④社長が守るべき数字は、実は一つではない


――売上・利益・お金は、まったくの別物・第4回――

「結局、どの数字を見ればいいんですか?」

ここまで読んできた社長なら、
一度はこう思ったはずです。

「売上だけ見ちゃダメ」
「利益が出てても安心じゃない」
「お金を見ないと危ない」

……で、
結局、何を見ればいいんだ?

この疑問は、とても健全です。
そして、ほぼ全ての社長がここで一度立ち止まります。


社長は「一つの数字」にすがりたくなる

実は、多くの社長が無意識に
“たった一つの数字”にすがろうとします。

・売上さえ上がっていれば
・利益さえ出ていれば
・通帳残高さえあれば

どれか一つを
「これが命綱だ」と決めたくなる。

なぜなら――
全部見るのは、正直しんどいからです。


でも、経営はそんなに単純じゃない

ここが、
経営が難しく感じる正体です。

会社は、

  • 売上で動き
  • 利益で評価され
  • お金で生き延びる

という、三つの異なるルールの上に成り立っています。

どれか一つだけを見ていると、
必ず“死角”が生まれます。


ケース①:売上を守った社長の落とし穴

ある営業会社の社長。

・売上目標は絶対
・数字は毎日チェック
・前年同月比も完璧

でも数年後、こう言いました。

「売上は伸びてたんです。でも…残らなかった」

理由は、

✔ 値引きが常態化
✔ 利益率が低下
✔ 忙しいだけの仕事が増殖

売上という数字は守った。
でも、会社は守れなかった。


ケース②:利益を守った社長の誤算

別の社長は、利益重視型。

・粗利率を徹底管理
・無駄な経費は削減
・決算書は常に黒字

一見、優等生です。

しかし、

「資金繰りが、ずっと楽にならない」

原因は、

✔ 回収が遅い
✔ 借入返済が重い
✔ 利益と現金のズレ

利益は守れた。
でも、お金は守れなかった。


ケース③:お金だけを見て、判断が止まった社長

さらに別の例。

・通帳残高は毎日チェック
・お金が減ると不安
・支出に極端に慎重

結果、

✔ 投資ができない
✔ 人を採れない
✔ チャンスを逃す

社長はこう言います。

「守りすぎて、攻められなくなった」

お金は守れた。
でも、成長を失った。


「正解の数字」は存在しない

ここで、
一つはっきりさせておきましょう。

社長が守るべき“唯一の数字”は存在しません。

なぜなら、

  • フェーズによって違う
  • 会社の体力によって違う
  • 社長の打ち手によって違う

からです。


守るべきは「バランス」

社長が本当に守るべきもの。
それは、数字同士のバランスです。

・売上は伸びているか
・利益は削れていないか
・お金は耐えられるか

この三つを
同時に見る視点

これが、管理会計の入り口です。


管理会計が教えてくれる「守り方」

管理会計は、こう考えます。

売上は「エンジン」
利益は「燃費」
お金は「燃料タンク」

どれか一つ欠けても、
車は止まります。

・エンジンだけ強くても
・燃費だけ良くても
・燃料だけあっても

走り続けることはできません。


社長が見るべき数字は「セット」

だから、社長が見るべき数字は
単体ではなく、セットです。

たとえば、

・売上 × 利益率
・利益 × キャッシュ
・固定費 × 手元資金

こうして見ると、

「今の会社は、どこが弱いのか」

が、自然と浮かび上がります。


数字は「判断の材料」であって、目的ではない

もう一つ、大事なこと。

数字は、

・良い悪いを決めるもの
・社長を縛るもの

ではありません。

判断を楽にするための材料です。

数字を増やすほど、
社長は賢くなるわけではない。

必要な数字を、必要な形で見る。

これだけで、
経営のストレスは激減します。


「全部見なきゃ」は、卒業していい

ここまで来たら、
声を大にして言えます。

社長は、
会計の専門家になる必要はない。

・完璧な決算書理解
・細かい勘定科目
・専門用語の暗記

そんなものより、

「今、何が危ないか」
「次に何を打つか」

これが分かれば十分です。


このシリーズで伝えたかったこと

『売上・利益・お金は、まったくの別物』

このシリーズで一貫して伝えたかったのは、

  • 売上に振り回されないこと
  • 利益に安心しすぎないこと
  • お金から目を逸らさないこと

そして、

数字は、社長を苦しめる敵ではなく
正しく使えば、守ってくれる味方だ

という一点です。


次の扉は「管理会計」

ここまで来た社長は、
もう準備ができています。

・数字が怖くない
・完璧を求めていない
・判断のために数字を使いたい

これは、
管理会計を学ぶ社長の理想的なスタート地点です。


今日の一言

社長が守るべきなのは、
一つの数字じゃない。
“数字の関係性”こそが、会社を守る。


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