①まず決めるべきは「見る数字」ではなく「取らない数字」


――管理会計のためのデータ取得・入力設計・第1回――

データを増やすほど、管理は複雑になる

中小企業の社長の悩みの1つに、こういう声があります。

「会社の数字はたくさん集めているはずなのに、結局判断できない」

売上や原価、在庫やスタッフの作業進捗、顧客情報…。データは増えれば増えるほど、整理や分析に時間がかかります。

ここで重要なのは、**まず決めるべきは『見る数字』ではなく、『取らない数字』**だということです。


なぜ「取らない数字」を決めるのか?

多くの会社は「必要な数字を増やす」ことから始めます。しかし、数字が増えると次の問題が生まれます。

  1. 入力や集計の負荷が増える
  2. 分析が複雑化し、意思決定が遅くなる
  3. 結局どれを見てよいか分からなくなる

ケーススタディ:地方の小売店

ある地方の小売店では、売上は商品別・時間帯別・顧客属性別で集計、在庫は棚ごとに細かく記録、スタッフの作業進捗も記録していました。

しかし、毎月の数字を確認するだけで半日かかり、社長は結局「ざっくり把握できれば十分」と妥協していました。

ポイント
数字を増やしても、意思決定に役立たなければ意味がないのです。


「取らない数字」を決めるための視点

では、何を取らないかをどう決めればよいのでしょうか。ポイントは次の通りです。

  1. 意思決定に直結するか?
    • 見ることで行動や判断が変わる数字だけを残す
  2. 現場で即収集できるか?
    • 集めるのに手間がかかる数字は除外
  3. データが信頼できるか?
    • 不確かなデータは取らない

ケーススタディ:製造業の例

ある中小製造業では、以前は各工程の作業時間を分単位で記録していました。しかし、入力ミスや確認作業が多く、集計に時間がかかっていました。

改善策:

  • 毎日の工程時間を「概算で十分」とルール化
  • 集計も週次単位に変更

結果、社長は必要な数字だけで判断できるようになり、現場も余計な作業から解放されました。


「取らない数字」を決める3ステップ

具体的には、次のステップで取らない数字を決めます。

ステップ1:全データを書き出す

  • 売上、原価、在庫、顧客情報、スタッフ作業、キャンペーン効果など、現在取っているデータをリスト化します。

ステップ2:判断に直結するかをチェック

  • 各データが「経営判断や現場改善に役立つか?」を確認
  • YES → 残す
  • NO → 取らない

ステップ3:現場で入力可能かを確認

  • 手間がかかるデータや入力が煩雑なものは取らない
  • 重要でも取りやすい形に改善するか検討

ケーススタディ:サービス業の改善

  • 以前:予約状況、キャンセル、売上、顧客情報、スタッフ稼働、問い合わせ件数、クレーム件数…など多数
  • 改善後:予約状況、売上、顧客数、スタッフ稼働に絞る

結果、社長は毎日15分で確認可能になり、現場もデータ入力が簡単になりました。


「取らない数字」を決めると見える世界

取らない数字を決めると、次の効果が得られます。

  1. 数字がシンプルになる
  2. 意思決定が速くなる
  3. 現場が効率化される
  4. 分析に集中できる

ケーススタディ:小売業の例

  • データを絞る前:月次レポート作成に3日
  • データを絞った後:1日で作成完了、社長は即判断可能
  • 売上改善策も即日実行でき、機会損失ゼロ

「取らない数字」を決めるコツ

  • 目的を明確にする
    • 何のために数字を見るのかをはっきりさせる
  • 小さく始める
    • 必要最低限の数字だけでスタート
  • 定期的に見直す
    • 経営状況や戦略に応じて取る数字を調整

ケーススタディ:製造業の改善例

  • 初期:工程ごとの詳細作業時間、材料消費量、納期管理、仕掛品管理…膨大
  • 改善:売上、原価、主要工程の進捗のみ
  • 社長判断:毎日、利益改善・納期調整が可能
  • 現場負担:入力時間半減、ミス減少

今日からできる実践アクション

  1. 今取っている全てのデータをリスト化
  2. 意思決定に不要なデータは即削除
  3. 残す数字は簡単に取得できる方法に統一
  4. 毎月定期的に数字の見直し

今日の一言

まず決めるべきは「見る数字」ではなく「取らない数字」。
余計なデータを取らなければ、数字は整理され、意思決定は速くなる。


PAGE TOP