
「何から手を付ければいいか分からない」社長へ
経営者の方と話していると、非常によく聞く言葉があります。
やることが多すぎて、どれが正解か分からない
全部大事に見えて、優先順位が付けられない
この状態、実は“やる気”や“能力”の問題ではありません。
ほとんどの場合、原因はもっとシンプルです。
売上構造が、見えていない。
今回の記事では、
「売上を分解しない」シリーズの締めくくりとして、
- なぜ売上構造が見えると、打ち手が自然に絞られるのか
- 逆に、構造が見えないと、なぜ施策が散らかるのか
を、具体例とともに解きほぐしていきます。
打ち手が多すぎる会社に共通する“ある特徴”
まず、打ち手が散らかっている会社の典型例を見てみましょう。
よくある状態
- SNSもやらなきゃ
- 広告も気になる
- 既存顧客フォローも大事
- 新商品も考えたい
- 値上げも検討中
……全部、正しそうに見えます。
でも、この状態のまま進むと、
どれも中途半端になりやすい。
なぜか。
理由|「売上のどこを動かしたいか」が決まっていないから
売上構造が見えていないと、
- 何を増やせば売上が伸びるのか
- どこが詰まっているのか
が分かりません。
結果として、
「思いついたことを全部やる」
という判断になってしまうのです。
売上構造が見えるとは、どういう状態か?
ここで、シリーズ②で扱ってきた内容を整理します。
社長が見るべき売上構造は、たった3つでした。
- 新規
- 既存
- 依存
そして前回は、
これを踏まえて売上を一文で説明しました。
例:
「既存顧客のリピートが売上の中心で、新規は紹介に依存している」
この一文が書けた状態。
これが「売上構造が見えている」状態です。
ポイントは、
数字の細かさではなく、構造の輪郭が見えていること。
構造が見えた瞬間、選択肢は一気に減る
では、先ほどの一文を見てみましょう。
「既存顧客のリピートが売上の中心で、新規は紹介に依存している」
この会社が抱える論点は、何でしょうか。
- 既存顧客をさらに深掘りするのか
- 紹介以外の新規ルートを作るのか
逆に言うと、
- 新商品を増やす
- とりあえず広告を打つ
- 値下げで勝負する
といった選択肢は、優先度が下がることが分かります。
つまり、
構造が見えた瞬間に、
やらなくていいこと
が自然と浮かび上がるのです。
ケーススタディ①|「広告を打つべきか?」で迷っていた会社
背景
サービス業C社。
売上が伸び悩み、広告出稿を検討していました。
しかし、社長はどこかモヤモヤしています。
売上構造を一文にすると
「既存顧客の継続利用で売上は安定しているが、新規は月数件しか入ってこない」
この一文から見えた構造は、
- 売上の土台は既存
- 新規は弱いが、そもそも受け入れ余力が少ない
というもの。
導き出された打ち手
この会社が最初にやるべきだったのは、
広告ではありませんでした。
- 既存顧客の単価・利用頻度を上げる
- 受け入れ体制を整える
広告は、その後でいい。
売上構造を見たことで、
「今じゃない」という判断ができたのです。
ケーススタディ②|「全部伸ばそう」としていた会社
背景
小売業D社。
売上を伸ばすため、あらゆる施策に手を出していました。
- 新規客向けキャンペーン
- 常連向けポイント施策
- 新商品投入
どれも忙しい。でも、成果は薄い。
売上構造を一文にすると
「売上の8割が少数の常連客に依存している」
この一文が示していたのは、
極端な依存構造でした。
導き出された打ち手
この会社の最優先事項は、
- 常連客を増やすこと
ではありません。
- 常連“以外”の層をどう作るか
つまり、
- 新規獲得
- 初回から2回目への導線
に集中すべきだと分かりました。
結果として、
「やること」はむしろ減り、
成果は出始めました。
打ち手が自然に絞られる会社の思考回路
ここまでの話をまとめると、
売上構造が見えている社長は、こんな思考をします。
- 売上は、どこで生まれているか
- どこに偏っているか
- 一番壊れやすいのはどこか
この3点が分かると、
- 強化すべき点
- 補うべき点
が、ほぼ自動的に決まります。
「何をやるか」ではなく、
「どこを動かすか」が先に決まる。
これが、打ち手が絞られる正体です。
「正解の施策」を探さなくていい理由
多くの社長が、
「正解の打ち手は何か?」
を探そうとします。
でも実際には、
- 広告が正解な会社もあれば
- 既存フォローが正解な会社もある
違いを生むのは、
売上構造の違いだけです。
構造を見ずに施策を選ぶから、
迷子になる。
構造を見てから選べば、
候補は自然に2~3個に絞られます。
売上構造は「判断を楽にするため」にある
最後に、とても大切な視点をお伝えします。
売上構造を整理する目的は、
- 数字に強くなること
- 管理を細かくすること
ではありません。
社長の判断を、楽にすること。
- 考える時間を減らす
- 迷う回数を減らす
- 覚悟を決めやすくする
そのために、
売上を分解せず、構造だけを見るのです。
今日の一言
売上構造が見えれば、打ち手は「選ぶもの」ではなく「残るもの」になる。
迷っている時ほど、施策ではなく構造を見よ。
