③原価を下げても儲からない会社の共通点


「原価は下げた。なのに、なぜ楽にならないのか?」

社長から、こんな言葉を聞くことがあります。

「仕入先を見直して原価は下げたんです」
「外注を減らして、だいぶコストカットしました」

「……でも、正直あまり儲かった感じがしないんですよね」

これは、かなり多くの会社で起きている現象です。

原価を下げれば、
粗利は増える。
理屈では、間違っていません。

それなのに、
なぜ会社は楽にならないのか。

今回は、
「原価を下げても儲からない会社」に共通する思考のクセ
を、構造的に見ていきます。

原価を下げる=正解、ではない理由

最初に大事なことを言っておきます。

原価を下げること自体は、
決して悪いことではありません。

ただし、
原価を下げること“だけ”で儲かろうとする会社
には、共通する落とし穴があります。

それは、

原価を「操作対象」としては見ているが
粗利を「構造」として見ていない

という点です。

共通点①|「原価=悪者」になっている

原価を下げても儲からない会社では、
原価がこんな扱いを受けています。

  • とにかく下げるもの
  • 高い=悪
  • 低い=正義

この考え方、一見正しそうですが、
実はとても危険です。

なぜなら、
原価は価値の裏返しだからです。

  • 良い材料
  • 丁寧な工程
  • 経験のある人

これらはすべて、原価になります。

原価を下げることで、

  • 品質が落ちる
  • 手戻りが増える
  • クレームが増える

結果として、

忙しくなっただけ

という状態に陥るケースは、少なくありません。

ケーススタディ①|原価削減で“疲れる会社”になった例

背景

製造業I社。
利益改善のため、社長は原価削減に着手しました。

  • 材料を安いものに変更
  • 外注工程を内製化

数字上は、
確かに原価は下がりました。

その後、何が起きたか

  • 不良率が上がる
  • 手直し作業が増える
  • 現場の残業が増える

結果、

  • 人件費が増加
  • 納期トラブル発生

粗利は、ほとんど増えませんでした。

なぜか。

原価を下げた結果、
「別のコスト」を呼び込んでいた
からです。

共通点②|「原価を下げれば粗利が増える」と思い込んでいる

ここで、一つ冷静になりましょう。

粗利の式は、こうです。

売上 − 原価 = 粗利

原価を下げれば、
理論上は粗利は増えます。

でも実際の経営では、
こんなことが起きます。

  • 原価を下げた分、値下げ要求が来る
  • 「安くできるなら」と、価格交渉される
  • 結果、売価も下がる

つまり、

原価を下げても、
粗利“率”は変わらない

という状態です。

これでは、
いくら努力しても報われません。

ケーススタディ②|値下げ圧力に飲み込まれた会社

背景

卸売業J社。
仕入れ条件を改善し、原価を下げました。

社長の期待

  • 「これで粗利が増える」
  • 「会社が楽になる」

現実

  • 得意先から値下げ要請
  • 「原価下がったんでしょ?」の一言

結局、

  • 売価も下げる
  • 粗利額はほぼ変わらず

残ったのは、
交渉疲れだけでした。

共通点③|「どこで粗利を作るか」が決まっていない

原価を下げても儲からない会社は、
共通してこの問いに答えられません。

「うちは、どこで粗利を作る会社ですか?」

  • 商品か
  • サービスか
  • スピードか
  • 手間か

これが決まっていないと、

  • 全部を安くしようとする
  • 全部を効率化しようとする

結果、
強みが消えていくのです。

粗利は「削って増やすもの」ではない

ここで、視点を変えましょう。

粗利は、

  • 原価を削って
  • 無理にひねり出す

ものではありません。

本来の粗利とは、

価値に見合った価格が、
正しく受け取れている状態

の結果です。

だから、

  • 原価だけをいじっても
  • 儲かるとは限らない

のです。

儲かる会社がやっている“逆の思考”

原価を下げても儲からない会社と、
儲かる会社。

決定的な違いは、
考える順番です。

儲からない会社

  1. 原価を下げる
  2. 粗利が増えるはず
  3. でも増えない

儲かる会社

  1. どこで価値を出すか決める
  2. その価値に合う価格を考える
  3. 結果として、粗利が残る

原価は、
最後に調整するものであって、
最初に叩くものではありません。

ケーススタディ③|原価に手を付けず、儲かるようになった会社

背景

サービス業K社。
社長は、原価(人件費)が高いことに悩んでいました。

見直したのは原価ではなく…

  • 提供内容の整理
  • 手間のかかる仕事の線引き
  • 価格の考え方

結果、

  • 原価はほぼ変わらず
  • 粗利額は大きく改善

社長の言葉が印象的でした。

原価を下げるより、
取るべき粗利を決めた方が早かった

原価を下げる前に、必ず考えるべき問い

もし今、

「原価を下げよう」

と思ったら、
一度立ち止まって、
この問いを自分に投げてみてください。

  • この原価は、価値を生んでいるか?
  • それとも、構造の歪みを隠しているだけか?
  • 原価を下げた先に、どんな行動変化が起きるか?

この問いを飛ばすと、
原価削減は
会社を疲れさせる施策になります。

次回予告|粗利を「率」で見始めた瞬間に起きること

次回は、

「粗利率を追いかけ始めると、なぜ経営が歪むのか」

という、少し刺激的なテーマを扱います。

  • 粗利率が高い=良い会社?
  • 業界平均は本当に目安になる?

粗利を“率”で見る落とし穴を、
丁寧に解説していきます。

今日の一言

原価を下げても儲からないのは、
原価が問題なのではなく、
「どこで粗利を作るか」を決めていないからである。


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