
――数字が苦手な社長ほど、経営に向いている・第3回――
社長が一番、言いづらい言葉
社長業をしていて、
一番言いづらい言葉は何でしょうか。
「失敗しました」
「判断を誤りました」
…いろいろありますが、
多くの社長が口をつぐんでしまうのが、この一言です。
「正直、よく分かっていません」
特に、数字の話になると、
この言葉は一気に言いづらくなります。
「社長なんだから、分かっていて当然」という空気
決算の打ち合わせ。
銀行との面談。
税理士からの説明。
そんな場面で、
こんな空気を感じたことはありませんか?
- 今さら聞いたら恥ずかしい
- 社長なのに分からないと思われたくない
- ちゃんと理解している前提で話が進む
結果として、
「はい、分かりました」
「そうですね」
と、分かったフリをしてしまう。
分からないまま進む経営の怖さ
ここで、
はっきり言っておきます。
分からないこと自体は、まったく問題ありません。
問題なのは、
分からないまま意思決定することです。
- 本当は理解していない
- でも、話は進む
- そして、責任は社長が取る
この構造が、
じわじわと社長を追い込みます。
【ケース①】分かったフリが積み重なった会社
ある社長は、
数字の説明が苦手でした。
税理士から説明を受けても、
「細かいところは専門家に任せよう」
そう考え、
深くは聞きませんでした。
数年後、
- 借入が膨らみ
- キャッシュが回らず
- 「なぜこうなったのか分からない」
社長の言葉は、
「最初から、ちゃんと聞いておけばよかった」
でした。
「分からない」と言える社長は、実は強い
一方で、
こんな社長もいます。
- 会計の専門用語が出ると止める
- 「それ、噛み砕いて説明してもらえますか?」と言う
- 分かるまで何度も聞く
最初は、
遠慮がちでした。
でもある時から、
こう言うようになります。
「すみません、分からないので教えてください」
この一言を言えるようになってから、
経営が変わり始めました。
「分からない」は、思考を止めない言葉
「分からない」と言うと、
思考停止だと思われがちです。
でも実際は、真逆です。
- 分からない
→ 何が分からないのかを探す
→ 質問が生まれる
→ 理解が進む
これは、
思考が動き出す合図です。
数字が得意な人ほど「分からない」を言えない
皮肉な話ですが、
数字が得意な人ほど、
- 分からないと言えない
- 分かっている前提で話す
- 理解のズレに気づきにくい
ことがあります。
なぜなら、
「自分は数字が得意なはずだ」
という自己イメージがあるからです。
【ケース②】質問を変えたら、会話が変わった社長
ある社長は、
銀行との面談が苦手でした。
理由は簡単。
「数字の話になると、
置いていかれる感じがする」
そこで、
思い切ってこう言いました。
「すみません。
この数字が意味することを、
経営判断の観点で教えてください」
すると、
銀行側の説明が変わりました。
- 用語が減り
- 具体的な話が増え
- “作戦会議”の空気になった
「分からない」と言ったことで、
関係性が前に進んだのです。
分からない社長の方が、周りを活かせる
社長が「分からない」と言える会社では、
- 社員が意見を言いやすい
- 専門家が力を発揮しやすい
- 情報が集まりやすい
逆に、
何でも分かっている社長のもとでは、
- 誰も訂正しない
- 誰も踏み込まない
- 誰も責任を取りたがらない
組織は、
静かに硬直していきます。
「分からない」は、弱さではなく余白
経営において、
- 全部分かっている社長
- すべて即断できる社長
である必要はありません。
むしろ、
分からない部分があるから、
人が入り、
組織が育つ
これが現実です。
管理会計は「分からない」を形にする技術
管理会計とは、
- 難しい計算
- 専門的な理論
ではありません。
本質は、
- 分からない
- モヤっとする
- 違和感がある
こうした感覚を、
数字で確認できる形にする技術です。
【ケース③】「分からない」を起点に作ったExcel1枚
ある社長は言いました。
「売上は見てるけど、
どれが儲かってるのか分からない」
そこで、
- 案件別売上
- 作業時間
- 外注費
だけを並べた
シンプルな表を作りました。
すると、
- 忙しい仕事ほど利益が薄い
- 楽な仕事が会社を支えている
ことが一目瞭然。
「分からない」が、
管理会計の出発点になりました。
分からない社長は、伸びしろだらけ
分からないと言える社長は、
- 学べる
- 変われる
- 修正できる
これは、
経営において
最強の状態です。
逆に、
- 分かったフリをする
- 聞けない
- 確認しない
社長ほど、
リスクを抱え込みます。
「分からない」は、経営者の免許証
管理会計の虎の穴では、
こう考えています。
「分からない」と言えることは、
経営者としての
スタートラインに立った証拠だ
ここから、
本当の意味で
数字と付き合い始められます。
今日の一言
「分からない」と言えた瞬間から、
経営は前に進み始める。
伸びる社長ほど、
その一言を恐れない。
