①事業計画とは「未来の管理会計」である


――未来は、数字で設計できる・第1回――

事業計画と聞いた瞬間、なぜ社長は身構えてしまうのか

「事業計画を作りましょう」

この一言を聞いた瞬間、
多くの社長の頭の中には、こんなイメージが浮かびます。

  • 銀行に提出するための分厚い資料
  • 補助金・融資のためだけに作る“形式的な数字”
  • 正直、作ったあと見返した記憶がない書類

もし、あなたも少しでも思い当たるなら、安心してください。
それはあなただけではありません

むしろ中小企業・小規模事業の現場では、

「事業計画は“必要に迫られたときだけ作るもの”」

という扱いが、ほぼ常識になっています。

ですが、ここで一つ、今日のテーマにつながる重要な問いを投げかけます。

本来、事業計画とは何のために存在するものなのでしょうか?


結論:事業計画は「未来の管理会計」である

いきなり結論から言います。

事業計画とは、
銀行のための資料でも、補助金のための作文でもありません。

本質は、ただ一つ。

「未来の経営判断を、今のうちに数字でシミュレーションしておくこと」

つまり、
事業計画 = 未来版の管理会計
なのです。

管理会計が「今どうなっているか」を把握するためのものなら、
事業計画は「これからどうしたいか」を数字で描くもの。

この視点に立てるかどうかで、
事業計画は苦行にも、最強の経営ツールにもなります。


「過去の数字」だけを見ていても、経営は前に進まない

管理会計では、月次でこんなことを見ますよね。

  • 売上はいくらだったか
  • 利益は出ているか
  • どこにコストがかかっているか

これはすべて、過去の結果です。

もちろん、これらを把握することは重要です。
ですが、経営の本当の難しさは、ここからです。

  • 来月、何を判断するべきか
  • 半年後、資金は足りるのか
  • 新しい取り組みは、やるべきか、やめるべきか

これらはすべて、未来の話です。

そして未来の話は、
感覚や気合だけでは、ほぼ確実にブレます。

ここで必要になるのが、
未来を数字で“仮置き”する行為
= 事業計画なのです。


ケース①:感覚経営から抜け出せなかった社長の話

あるサービス業の社長の事例です。

この社長は、毎月の試算表は見ていました。
売上も利益も、だいたい把握している。

ですが、こんな悩みを抱えていました。

  • 忙しいのに、なぜかお金が残らない
  • 人を増やしたいが、踏み切れない
  • 広告を打つべきか、ずっと迷っている

話を聞いて分かったのは、
「未来の数字」を一切見ていなかったという点です。

そこで行ったのは、難しい分析ではありません。

  • 売上が今後どう増える想定か
  • 固定費はどこまで増やせるのか
  • 人を1人増やした場合、利益はどう変わるか

これを1年分、ざっくり数字に落としただけです。

すると社長は、こう言いました。

「あ、これ以上人を増やすと、
3ヶ月後に資金がきつくなりますね…」

そう。
事業計画は「当てるもの」ではなく、
**「気づくためのもの」**なのです。


事業計画は、完璧である必要は一切ない

ここで、よくある誤解を一つ解いておきましょう。

事業計画は、当たらなければ意味がない。

これは、完全な誤解です。

むしろ、優秀な社長ほどこう考えています。

  • 計画はズレる前提
  • だから、修正できる形で持っておく
  • ズレた理由を、次の判断に使う

この考え方、どこかで聞いたことがありませんか?

そう。
管理会計とまったく同じ構造なのです。

管理会計も、

  • 予算と実績を比べ
  • 差異を見て
  • 次の一手を考える

という流れで回します。

事業計画も同じ。
ただし、対象が「未来」なだけです。


「事業計画=年1回イベント」になると、必ず形骸化する

多くの会社で、事業計画が失敗する理由。
それは、とてもシンプルです。

作ったあと、見ない

これに尽きます。

  • 融資が終わったら引き出しへ
  • 補助金が通ったらお役御免
  • 作ったこと自体を忘れる

これでは、経営に使われるはずがありません。

事業計画を生きたものにする唯一の方法は、

管理会計とセットで回すこと

です。

  • 月次管理会計で「現実」を確認
  • 事業計画で描いた「未来」と比較
  • ズレを前提に、判断を修正

この往復運動ができた瞬間、
事業計画は机上の空論から、経営の地図に変わります。


事業計画がある社長は、なぜ判断が速くなるのか

もう一つ、大きなメリットがあります。

それは、判断スピードです。

事業計画がないと、判断はこうなりがちです。

  • 「どう思う?」と人に聞く
  • 不安になって先延ばし
  • 結局、現状維持

一方、事業計画がある社長は違います。

  • この判断をすると、数字はどう動くか
  • 想定内か、想定外か
  • 想定外なら、どこを修正するか

判断の軸が、常に数字にある。

だから、
迷っている時間そのものが減るのです。


未来は、予測するものではなく「設計するもの」

「未来はどうなるか分からない」

これは、確かに事実です。
ですが、だからと言って、

何も考えなくていい
数字を置かなくていい

という話にはなりません。

むしろ逆です。

  • 不確実だからこそ
  • 数字で仮説を置き
  • 変化に対応できる状態を作る

これが、事業計画の本質です。

未来は、当てにいくものではありません。
判断できる状態にしておくものです。


今日の一言

事業計画とは、未来を縛るものではない。
未来の判断を、自由にするための管理会計である。


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