文にしたことで、

  • 依存が強い
  • 新規が弱い

という事実が一気に明確になりました。

結果、
「新商品開発」ではなく、
「取引先分散」を優先する意思決定に変わりました。

ケース②|サービス業B社

Before
「口コミと紹介で、なんとなく売上が回っている」

After
「既存顧客からのリピートと紹介で回っているが、新規獲得は仕組み化されていない」

一文にした瞬間、
「やるべきこと」が明確になりました。

広告を打つかどうか以前に、
新規を生む導線そのものを設計する必要があると気づいたのです。

「良い一文」と「危険な一文」の違い

ここで、少し整理します。

危険な一文の特徴

  • 抽象的
  • 状態説明で終わっている
  • 不安要素が隠れている

例:
「安定した売上がある」

良い一文の特徴

  • 誰が、何をしているかが分かる
  • 構造が見える
  • 次の打ち手を考えられる

例:
「既存顧客の定期契約更新によって売上の大半が支えられている」

良い一文は、
意思決定のスタートラインになります。

この一文は、定期的に“書き換えて”いい

最後に、とても大事なことをお伝えします。

この「一文」は、
一度作ったら終わりではありません。

  • 半年後
  • 1年後
  • 大きな意思決定の前

そのたびに、書き換わっていいのです。

むしろ、
書き換わらないとしたら、
会社は変化していない可能性があります。

今日の一言

売上を一文で言えない会社は、構造を掴めていない。
一文で言えるようになった瞬間、社長の判断は驚くほど軽くなる。


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