
― 社長の判断は、もっと少なくていい ―
「決断疲れ」の正体は、まだ終わっていない
前回の記事では、
社長が感じている“決断疲れ”の正体が、
- 判断が多すぎるからではなく
- 毎回ゼロから考え続けているから
だという話をしました。
では、ここからどうするのか。
「判断基準を作ろう」
「数字で決めよう」
……その前に、必ずやらなければならないことがあります。
それが今回のテーマ、
👉 「決めることを決める」
です。
そもそも、社長は“何でも屋”ではない
まず、少し極端な問いを投げてみます。
今、あなたが日々決めていることの中で
「社長でなければ絶対に決められないこと」は、いくつありますか?
おそらく、思ったより少ないはずです。
にもかかわらず、現実には、
- 現場判断
- イレギュラー対応
- 例外処理
- グレーな相談
これらが、すべて社長のところに集まってきます。
理由は単純です。
「誰が決めるか」が決まっていないから。
つまり、
社長が忙しい会社ほど、
判断の内容ではなく、
判断の“担当者設計”が抜け落ちている
のです。
「決めることを決める」とは、どういう意味か
ここで言う「決めることを決める」とは、
- 決断力を鍛えること
- もっと早く判断すること
ではありません。
そうではなく、
社長が“必ず自分で決める判断”を、先に決めてしまうこと
です。
言い換えるなら、
- 社長が責任を持つ判断
- 社長が関与しない判断
- ルールで自動的に決まる判断
この3つを、あらかじめ分けておくということ。
これをやるだけで、
体感的には本当に「仕事が半分」になります。
社長が必ず決めるべき判断は、実は3つしかない
多くのケースを見てきて、
社長が“必ず”握っておくべき判断は、だいたい次の3領域に集約されます。
① 売上・利益に関する最終判断
- どこで儲けるのか
- どの商品・サービスを伸ばすのか
- 利益が出ないものを続けるのか、やめるのか
これは、社長以外に決められません。
② 事業の方向性に関する判断
- どの市場で戦うのか
- 何をやらないと決めるのか
- 将来、どんな会社でありたいのか
ここがブレると、現場の判断もすべてブレます。
③ 人・投資に関する大きな判断
- 採用するか、しないか
- 教育にお金をかけるか
- 設備投資・広告投資をどうするか
これも、社長の覚悟が必要な判断です。
逆に言うと、
これ以外は「社長が毎回決めなくてもいい」可能性が高い。
ケーススタディ|B社長が「決めない」ことを決めた話
ここで、実際によくあるケースをご紹介します。
従業員15名のB社長。
口癖は、
「結局、全部自分のところに来るんですよね」。
詳しく聞くと、
- 値引きの可否
- クレーム時の対応方針
- 急な予定変更
- 細かなコスト判断
すべて社長判断。
そこでB社長が最初にやったのは、
判断を減らすことではありませんでした。
やったのは、これだけ。
「自分が必ず決める判断」と
「自分が関与しない判断」を
紙に書き出した
そして、こう言いました。
「これ以外の判断は、
一旦、現場で決めてもらう」
結果どうなったか。
- 社長への確認は激減
- 現場の判断スピードは上昇
- 社長は“考える判断”に集中できるようになった
完璧ではありません。
でも、確実に“楽になった”。
任せることが怖い、本当の理由
ここで、多くの社長がぶつかる壁があります。
「任せたら、変な判断をされそうで怖い」
この感覚、とても自然です。
でも、冷静に考えてみてください。
怖いのは、
- 任せることそのもの
ではなく - 判断の基準が共有されていないこと
なのです。
基準がないまま任せれば、
そりゃ不安になります。
だから順番が大事です。
- 社長が決めることを決める
- 社長が決めないことを明確にする
- その上で、判断基準を作る
この順序を飛ばすと、
「任せる=丸投げ」になってしまいます。
「全部見ないと不安」な社長ほど、線を引くべき
面白いことに、
- 優秀
- 真面目
- 責任感が強い
こういう社長ほど、
「全部見ていないと不安」になります。
でも実は、
全部見る社長ほど、何も見えていない。
判断が混ざりすぎて、
- 本当に重要な決断
- どうでもいい決断
の区別がつかなくなるからです。
だからこそ、
最初にやるべきは、
「これは自分の仕事」「これは自分の仕事じゃない」
という線を、意図的に引くこと
です。
「決めることを決める」は、覚悟の作業
ここまで読んで、
「それでも、やっぱり不安だな…」
と感じている方もいるでしょう。
それは正解です。
なぜなら、
「決めることを決める」作業は、仕組みづくりであると同時に、覚悟づくりだから。
- 自分が責任を持つ判断
- 他人の判断を信じる領域
これを分けることは、
社長自身のスタンスを問われる作業でもあります。
でも、この一歩を踏み出さない限り、
- 社長はずっと忙しい
- 社長しか決められない会社
- 社長が一番のボトルネック
から抜け出せません。
次回予告
数字をたくさん見るほど、社長は判断できなくなる
― 「見る数字を絞る」という、もう一つの決断 ―
今日の一言
社長の仕事は、すべてを決めることではない。
「自分が決めること」を先に決めることだ。
