
判断に迷うのは、社長が弱いからではない
「A案とB案、どちらも一長一短で決めきれない」
「今は攻めるべきか、守るべきか分からない」
「判断材料は揃っているのに、最後の一押しができない」
社長であれば、誰しも経験があるはずです。
そして多くの場合、
社長はこう考えます。
- 情報が足りないのではないか
- もっと考えれば正解が見えるのではないか
- 決断を急ぐべきではないのではないか
しかし実は、
判断に迷う原因は、情報不足ではありません。
本当の原因は、
「立ち返る基準点がない」ことです。
今回のテーマは、
意思決定構造設計の中でも、非常に重要な最終ピース。
「迷ったら、必ずここに戻る」という“数字”を1つ決める
という話です。
判断が速い社長は、「考えない」のではなく「戻っている」
判断が速い社長を見ると、
「即断即決できてすごい」と感じるかもしれません。
しかし、よく観察すると違います。
彼らは、
- 深く考えない
- 勘だけで決めている
のではありません。
必ず、ある一点に立ち戻ってから決めている
のです。
その一点こそが、
「迷ったら戻る数字」。
この数字があるかどうかで、
- 判断スピード
- 判断のブレ
- 後悔の少なさ
が、驚くほど変わります。
なぜ「1つ」でなければいけないのか
ここで、よく出てくる質問があります。
「大事な数字は複数あるのでは?」
「1つに絞るのは危険では?」
確かに、
会社には大事な数字がたくさんあります。
しかし今回決めたいのは、
“分析用の数字”ではありません。
“迷ったときに戻る数字”です。
迷っているときに、
- 売上も
- 利益も
- キャッシュも
- 稼働率も
全部見始めたら、
迷いはさらに深くなります。
だからこそ、
最後の拠り所は、1つだけにする。
これが、
意思決定構造をシンプルに保つコツです。
「迷ったら戻る数字」とは、どういう数字か
では、その数字は
どんな条件を満たしている必要があるのでしょうか。
ポイントは3つです。
- 会社の戦い方を一言で表している
- 良し悪しが直感的に分かる
- 社長が一番責任を持ちたい数字である
順に見ていきましょう。
条件①|会社の戦い方を一言で表しているか
「迷ったら戻る数字」は、
会社の“勝ちパターン”を表す数字です。
たとえば、
- 高付加価値路線なら → 粗利率
- 回転重視なら → 稼働率
- ファン重視なら → リピート率
- 規模拡大期なら → 売上成長率
など。
重要なのは、
この数字が崩れたら、戦い方が崩れている
と言えるかどうか。
逆に言えば、
この数字さえ守れていれば、
多少のブレはOK
そう言える数字が、
候補になります。
条件②|良い・悪いが一瞬で分かるか
迷っているとき、
社長の頭はすでに疲れています。
そんな状態で、
- 計算が必要
- 解釈が分かれる
- 人によって見方が違う
数字は、拠り所になりません。
「迷ったら戻る数字」は、
- 高いか、低いか
- 上がっているか、下がっているか
が、一瞬で分かる必要があります。
だからこそ、
- 複雑な指標
- 組み合わせ指標
よりも、
シンプルな1指標が向いています。
条件③|社長が「自分の責任だ」と言える数字か
もう一つ、とても重要な条件があります。
それは、
その数字を、現場のせいにできないかどうか。
- 市場が悪かったから
- 景気が悪かったから
- 担当者が頑張らなかったから
こうした理由で逃げられる数字は、
拠り所にはなりません。
「迷ったら戻る数字」は、
これは、社長の判断の結果だ
と、胸を張って言える数字であるべきです。
ケーススタディ①|粗利率に戻る社長
ある受注型ビジネスの社長。
彼の「迷ったら戻る数字」は、
粗利率でした。
- 案件を取るか迷ったら → 粗利率
- 値引き要求が来たら → 粗利率
- 人を増やすか迷ったら → 粗利率
すべて、
「この判断で、粗利率はどうなるか?」
に立ち戻ります。
結果として、
- 判断が速くなる
- 値引きが減る
- 利益が安定する
という変化が起きました。
ケーススタディ②|稼働率に戻る社長
別の会社では、
人の稼働が経営の生命線でした。
この社長が選んだのは、
稼働率。
- 新規案件を取るか
- 断るか
- 外注を使うか
すべて、
この判断で、稼働率はどうなる?
で決めます。
すると、
- 無理な受注が減る
- 現場の疲弊が減る
- クレームが減る
という好循環が生まれました。
「戻る数字」があると、判断の質が揃う
この数字を決めると、
社長自身だけでなく、会社全体が変わります。
- 現場が判断理由を理解できる
- 報告の視点が揃う
- 「なぜその判断か」が説明できる
つまり、
判断の“軸”が、会社に共有される
ということです。
これは、
意思決定を仕組みに変える大きな一歩です。
実践ワーク|あなたの「迷ったら戻る数字」を決める
今回のワークです。
次の問いに、正直に答えてみてください。
- この数字が崩れたら、「経営がズレている」と言えるものは何か?
- 判断に迷ったとき、一番見たくなる数字は何か?
- その数字の責任を、自分が100%負えるか?
この3つを満たす数字が、
あなたの「迷ったら戻る数字」です。
決まったら、
ぜひ言葉にしてみてください。
迷ったら、〇〇を見る
これだけで、
判断は驚くほど軽くなります。
完璧な判断より、「戻れる判断」を持つ
最後に、大切なことを。
社長の判断は、
常に正解である必要はありません。
大事なのは、
- 迷ったときに戻れる
- ブレたときに修正できる
- 後悔しにくい
構造を持っていること。
「迷ったら戻る数字」は、
社長のための“安全装置”です。
今日の一言
迷いをなくす方法は、
考え尽くすことではない。
戻る場所を、1つ決めることだ。
その数字が、
あなたの意思決定を支え続けます。
