②デジタル化とDXの違いを、数字の視点で考える


――社長のためのDX思考入門・第2回――

デジタル化とDX、社長は混同していませんか?

「ウチもDXをやらなきゃ」と思って、まずは紙の書類をスキャンしたり、Excelで売上管理を始めたりしている社長は少なくありません。でも、これって本当にDXでしょうか?

実は、多くの中小企業で行われているのは「デジタル化」であって、DXとは少し違います。違いを理解しないまま取り組むと、システムだけ導入して効果が出ない、という状況に陥りやすいのです。

簡単に言うとこう整理できます。

  • デジタル化:業務の手段をアナログからデジタルに置き換えること
  • DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタルを使って業務・意思決定・ビジネスモデルを変革すること

つまり、数字の視点で考えると、デジタル化は「入力・集計・出力の効率化」、DXは「数字を活用して意思決定や収益構造を変えること」と言えます。


デジタル化は“数字の整理整頓”

まずはデジタル化のイメージから。

ケーススタディ:紙からExcelへ

ある中小製造業では、毎月の売上集計を手書きで行っていました。社長は「これじゃ時間がかかりすぎる」と感じ、Excelにデータを入力することにしました。

  • 集計にかかっていた時間:15時間/月
  • Excel導入後の集計時間:5時間/月

数字の視点では、時間効率が3分の1に改善されました。これは立派なデジタル化の成果です。ただし、ここでやったことはあくまで「データを扱いやすくした」だけで、意思決定や戦略にはまだ直接影響していません。

ポイント
デジタル化は「データを整理する・効率化する」段階であり、数字の質は向上しますが、経営判断そのものは変わりません。


DXは“数字を使った意思決定”

では、DXはどう違うのか。ここで大事なのは「数字を意思決定に活かす」という点です。

ケーススタディ:売上分析から戦略に変える

同じ製造業で、Excel化した売上データをもとに、次のような分析を行ったとします。

  • 店舗別売上の伸び率
  • 商品別利益率
  • 季節ごとの需要変動

この分析結果をもとに、次のような意思決定をしました。

  • 利益率の低い商品を撤廃
  • 繁忙期にはスタッフを増員し、閑散期は販促キャンペーンを実施
  • 人気商品の在庫を最適化して欠品防止

結果、月次利益は20%アップ、在庫コストは15%削減。

数字の視点で見ると、単なるデジタル化では時間効率しか改善されませんが、DXでは「利益・コスト・売上」といった経営指標に直接インパクトが出ます。これが大きな違いです。


数字の視点で見抜く“デジタル化とDXの境界線”

社長が混乱しやすいのは、どちらも「ITを使う」という点が共通しているからです。ここで明確な境界線を作ってみましょう。

項目デジタル化DX
目的作業効率化、時間削減収益改善、意思決定の質向上
効果時間・手間の削減利益、コスト、売上など経営指標の改善
事例紙の伝票をスキャン → Excel管理データ分析 → 商品戦略・販促戦略の改善
社長の関与最小限でもOK社長の意思決定が中心

数字で考えると、デジタル化は「入力や集計の改善」、DXは「その数字を使ってどう儲けるかを変えること」と理解できます。


数字の見える化から始めるDX

多くの社長が最初にすべきことは、「現状の数字をデジタル化して見える化」することです。

ケーススタディ:小規模飲食店のDX

ある地方の飲食店では、日々の売上を手書きで記録していました。まずはPOSレジを導入し、売上データを自動集計することにしました。

  • 集計時間:1日30分 → 自動化で0分
  • 過去3か月の売上トレンドを把握可能

次にこのデータを使い、繁忙時間帯のスタッフシフトを最適化。結果、人件費は10%削減、売上は5%増加しました。

ここで重要なのは、POS導入だけではDXではなく「デジタル化」。しかし、数字を分析して戦略に活かしたことでDXが完成しました。


数字を軸にしたDXステップ

  1. 数字を集める(デジタル化)
    • 売上、原価、人件費など、意思決定に必要なデータを整理
  2. 数字を分析する
    • 過去のトレンド、店舗別・商品別の利益率などを見る
  3. 数字をもとに意思決定する(DX)
    • 不採算商品の撤廃、繁閑のシフト調整、販促戦略の最適化
  4. 結果をモニタリングして改善
    • 数字で効果を確認し、PDCAを回す

この流れを理解すると、「デジタル化で止まっているか」「本当にDXできているか」が数字で見抜けます。


DXを数字で語れる社長になる

数字の視点でDXを考えると、社長はこう行動できます。

  • 「この数字を見れば、意思決定の精度が上がるか?」
  • 「このデータを分析すれば、利益やコストにインパクトがあるか?」

この問いを常に持つだけで、無駄なシステム導入や時間だけかかるデジタル化で終わるリスクを避けられます。


今日の一言

デジタル化は「時間を節約する作業改善」、
DXは「数字を使って経営を変える意思決定改善」。
社長は数字を軸に、どちらかで終わらせず、必ずDXへつなげよう。


PAGE TOP