
――社長の仕事は、決めること・第2回――
「相談はできる。でも、決めるのは自分」
社長をやっていると、こんな感覚になる瞬間はありませんか。
「いろんな人に話は聞いた。
でも、最後に“YESかNOか”を決めるのは、結局自分ひとりだな…」
社員、幹部、税理士、銀行、家族。
相談相手はいるはずなのに、決断の瞬間は、なぜかいつも一人。
この感覚は、社長経験者でなければ分かりません。
そして多くの社長が、この「判断の孤独」を
・自分の性格の問題
・メンタルが弱いから
と思い込んでしまいます。
ですが、先に結論を言います。
社長の判断が孤独なのは、構造上そうなるようにできている
あなたの問題ではありません。
社長の判断が孤独になる「3つの構造的理由」
なぜ、社長の判断はここまで孤独になるのか。
理由は、大きく3つあります。
理由① 最終責任が“一点集中”しているから
会社では、どんな意思決定も最終的にはこうなります。
「それ、社長はどう考えてますか?」
どれだけ会議をしても、
どれだけ意見を集めても、
最後のハンコを押すのは社長です。
つまり、
・成功しても「会社がすごい」
・失敗すると「社長の判断ミス」
この責任の非対称性が、判断を一気に孤独なものにします。
社員は意見を言えても、
その結果に人生を賭けているわけではありません。
社長だけが、
・お金
・信用
・社員の生活
を背負っています。
だから、同じ情報を見ていても、
見えている景色がまったく違うのです。
理由② 「本音を言えない関係」に囲まれているから
社長になると、周囲の人は少しずつ変わります。
・社員は遠慮する
・取引先は立場を気にする
・家族は心配して踏み込めない
結果、どうなるか。
「本当の意味で、率直な意見が返ってこない」
例えば、こんなやり取り。
社長
「この事業、続けるべきだと思う?」
社員
「社長がやると決めたなら、僕は賛成です!」
…これ、優しさでもあり、壁でもあります。
社長の判断には、常に“空気”がまとわりつく。
だからこそ、相談しても、どこか一人で考えている感覚が残るのです。
理由③ 誰も「代わりに決めてくれない」から
社員時代との一番の違いは、ここです。
社員時代
→「決める人」が別にいる
社長
→「決める人=自分」
つまり、
判断を放棄できない立場に立った瞬間から、孤独は始まります。
・決めない自由がない
・逃げ道がない
・先送りしても、自分に返ってくる
この状態で意思決定を続けるのは、
精神的に負荷がかかって当たり前です。
ケース:数字は見えているのに、決められない社長
あるサービス業の社長の話です。
売上は前年対比110%。
一見、順調そうに見えます。
しかし中身を見ると、
・人件費が増加
・残業が常態化
・社長自身が現場に出続けている
本人は分かっていました。
「このままじゃ、いずれ限界が来る」
でも、
・値上げすると客が離れそう
・人を増やすと固定費が怖い
誰に相談しても、
・税理士「数字的には微妙ですね」
・社員「社長の判断に任せます」
最終的に彼が口にした言葉は、
「分かってるんだけど、決めるのが怖いんだよね」
これは、能力の問題ではありません。
孤独な判断環境に置かれ続けた結果なのです。
社長は「共感」ではなく「決断」を求められる
もう一つ、孤独を深める要因があります。
それは、
社長は弱音を吐きづらい立場だということ。
・不安を言うと社員が不安になる
・迷いを見せると信頼が揺らぐ
・悩みを共有すると責任を押し付けているように見える
結果、
「分かってほしいけど、分かってもらえない」
この状態に陥ります。
社長は、
・共感してほしい人間であり
・決断を下す役割でもある
この二重構造が、判断をさらに孤独にするのです。
孤独な判断を「悪いもの」にしない考え方
ここで大切な視点をお伝えします。
社長の判断が孤独なのは、異常ではない
むしろ、健全です。
なぜなら、
・全員が納得する判断は存在しない
・全責任を引き受ける立場があるから組織は動く
問題は、
その孤独を、感情のまま抱え続けることです。
孤独な判断を、
・根性
・覚悟
だけで乗り切ろうとすると、必ず消耗します。
孤独を減らすのではなく、「扱える形」にする
優秀な社長がやっているのは、これです。
・孤独をなくそうとしない
・判断を仕組み化する
・感情ではなく基準で決める
つまり、
孤独な判断を、再現可能な判断に変えている
・数字
・ルール
・判断軸
これらを使うことで、
「自分が決めた」
ではなく、
「基準に沿って決めた」
という状態を作ります。
すると、
判断の重さも、後悔も、孤独感も、驚くほど軽くなります。
このシリーズで扱うこと
この「意思決定/経営判断編」では、
・なぜ迷いが生まれるのか
・判断を軽くする数字の使い方
・感覚経営から抜け出す方法
・後悔しない決断の作り方
を、順番に解きほぐしていきます。
あなたが一人で抱えてきたその重さは、
整理すれば、扱えるものです。
今日の一言
社長の判断が孤独なのは、強さの証明ではない。
構造を知らずに、一人で背負っているだけだ。
