
――管理会計が回るDX、回らないDX・第2回――
ツール導入で「管理会計が死ぬ」とはどういうことか?
「最新のクラウド会計」「業務自動化ツール」「ERPシステム」を入れたら、なぜか管理会計がうまく回らなくなった…という話を聞いたことはありませんか?
- 月次決算が遅くなった
- 売上や原価の集計が混乱した
- 経営判断に必要な数字が見えなくなった
これを私は「ツールを入れた瞬間に管理会計が死ぬ状態」と呼んでいます。
つまり、ツールを導入したのに経営が楽にならず、むしろ管理会計が混乱する状態です。
共通点1:ツール任せで数字の設計をしていない
「ツールがあれば大丈夫」という罠
経営者の多くは、最新のツールを導入すれば数字の管理が自動化され、経営判断が楽になると考えがちです。
しかし、管理会計はツールそのものでは回りません。「何を集め、何を分析するか」の設計が先に必要です。
ケーススタディ:建設業E社
- ERP導入 → 工数・原価・売上が自動集計される
- 問題:部門別採算や工事別粗利の計算ルールが定義されていない
- 結果:ツールはデータを集めるだけで、経営者は「結局何を判断すればよいか」が分からず、Excelで手作業の補正が必要に
ポイント:ツールは「手段」。管理会計の設計を先に固めないと、ツールは役に立たない
共通点2:入力ルールが統一されていない
「入れ方が自由=管理会計が死ぬ」
ツールを入れても、現場の入力ルールがバラバラだと、集計結果は混乱します。
- 売上の科目が部門ごとに違う
- 経費計上のタイミングが統一されていない
- 工数の記録単位が部門ごとに異なる
この状態でツールを入れると、ツールは正確に集計しているのに、数字の意味がバラバラで経営判断に使えない、という状態になります。
ケーススタディ:小売業F社
- クラウドPOS導入 → 全店舗の売上自動集計
- 問題:売上コードが店舗ごとに異なる
- 結果:月末に統一コードへ変換する作業が発生し、会議で即判断できない
ポイント:ツール導入前に、入力ルール・科目・単位の統一が必須
共通点3:現場の業務フローとツールが合っていない
- DXツールは便利だが、現場の業務フローに合わないと入力が滞る
- 入力が滞ると、ツールは正しい集計結果を出せない
- 経営者は「数字は揃ったけど意味がない」と混乱
ケーススタディ:製造業G社
- 生産・販売・在庫管理ツール導入
- 問題:現場は複雑な入力を嫌がり、データが途中で抜ける
- 結果:管理会計に必要な工数・原価が欠損し、月次会議ではExcelで補正作業
ポイント:現場の業務フローを理解した上で、入力作業が現実的かを設計することが重要
共通点4:経営者の見る数字が整理されていない
ツールで集計はできるが、経営者が意思決定に使える数字に整理されていない場合も危険です。
- 原価や粗利率などの経営指標はツールでは自動化されないことが多い
- 全部の数字を出力するだけでは、経営者は「どこに注目すべきか」が分からない
- 結果、会議では数字を確認するだけで終了、意思決定は遅れる
ケーススタディ:サービス業H社
- 顧客別売上・サービス別原価を自動集計
- 問題:部門別粗利率が自動で算出されず、経営者はExcelで再計算
- 結果:DXツールを導入したのに月次会議は以前と同じ時間、経営判断の速度は変わらず
ポイント:経営者用に意思決定に必要な指標を設計することが、DX成功の鍵
管理会計が死なないDXのための条件
- 数字の設計を先に固める
- 何を集め、何を判断に使うかを明確化
- 入力ルールを全社で統一
- 売上・原価・工数・経費の単位や科目を統一
- 現場の業務フローに合わせた入力設計
- 現場が嫌がらないシンプルな入力方法
- 経営者用レポート設計
- 集計済みデータから意思決定に必要な数字だけを表示
この4つを押さえておけば、ツールを入れても管理会計が死ぬことはありません。
ツールを入れるだけで経営が楽になる、という幻想に惑わされず、「入力ルール・現場フロー・意思決定指標」を整えたうえでツールを導入することが、管理会計DX成功の第一歩です。
今日の一言
DXはツールではなく設計が命。
管理会計の土台を固めてから導入すれば、DXは経営を楽にする最強の武器になる。
