
――管理会計のためのデータ取得・入力設計・第6回――
DXは「システム導入」ではない
社長の皆さん、DXと聞くとつい「新しいITシステムを導入すること」と考えがちです。
確かに、クラウドERPやPOS、勤怠管理システムなどのツールは便利です。しかし、DXの本質は業務フローとデータを整備し、意思決定に活かせる状態を作ることです。
つまり、ここまでシリーズで学んできた「データ取得・入力設計」「現場が嫌がらないルール設計」「判断できるデータ作り」こそが、DXの8割を占める重要な作業なのです。
数字と業務フローを整えた時点で、DXの土台は完成
シリーズ前半で解説した通り、管理会計のデータ設計では、次のステップを踏みました。
- 取るべき数字と取らない数字を明確にする
- 入力ルールを決め、現場に納得感を与える
- 業務フローと数字をセットで考える
- 完璧でなくても判断できるデータを作る
このプロセスを完了すると、もはやデータは即意思決定に使える状態になります。
つまり、どんな高価なシステムを導入するよりも、まずこのステップを徹底することがDX成功の近道です。
DXの80%は「仕組み作り」で決まる
DXの多くの失敗例は、「システム導入=DX」と思い込み、現場の業務や数字の整備をおろそかにしたことに起因します。
ケーススタディ:小売業の失敗例
- 問題:高価なPOSシステムを導入したが、現場は入力ルールを守らず、売上や在庫データはバラバラ
- 結果:導入したシステムはほぼ使われず、経営判断も遅れる
- 教訓:システムはツールでしかない。データと業務フローを整備しなければDXは進まない
一方、システム導入前に業務フローとデータを整理していた会社は、システム投入後すぐにデータが揃い、レポート作成や意思決定に即活用できました。
現場が理解し、協力する状態こそDXの本質
DX成功のカギは、現場が「このデータは自分たちのためにも役立つ」と理解して入力することです。
- 現場の協力がなければ、どんな自動化ツールも宝の持ち腐れ
- 現場が納得してデータ入力を続けられる仕組みがある時点で、DXの本質はすでに達成
ケーススタディ:製造業の成功例
- 改善前:工程ごとの作業時間や材料消費量を手入力、現場の負担大
- 改善後:バーコードスキャンやタブレット入力で簡略化
- 現場の声:「入力が楽になった」「業務改善にも役立つ」と好意的
- 結果:データが揃い、即意思決定可能
- 教訓:現場の協力が得られた時点で、DXの8割は完成
DXを加速させる「最後の2割」
では残りの2割は何か?それはシステム化や自動化の最適化です。
- データが揃って初めて、ERPやBIツールの導入効果が最大化
- 自動集計やレポート作成、ダッシュボード表示が可能になる
- この段階で初めて「経営判断のスピード化」が実現
つまり、まずはデータの精度と業務フロー整備を優先し、ツールは後から付け加える感覚で十分です。
DXを短期間で実現するためのステップ
- 必要な数字を整理する
- 入力ルールと担当者を明確にする
- 業務フローと数字をセットで設計する
- 完璧でなくても意思決定に十分なデータを作る
- 現場が理解し、自然に入力できる仕組みを整える
- 最後にシステム導入や自動化で効率化
この順番を守るだけで、DXの大部分は短期間で達成可能です。
ケーススタディ:小規模サービス業
- ステップ1〜4を徹底
- データが揃った時点で経営判断が即可能
- その後クラウドツールを導入して自動化
- 結果:導入前と比べて意思決定スピードは3倍、改善施策も即反映
今日からできる実践アクション
- 取るべき数字と取らない数字を整理する
- 現場が納得する入力ルールを作る
- 業務フローに沿ったデータ設計を行う
- 判断に必要な精度を意識し、完璧主義を捨てる
- データが揃ったら、自動化やシステム化でさらに効率化
今日の一言
DXはシステム導入から始まるわけではない。
業務フローと数字を整備し、
現場が自然にデータを入力できる状態を作った時点で、
すでにDXは8割終わっている。
