
――管理会計のためのデータ取得・入力設計・第1回――
データを増やすほど、管理は複雑になる
中小企業の社長の悩みの1つに、こういう声があります。
「会社の数字はたくさん集めているはずなのに、結局判断できない」
売上や原価、在庫やスタッフの作業進捗、顧客情報…。データは増えれば増えるほど、整理や分析に時間がかかります。
ここで重要なのは、**まず決めるべきは『見る数字』ではなく、『取らない数字』**だということです。
なぜ「取らない数字」を決めるのか?
多くの会社は「必要な数字を増やす」ことから始めます。しかし、数字が増えると次の問題が生まれます。
- 入力や集計の負荷が増える
- 分析が複雑化し、意思決定が遅くなる
- 結局どれを見てよいか分からなくなる
ケーススタディ:地方の小売店
ある地方の小売店では、売上は商品別・時間帯別・顧客属性別で集計、在庫は棚ごとに細かく記録、スタッフの作業進捗も記録していました。
しかし、毎月の数字を確認するだけで半日かかり、社長は結局「ざっくり把握できれば十分」と妥協していました。
ポイント
数字を増やしても、意思決定に役立たなければ意味がないのです。
「取らない数字」を決めるための視点
では、何を取らないかをどう決めればよいのでしょうか。ポイントは次の通りです。
- 意思決定に直結するか?
- 見ることで行動や判断が変わる数字だけを残す
- 現場で即収集できるか?
- 集めるのに手間がかかる数字は除外
- データが信頼できるか?
- 不確かなデータは取らない
ケーススタディ:製造業の例
ある中小製造業では、以前は各工程の作業時間を分単位で記録していました。しかし、入力ミスや確認作業が多く、集計に時間がかかっていました。
改善策:
- 毎日の工程時間を「概算で十分」とルール化
- 集計も週次単位に変更
結果、社長は必要な数字だけで判断できるようになり、現場も余計な作業から解放されました。
「取らない数字」を決める3ステップ
具体的には、次のステップで取らない数字を決めます。
ステップ1:全データを書き出す
- 売上、原価、在庫、顧客情報、スタッフ作業、キャンペーン効果など、現在取っているデータをリスト化します。
ステップ2:判断に直結するかをチェック
- 各データが「経営判断や現場改善に役立つか?」を確認
- YES → 残す
- NO → 取らない
ステップ3:現場で入力可能かを確認
- 手間がかかるデータや入力が煩雑なものは取らない
- 重要でも取りやすい形に改善するか検討
ケーススタディ:サービス業の改善
- 以前:予約状況、キャンセル、売上、顧客情報、スタッフ稼働、問い合わせ件数、クレーム件数…など多数
- 改善後:予約状況、売上、顧客数、スタッフ稼働に絞る
結果、社長は毎日15分で確認可能になり、現場もデータ入力が簡単になりました。
「取らない数字」を決めると見える世界
取らない数字を決めると、次の効果が得られます。
- 数字がシンプルになる
- 意思決定が速くなる
- 現場が効率化される
- 分析に集中できる
ケーススタディ:小売業の例
- データを絞る前:月次レポート作成に3日
- データを絞った後:1日で作成完了、社長は即判断可能
- 売上改善策も即日実行でき、機会損失ゼロ
「取らない数字」を決めるコツ
- 目的を明確にする
- 何のために数字を見るのかをはっきりさせる
- 小さく始める
- 必要最低限の数字だけでスタート
- 定期的に見直す
- 経営状況や戦略に応じて取る数字を調整
ケーススタディ:製造業の改善例
- 初期:工程ごとの詳細作業時間、材料消費量、納期管理、仕掛品管理…膨大
- 改善:売上、原価、主要工程の進捗のみ
- 社長判断:毎日、利益改善・納期調整が可能
- 現場負担:入力時間半減、ミス減少
今日からできる実践アクション
- 今取っている全てのデータをリスト化
- 意思決定に不要なデータは即削除
- 残す数字は簡単に取得できる方法に統一
- 毎月定期的に数字の見直し
今日の一言
まず決めるべきは「見る数字」ではなく「取らない数字」。
余計なデータを取らなければ、数字は整理され、意思決定は速くなる。
