②仕訳を意識しない「判断ベース記帳」という考え方


―― 会計ソフトは“仕訳ツール”ではなく、“社長の質問箱”である


「仕訳を考えた瞬間、手が止まる」のはなぜか?

第1回では、

簿記を学んでも利益が増えないのは
社長の能力の問題ではなく、学ぶ順番の問題

という話をしました。

今回は、その続きです。

多くの社長が、記帳や会計ソフトを前にして
手が止まる瞬間があります。

  • この支出、どの勘定科目だっけ?
  • これは経費?それとも資産?
  • 借方・貸方、どっちに入れるんだ?

この瞬間に起きているのは、
「考えすぎ」ではありません。

**「考える場所を間違えている」**のです。


会計ソフトを前にして、社長がやってはいけない思考

いきなり結論から言います。

社長が、会計ソフト入力時に
考えてはいけないことがあります。

それは、

「これは正しい仕訳か?」

です。

なぜなら、その問いは
経理担当者や税理士の問いだからです。

社長が考えるべき問いは、もっと手前にあります。


簿記を捨てると、記帳が進むようになる

少し挑発的な言い方をしますが、

記帳が進まない社長ほど
「簿記をちゃんとやろう」としています。

これは皮肉ではなく、現実です。

ケース|簿記を勉強するほど、入力が遅くなった社長

ある個人事業主の方は、
freeeを使って記帳をしていました。

最初は勢いで入力していたのですが、
簿記を勉強し始めてから、こうなりました。

「これ、仕訳的に合ってますか?」
「後で直した方がいい気がして…」

結果、
入力が溜まり、月次P/Lは2か月遅れ。

これでは、経営判断に使えるはずがありません。


判断ベース記帳とは何か?

ここで、今回のテーマです。

判断ベース記帳とは?

「仕訳を作る」のではなく、
「事実について判断する」ことに集中する記帳方法

です。

社長は、入力時に
たった3つのことだけを判断します。


社長が入力時に判断すべき3つのこと

① お金は動いたか?(キャッシュの視点)

まず最初に考えるのは、これです。

  • 実際にお金は出たのか?
  • それとも、まだ払っていないのか?

ここが分かれば、
現金・預金・カード・未払い
といった方向性が自動的に決まります。

👉 仕訳ではなく、「現実」を見ます。


② 今月の儲けに関係あるか?(P/Lの視点)

次に考えるのは、

  • 今月の売上や利益に影響するか?
  • それとも、将来の話か?

例えば、

  • 広告費 → 今月の儲けに関係する
  • パソコン購入 → すぐには関係しない

この判断ができれば十分です。


③ いつもの支出か?特別な支出か?(異常値の視点)

最後に考えるのは、

  • 毎月よくある支出か?
  • それとも、今回限り・イレギュラーか?

この判断は、
後でP/Lを見たときの理解度に直結します。


会計ソフトは「仕訳ツール」ではない

ここで、多くの社長が誤解している点をお伝えします。

会計ソフトの正体

freeeやマネーフォワードは、

「正しい仕訳を入力させるソフト」

ではありません。

実際は、

「社長に質問を投げかけ、
その答えを元に仕訳を作るソフト」

です。

だから、画面にはこう書いてあります。

  • これは何に使いましたか?
  • いつの取引ですか?
  • 毎月発生しますか?

全部、仕訳ではありません。
判断の質問です。


事例|判断ベースに変えたら、月次P/Lが回り始めた

ある小規模事業者の方の例です。

それまでこの方は、

「仕訳が分からないから入力できない」

と言っていました。

そこで、こうお願いしました。

「仕訳は考えなくていいです」
「この3つだけ、毎回考えてください」

  • お金は動いた?
  • 今月の儲けに関係ある?
  • いつもの支出?

すると、どうなったか。

  • 入力が止まらなくなった
  • 月次P/Lが毎月10日以内に出るようになった
  • 「今月は広告費が効いてない」と自分で気づいた

簿記を捨てたら、数字が生き始めたのです。


「間違えたらどうする?」という不安について

ここで、必ず出てくる質問があります。

「でも、間違って入力したらどうなるんですか?」

結論から言います。

大丈夫です。

なぜなら、

  • 会計ソフトの入力は、後から直せる
  • 税理士や決算時に修正される
  • 重要なのは「止まらないこと」

だからです。

経営にとって一番まずいのは、

正確さを気にして、
数字を見るタイミングを失うこと

です。


正しさより「早さ」が、社長を助ける

社長にとっての会計は、

  • 試験でも
  • 監査でも
  • 採点対象でも

ありません。

判断の材料です。

材料は、
多少荒くても、
早く手に入った方が価値があります。


仕訳は「後から分かればいい」

ここで、はっきり言っておきます。

  • 仕訳は、最初に分からなくていい
  • 仕訳は、後から理解すればいい
  • 仕訳は、目的ではない

目的はただ一つ。

数字を見て、動ける社長になること

です。


次回予告|社長が迷わない「入力ルール」を作る

次回は、

「freee/マネーフォワードで回る“社長のための入力ルール”」

をテーマに、

  • 入力を迷わなくする型
  • よくあるミスを防ぐ考え方
  • 社長が“触るところ/触らないところ”

を具体的に解説します。


今日の一言

「社長の仕事は、仕訳を作ることではない。
事実を判断し、次の一手を決めることだ。」


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