
―― 会計ソフトは“仕訳ツール”ではなく、“社長の質問箱”である
「仕訳を考えた瞬間、手が止まる」のはなぜか?
第1回では、
簿記を学んでも利益が増えないのは
社長の能力の問題ではなく、学ぶ順番の問題
という話をしました。
今回は、その続きです。
多くの社長が、記帳や会計ソフトを前にして
手が止まる瞬間があります。
- この支出、どの勘定科目だっけ?
- これは経費?それとも資産?
- 借方・貸方、どっちに入れるんだ?
この瞬間に起きているのは、
「考えすぎ」ではありません。
**「考える場所を間違えている」**のです。
会計ソフトを前にして、社長がやってはいけない思考
いきなり結論から言います。
社長が、会計ソフト入力時に
考えてはいけないことがあります。
それは、
「これは正しい仕訳か?」
です。
なぜなら、その問いは
経理担当者や税理士の問いだからです。
社長が考えるべき問いは、もっと手前にあります。
簿記を捨てると、記帳が進むようになる
少し挑発的な言い方をしますが、
記帳が進まない社長ほど
「簿記をちゃんとやろう」としています。
これは皮肉ではなく、現実です。
ケース|簿記を勉強するほど、入力が遅くなった社長
ある個人事業主の方は、
freeeを使って記帳をしていました。
最初は勢いで入力していたのですが、
簿記を勉強し始めてから、こうなりました。
「これ、仕訳的に合ってますか?」
「後で直した方がいい気がして…」
結果、
入力が溜まり、月次P/Lは2か月遅れ。
これでは、経営判断に使えるはずがありません。
判断ベース記帳とは何か?
ここで、今回のテーマです。
判断ベース記帳とは?
「仕訳を作る」のではなく、
「事実について判断する」ことに集中する記帳方法
です。
社長は、入力時に
たった3つのことだけを判断します。
社長が入力時に判断すべき3つのこと
① お金は動いたか?(キャッシュの視点)
まず最初に考えるのは、これです。
- 実際にお金は出たのか?
- それとも、まだ払っていないのか?
ここが分かれば、
現金・預金・カード・未払い
といった方向性が自動的に決まります。
👉 仕訳ではなく、「現実」を見ます。
② 今月の儲けに関係あるか?(P/Lの視点)
次に考えるのは、
- 今月の売上や利益に影響するか?
- それとも、将来の話か?
例えば、
- 広告費 → 今月の儲けに関係する
- パソコン購入 → すぐには関係しない
この判断ができれば十分です。
③ いつもの支出か?特別な支出か?(異常値の視点)
最後に考えるのは、
- 毎月よくある支出か?
- それとも、今回限り・イレギュラーか?
この判断は、
後でP/Lを見たときの理解度に直結します。
会計ソフトは「仕訳ツール」ではない
ここで、多くの社長が誤解している点をお伝えします。
会計ソフトの正体
freeeやマネーフォワードは、
「正しい仕訳を入力させるソフト」
ではありません。
実際は、
「社長に質問を投げかけ、
その答えを元に仕訳を作るソフト」
です。
だから、画面にはこう書いてあります。
- これは何に使いましたか?
- いつの取引ですか?
- 毎月発生しますか?
全部、仕訳ではありません。
判断の質問です。
事例|判断ベースに変えたら、月次P/Lが回り始めた
ある小規模事業者の方の例です。
それまでこの方は、
「仕訳が分からないから入力できない」
と言っていました。
そこで、こうお願いしました。
「仕訳は考えなくていいです」
「この3つだけ、毎回考えてください」
- お金は動いた?
- 今月の儲けに関係ある?
- いつもの支出?
すると、どうなったか。
- 入力が止まらなくなった
- 月次P/Lが毎月10日以内に出るようになった
- 「今月は広告費が効いてない」と自分で気づいた
簿記を捨てたら、数字が生き始めたのです。
「間違えたらどうする?」という不安について
ここで、必ず出てくる質問があります。
「でも、間違って入力したらどうなるんですか?」
結論から言います。
大丈夫です。
なぜなら、
- 会計ソフトの入力は、後から直せる
- 税理士や決算時に修正される
- 重要なのは「止まらないこと」
だからです。
経営にとって一番まずいのは、
正確さを気にして、
数字を見るタイミングを失うこと
です。
正しさより「早さ」が、社長を助ける
社長にとっての会計は、
- 試験でも
- 監査でも
- 採点対象でも
ありません。
判断の材料です。
材料は、
多少荒くても、
早く手に入った方が価値があります。
仕訳は「後から分かればいい」
ここで、はっきり言っておきます。
- 仕訳は、最初に分からなくていい
- 仕訳は、後から理解すればいい
- 仕訳は、目的ではない
目的はただ一つ。
数字を見て、動ける社長になること
です。
次回予告|社長が迷わない「入力ルール」を作る
次回は、
「freee/マネーフォワードで回る“社長のための入力ルール”」
をテーマに、
- 入力を迷わなくする型
- よくあるミスを防ぐ考え方
- 社長が“触るところ/触らないところ”
を具体的に解説します。
今日の一言
「社長の仕事は、仕訳を作ることではない。
事実を判断し、次の一手を決めることだ。」
